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●豊崎由美/大森望の語り下ろし対談集『文学賞メッタ斬り!』、PARCO出版より3月18日刊行予定(→amazon | bk1)。ISBN:4-89194-682-2 中身はエキサイトブックスのを10倍増強した感じ。これで税抜き1600円は安い。

●コニー・ウィリスのヒューゴー賞・ローカス賞受賞作、『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』、早川書房海外SFノヴェルズより4月中旬刊行予定(→amazon | bk1)。ISBN:4-15-208553-3

シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社1900円)発売中→bk1 | amazon


【2月19日(木)】


 書くのを忘れてたけど、2月前半はもう一個、幻冬舎《ポンツーン》の北上次郎による大沢在昌インタビューを70枚の原稿にまとめるって仕事をしてたんでした。テーマは「シリーズの書き方」で、テキストは《新宿鮫》。ばらばらになってる本を発掘するのがたいへんなので、堺三保のところでカッパノベルス版をまとめて借りてぱらぱら再読しはじめたら止まらなくなり、半分ぐらい一気に読んじゃったり。五年も経つとほとんど忘れてるから何回でも楽しめます(笑)。

 北上さんは《新宿鮫》の行く末に重大な憂慮を持っていて、インタビューの後半ではしきりとその疑問を大沢さんにぶつけるんだけど、思ったような答えが全然帰ってこなくてどんどんやさぐれていく感じが爆笑。本来のテーマの「シリーズの書き方」とは全然関係ない話になっちゃってますが、むしろ北上ファンは必読かも(結局、話があんまりぐるぐるまわってるところは北上次郎がカットした模様)。
 それにしても、70枚も80枚もあると、まとめた原稿を読み返すだけでもたいへん。いや、こんな仕事してる場合じゃないんだけど、儲からない仕事ばかりにかまけてたせいですっかり貧乏になってしまったので、生活費を稼がなきゃいけないのである。『不思議のひと触れ』の印税はまだ入ってこないし、ライター収入で暮らすのは楽じゃないね。

 あと、小倉千加子『結婚の条件』(傑作)と酒井順子『負け犬の遠吠え』(駄作)をつづけて読み、「おたくの結婚」(あるいは「おたくの非婚」)というインタビュー集の企画構成が頭の中を瞬間的に駆けめぐる。主役は、「五十代・未婚・男性・子なし、でも今はしあわせ」みたいな人たち。家族持ちより可処分所得は断然多くて、好きなことを好きなだけやってもだれにも文句を言われない。問題は20年後の生活なんですが、みんなでカネを出し合って同居する年寄りハウスの建築計画とかを楽しそうに進めてる人たちもいて、これってもしかしたら勝ち組?



【2月20日(金)】


 第130回芥川賞・直木賞授賞式@東京會舘ローズルーム。
 今日はたいへんなことになってるだろうなあと思ってたけど、いやほんとにたいへんでした。まず入口では招待者全員が造花を胸につけろと指示される(ストーカーの潜り込み排除目的らしい)。
 中にはいると、ものすごい人口密度に加えて、前のほうは報道陣が十重二十重にぎっしり囲み、受賞者が壇上に上がってもなにも見えません(笑)。綿矢りさが出てくると、まるでW杯でベッカムがFK蹴るときみたいなフラッシュの嵐。とても文学賞受賞パーティとは思えない感じ。 今日の大森はデジタルビデオカメラ持参だったんで、腕だけ突き出して撮影。
 翌日の新聞報道によると1200人が集まったそうですが、道理で知らない顔ばかりだったというか、出版業界にこんなに人がいたとは知らなかったよ。京極さんの関係者もけっこう招待されてるはずなのに、人の海にまぎれて全然わからない。
 綿矢りさ嬢にはちゃんと(絵に描いたようなスタイルの)ボディガードがついてて、がっちりガード。写真とかビデオとか撮ろうとして制止された人も(オレを含めて)多数(笑)。もしかしてこのパーティの招待状をヤフオクとかに出すと高く売れたのか。
 文春サイドでも、ガード役にはもとバスケ部の女子社員K田嬢を起用してたんですが、無理やり頼み込んで(いやせっかくだし)ご本人に紹介してもらいました。今日あるを予期して『蹴りたい背中』刊行直後に《週刊新潮》に書評を書いておいた甲斐があったっていうか。
 対する金原ひとみ嬢のほうは遠くから観察するに留め(ファッションでは圧勝)、なんとか終わりごろになって金原パパを発見し、おめでとうございましたのご挨拶。髪が黒くなってすっかりまじめな格好なんで見違えました。パパいわく、「昼間美容院で染めてきたんだよ」。娘はピアスで売ってるんだから、パパは金髪で来ればよかったのに。

 二次会は京極組の宴会へ。なんか大沢オフィスのパーティ+妖怪関係者という感じの顔ぶれで、ミステリ作家率は低め。ひさしぶりに会った唐沢なをき氏を宮部さんに紹介したりとか。宮部さんは唐沢マンガのファンだった模様。。
 あとは貫井くんから、「大森さん、仮面ライダーの順番で、『クウガ』がいちばん面白いっていうのは違いますよ! ぜんぶ見るとわかりますけど、一番は『アギト』です!」と力説されたり。そ、そうなのか? いや、『クウガ』はもうすぐぜんぶ見終わっちゃうから、次は『アギト』か『龍騎』かなと思ってたんですが。

 あ、あと、マスクの怪人が一名来てて、いろんな人が声を潜めて「ねえ、大森さんなら知ってるんじゃないかと思うんだけど……あの人だれ?」と訊ねてきたんですが、よく考えると、確信を持って、「村崎百郎でしょ」とは答えられないことに気づく。だって素顔は十年以上前に一度見たきりだからなあ。いや、京極さんのパーティで黒マントにマスクなだけで、ふつう村崎百郎以外の答えは考えられないのだが。
 ちなみに村崎百郎と京極夏彦と千街晶之は同じ高校の同窓。シベリア生まれで中卒の工員なのに高校の同窓生がいる謎。あ、卒業してなきゃOKなのか? もしもちゃんと卒業していた事実が発覚すると経歴詐称だと非難されたりして。民主党は村崎百郎を公認する前によく確認すること。
 結局やはり村崎百郎本人だったらしいが(京極さんに一応確認しました(笑))、問題はまだ解決しない。
「あれだれ?」
「村崎百郎」
「それだれ?」
「えーと。工員」
「?}
「……鬼畜で……ゴミ漁りで有名な人で……」
「???」
 考えたら、「森園みるくの相方」と説明するのがいちばん早いかも。でも村崎百郎を知らない人は森園みるくを知らない可能性も高いか。

 三次会はファゼンダでカラオケ。どうも既視感があると思ったら、京極さんが山本周五郎賞とったときの三次会もここだったんですね。5部屋か6部屋に分散し、最初のうちはみんなだらだらしゃべってたんだけど、途中からエンジンがかかりはじめ、結局朝まで。『クウガ』とか歌ってたら声が枯れてひさしぶりにノドが痛い。
 最後は大沢オフィスの社歌(『与作』の替え歌の『駄作』とか)を大宮極の三人が合唱してお開き。
 帰りは同方向の宮部さんとタクシー。宮部さんが第120回の直木賞を受賞したとき以来かも。



【2月21日(土)】


 夕方起き出して、「龍高飯店」西葛西本店で東東京ミステリーリーグの宴会。これが3回目だそうですが、大森は初参加。10人ぐらいだろうと思ったら30人ぐらいいてびっくり。白石朗も酒井昭伸も来てなかったけど、西葛西の住人だけで10人ぐらいいたんじゃないですかね。妙齢の女性翻訳者多数(ビレッジブックスで翻訳してる人が多かった)。

 中村由希さんとか松坂健ご夫妻とかに挨拶し、ひとわたり自己紹介を聞いたあとはダッシュで飛び出し、アルカディア市ヶ谷で開催中の「沼野充義・若島正両氏の讀賣文学賞受賞を祝う会」へ。

 何度か書いているとおり、若島さんとは学生時代からの知り合いなんですが(その頃の話は、今回の受賞作『乱視読者の英米短篇講義』に寄せた爆笑のおまけエッセイ、「青春の短篇小説あるいは短篇小説の青春」にもちらっと出てくる)、じつは沼野さんも元はSFの人なので(《イスカーチェリ》のメンバー)、学生時代に一度、電話で話をしたことがある。
 ホリア・アラーマさんっていうルーマニアのSF作家(こないだ復刊した『東欧SF傑作集』の下巻に「アイクサよ永遠なれ」っていうなかなかいい中編が訳されてる人)が来日したとき、京都を観光したいと言ってるからだれか案内してやってくれっていう話が(たしか《イスカーチェリ》の波津さんから、関西海外SF研究会経由で)来て、神戸大SF研の島田さんといっしょに案内することになったんですね。アラーマさんはそのとき沼野さんちに泊まってて、たしかそこに観光の打ち合わせ電話をかけたんだと思った。電話の向こうで沼野さんが謎の言語でアラーマさんと会話してるのを聞いてすごいなあとぼんやり思ったような記憶が……。
 ちなみに当時のルーマニアは外貨持ち出しに厳しい制限があって、京都観光といってもお金はない。こっちも貧乏学生なんで、島田さんの車であちこちまわっただけ。食事なんか、MKタクシーが乗務員用にやってた500円で食べ放題の食堂に連れてって、あとから日本の恥だと(KSFAの社会人に)非難されたり。
 というわけで、今回の讀賣文学賞は、大森的には「SFの人がふたり同時に受賞」というイメージなんでした。もっとも沼野さんはそっち方面の人とのつきあいは最近あんまりないらしい。

 二次会は近所のレストラン。未知谷の社長はじめ、初対面の人もちらほら。柴田元幸氏とケリー・リンク話とか。『スペシャリストの帽子』が売れるといいんだけど。しかしFT文庫で出すより《奇想コレクション》みたいな媒体のほうが向いてるような……。
 関係ないけど、学生の卒論に関する雑談で、柴田さんいわく、
「ギャツビーで卒論書いてくる学生はだいたいダメだね」
 横でずっと話を聞いていたK嬢@早川書房、それを聞いて
「そうでしょうねえ。わたしの卒論も『ギャツビー』でした」
 思わず絶句する柴田元幸氏。



【2月22日(日)】


 新大久保《梁の家》で、関口苑生お誕生宴会。関口夫妻に「ブックナビ」レギュラー組(香山・吉野・豊崎)とうちの家族3人の総勢8人。
 トキオ社長は、表で遊んでたお店の人(梁さんらしい)の子供二人(姉弟)の釣りごっこだのピストルばんばんごっこだのに混ぜてもらってご満悦。別れるときは帰りたくないと号泣してました。十歳ぐらいのお姉ちゃんのほうはめちゃめちゃかわいかったな。
 二次会はパセラで「TV主題歌縛り」カラオケ。「くーがのおわりのうた」とか歌って大はしゃぎのトキオ社長が興奮して全然寝ないので結局12時過ぎまでひっぱりタクシー帰宅。うちが帰ったあとは「哀しい歌縛り」になってた模様(笑)。



【2月23日(月)】


 埼玉スタジアムからの帰り道に周囲のサポーターたちの間でこらされていた謀議(笑)が、ジーコ解任デモに結実。60人という人数は微妙だけど、わりと大きく報道されて、初期の目的は果たしたのでは。というか、対費用効果の非常に高いデモだった気が。もっとも、表だってジーコを批判するのはなにかと差し障りがあるメディアが、サポーターのデモにかこつけて批判を書いてるって側面もあるかもねえ。



【2月24日(火)】


 個人ウェブサイト初期の歴史ってネタで月刊アスキーのコラム原稿。こんな昔話を書くページじゃない気もするんだけど、ご長寿ブログからの流れってことで。
 今回は、ピクスピとかアナテロとか「ズルして日記王」とかの話。ってまだ続くのか?



【2月25日(水)】


 18:00、都筑さんを偲ぶ会@椿山荘プラザ一階ギャラクシー。

 新潮文庫勤務時代、大森は都筑さんの担当をおおせつかり、1986年からの数年間は、東中野のお宅にもわりと足繁く通ってました。最初の仕事は、『トルコ嬢シルビアの華麗な推理』の文庫化にあたって、タイトル変更の相談をしたこと。ちょうどその2年ばかり前、トルコの人の抗議を受けて、特殊浴場の通称がトルコ→ソープへと一斉に変わったんでした(→「トルコ風呂考」)。
「ソープ嬢とかソープ・レディなんてえ言葉は使いたくないからねえ」とおっしゃって、都筑さんがしばし長考。最終的に「泡姫シルビア」に落ち着いたのはご承知の通り。
 ちなみにこの文庫版、目次と解説ページで解説者名が違っちゃってるんですが、これはどっちも都筑さんの筆名。矢田省作っていうのは「さくしやだよー」のアナグラム。これはたしか、最初、淡路瑛一(『猫の舌に釘をうて』の主人公の名前))名義で原稿をもらって、その後、「やっぱり矢田省作にします」と言われて本文を直したのに、粗忽な担当編集者が目次を直し忘れた――ということだったような気がする。それとも先に本文が校了してたんだっけかなあ。もうよく覚えてなくてすみません。
 その後、文庫オリジナルのエッセイ集『昨日のツヅキです』や、ホラー系のショートショート集『25階の窓』を出し、ホテル・ディックの長編、『ホテル・ディック 探偵は眠らない』を文庫書き下ろしで書いていただいたのがたぶん最後の仕事。本とビデオの山に囲まれた昼なお暗い仕事場で座布団にすわってお話を聞いていたのがつい昨日のことのよう――と言いながら、前述のように細かいことはもうほとんど覚えてなくて、最初にお目にかかった折、高橋良平氏に紹介してもらったのも、良平さんに今日聞くまですっかり忘れてました。

 一次会終了後は、石上三登志夫妻、鏡明、高橋良平、宇山日出臣、法月綸太郎の各氏とティーラウンジでお茶。すっかり昔話モード(笑)。



【2月26日(木)〜29日(日)】


 昼夜逆転したままひたすら仕事。

■香山リカ『就職がこわい』を読んでたらなんとなく『結婚の条件』の続篇みたいな気がしてきたんだけど(そう思ってると作中にも『結婚の条件』の話が出てきました)、大卒の就職率はいまや55パーセントなんだそうで。
 就職しなくてぶらぶらするのを許容してしまう親の世代(まあ、養えないわけじゃないからいいかという新合理主義)にも問題があるという指摘はけっこう正しいというか、こないだ鏡さんに、「そういえば、鏡さんちのお子さんももう大学卒業ですよね」と聞いたら、鏡さんいわく、
「それが莫迦な話でさあ。あんなとこ入ってどうするんだろうと思ってたら、こないだ相談があるってやってきて、べつの大学に入り直したいんだって。学費は? って聞いたら、『お父さんが出すんです』。いいかげんにしろと思うよなあ」
 思わず香山説に深く納得してしまった勢いで、《週刊新潮》の書評を書く。

 《小説すばる》の書評はどうしようかと思ったんですが、『イノセンス』を見た勢いで、『立喰師列伝』に決定。『うる星やつら』122話「必殺!立ち食いウォーズ!?」のノベライズです(違います)。

■「ペーパームービー」とか「監督:中森明夫」とか書いてある写真集(+若干のテキスト)、『東京アリス』(角川書店)がなぜか届いたので、ぱらぱらめくって愕然とする。
 うわあ。この気持ち悪さはいったいなに。ライバルは『Deep Love』?
 ビニ本的な写真はともかくとして、テキストが……。最初のほうをちょっと読んだだけであえなく挫折。ここまで強い拒否反応をもたらすっていうのもある意味すごい。同世代の人間の仕事に対するオレの考え方に根本的な変革を迫る一冊。

■『不思議のひと触れ』感想リンク追加→すみ&にえ「ほんやく本のススメ」。この対談書評サイトはけっこう読んでたのにどういう人たちか全然知らなかったんですが、一卵性の双子姉妹だったとは。ほんとかなあ。しかしネットで検索してると、「超絶ハンサム」に反応した人はけっこう多かった模様。向こう版の短篇全集に載ってる18歳ぐらいのときの写真がいちばん絶品なんですが、ネットには上がってないみたい。ヒゲの写真ばっかりだな。そうか、若いときの写真を著者近影に入れておくと部数が増えたかも。しまった。

■『文学賞メッタ斬り!』は、税抜き1600円、3月18日発売でほぼ確定の模様。200ページぐらいの本で――とか最初はいってたのに結局392ページになっちゃったので、たいへんお買い得なお値段だと思います。装幀は鈴木成一デザイン室。表紙イラストは天明屋尚氏。やっぱりメッタ斬りはサムライ・スピリットなのか? メッタ斬りにしてるサムライは主にトヨザキ社長ですが。大森は蝦蟇の油を塗る係。
 3月はじめからbk1でも予約開始。bk1購入特典のオマケ対談がつくらしい。っていうか、その対談はまだやってませんが。収録は9日かな。
 なお、「こどものもうそう」によれば、この発売に合わせて、
「青山ブックセンター本店カルチャーサロンで4月1日に大森・豊崎の毒舌ライブ『文学賞メッタ斬り!』イベントも開催予定。」
 と書いてあるから書いちゃってもいいんだよね。たぶん19:00開演。当日はエイプリルフールだからウソつき放題。入場料500円。招待されたい友人知人関係者業界人はは適当に連絡してください。

■ちなみに3月6日には、おなじABCサロンで、相方のトヨザキ社長がロシアのえらい作家と対談する、「リュドミラ・ウリツカヤさん来日記念対談と朗読の夕べ 『ソーネチカ』をめぐって 」が開催予定。『ソーネチカ』訳者の沼野恭子さんによる朗読付き。沼野恭子さんは沼野充義氏の奥さんで、こないだのパーティでは(出席できなかった)恭子さんの手紙が朗読されたんですが、いやこれが心温まる上品なユーモアを湛えたすばらしい傑作でした。

■『犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』もbk1で予約開始。3月中旬刊行予定になってますが、4月中旬のまちがいです。

■「新しいエントリが上に来る」っていうのがblogの条件らしいので、それに合わせてindex.htmlを逆順にしてみました。もしかしたら次回から、最新エントリをトップページに貼る方式に変更するかも。でもフレームにはしたくないからなあ。




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