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シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房新社1900円)発売中→bk1 | amazon



【11月1日(土)〜7日(金)】


 スタージョン『不思議のひと触れ』の解説を「何枚でも好きなだけ書いていいですよ」と言われて調子に乗って書いてたら四百字で55枚(リスト別)に(笑)。略歴紹介は『夢みる宝石』や『コスミック・レイプ』の解説とけっこう重複するんだけど、可能なかぎり新ネタを投入しました。短篇全集とかでいろんな人が語ってる細かいエピソードが面白すぎてなかなか削れなかったり。

 年末ベストのシーズン到来。先陣を切るのはリテレールの『今年読む本いち押しガイド』。適当にテーマを決めて4の倍数でベスト本を選べと言われたので、なにも考えずに今年のベストSFを選び、他の人が挙げた本とだぶったやつ(『海を失った男』『紙葉の家』『カルカッタ染色体』)をはずしたのが以下の12冊。

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫SF)
テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)
古川日出男『サウンドトラック』(集英社)
秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』(電撃文庫)
冲方丁『マルドゥック・スクランブル』全3巻(ハヤカワ文庫JA)
深堀骨『アマチャ・ズルチャ』(早川書房ハヤカワSFシリーズJコレクション)
アンドレアス・エシュバッハ『イエスのビデオ』上下(ハヤカワ文庫NV)
福井晴敏『終戦のローレライ』(講談社)
瀬名秀明『あしたのロボット』(文藝春秋)
恩田陸『ねじの回転』(集英社)
小川一水『第六大陸』1・2(ハヤカワ文庫JA)
山尾悠子『ラピスラズリ』(国書刊行会)

 イーガンとチャンではやっぱりイーガンのほうが格上であるとの結論に達したんだけど、チャンは初物だし、これ一冊でぜんぶという付加価値があるので、《ダ・ヴィンチ》のベスト3は以下の3本。

●シオドア・スタージョン『海を失った男』(晶文社)
●テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)
●冲方丁『マルドゥック・スクランブル』全3巻(ハヤカワ文庫JA)

 《このミス》は例年、国内編だけしか投票してないんだけど、今回は直前に読んだデイヴィッド・イーリイの短篇集『ヨットクラブ』(晶文社ミステリ)があまりに傑作だったので、急遽海外編にも投票することに。ミステリチャンネルの年末スペシャル『闘うベストテン』で、昨年から海外編にも出演することになったんで、どうせ主な海外ミステリは読まなきゃいけないしな。
 というわけで今回の《このミス》投票はこんなの。

【国内】
1『サウンドトラック』古川日出男
2『マルドゥック・スクランブル』冲方丁
3『終戦のローレライ』福井晴敏
4『ZOO』乙一
5『葉桜の季節にきみを想うということ』歌野晶午
6『月の扉』石持浅海

【海外】
1『ヨットクラブ』デイヴィッド・イーリイ
2『海を失った男』シオドア・スタージョン
3『半身』サラ・ウォーターズ
4『心の冷たい谷』クライヴ・バーカー(ヴィレッジ・ブックス)
5『紙葉の家』マーク・Z・ダニエレブスキー(ソニー・マガジンズ)
6『カルカッタ染色体』アミタヴ・ゴーシュ(DHC)

 週刊文春と原書房の『本格ミステリベスト10』は投票しそこねました。同居人が郵便物をまとめて突っ込んでいたファイルボックスにうちの老猫が思いきりゲロして、どうせダイレクトメールとかだからいいやと思って放ってあったら、実はその中に両方の投票用紙が入っていたというお粗末。なんか今年はベストテンの投票用紙が来ないなあとかぼんやり思ってたんでした。ていうか、投票依頼も投票もぜんぶメールにしてほしい。いや、メールはメールで忘れがちなんだけど。



【11月7日(金)〜10日(月)】


 京都SFフェスティバル2003のため、前日から京都入り。インターネットのホテル予約サイトで見つけた京都トラベラーズインってところに初めて止まったんですが(そこしか空いてなかった)、これがなかなか。設備は古いしエレベーターもないんだけど、ゆったりした感じでわりとくつろげる。場所は平安神宮大鳥居東、美術館前。動物園まで徒歩2分なんで、チェックインするなり子連れでダッシュしてキリンとかライオンとかを見せ、翌朝も散歩がてらまた動物園。週末なのに客もまばらで思いきりのんびりしてました。

 で、妻子は動物園に置いたままタクシーで先に京フェス会場。英文学会と掛け持ちの若島さんと朝イチ企画、「『人間的』SF−シオドア・スタージョンの世界」を消化。もうちょっと対決的な方向(笑)に持っていきたかったんだけど、若島さんに軽くいなされてしまう。
 動物園からもどってきた妻子および到着したばかりのS澤編集長と昼食。

 午後の企画、小川一水×野尻抱介「宇宙開発を小説にするということ」は、キャラの差がうまく作用してなかなかいいコンビネーションでした。大野万紀司会も正解。
 最後は三村美衣による冲方丁インタビュー「武器と少女」。微妙に突っ込みどころが違う気がしたが、話としては面白かった。

 今回、合宿は珍しく麻雀。半荘一回目は東浩紀大暴走。驚くべきバカづきをカサに着ての言いたい放題でうるさいのなんの。当人既報によれば、
あと個人的に印象に残ったのは、大森望、倉阪鬼一郎、冲方丁の三氏と麻雀を打ったこと。親で多牌するという大チョンボにもかかわらず、トップという快調な戦績。麻雀は一年に一度ぐらいしかしないので、記念のため書き記しておこうと思う。
大森の記憶によれば、東浩紀は闘牌のあいだじゅう、
「いやあ、また上がっちゃうなあ。まずいなあ。こんないい手がどんどん来るんだもんなあ。申し訳ないなあ。でもしょうがないよなあ。いやあ、すいませんねえ。こんなすごい手で。へんだなあ。おかしいなあ。あ。わははは。はは。なんだ。みなさん、なにがへんだかわかります? いやあ、そうか。困ったなあ。わっはっは。そう。一枚多い。なに? 多牌っつうの? ひさしぶりだよ、こんなの。えーと。いくら払えばいいんだっけ? 12000。安いもんだね。はいはいどうぞ。そーかー、多牌かー、いやあ、めちゃくちゃすごい手だったんだけどなあ。まあいいや。なに? まだオレがトップなの? 親で多牌したのに? 簡単だねえ、麻雀なんて」
 などなどとわめきちらし、古沢嘉通氏が差し入れてくれた高価なワイン(推定)をガブ呑み。
 倉阪鬼一郎いわく、
「トップの東さんはたった半荘一回なのに信じられないほどの喜びぶり、いずれ痛い目に遭わせなければ。」

 しかしいちばん悔しがっていたのは冲方丁。同伴した新婚の奥さん(一般人)を拝み倒して麻雀の許可をもらい(奥さまのほうはその間、古沢ワイン部屋に誘導)ようやく打てたと思ったら東浩紀独演会ですからね。
「うーん、納得がいかん」を連発。「もう一回できないですかね。だれかいませんかね」
 ……すでに奥さんのことを忘れてないかキミは。

 というわけで二回戦に突入。といっても東浩紀は企画で抜けてしまったので、かわりに入ったのが小川一水と水鏡子だか誰だか。傷心の冲方丁を慰めようと思ったが大森も前回最下位に沈んでむしゃくしゃしてたのでついトップをとってしまいました。冲方丁は最下位に沈み、「すみません。勉強になりました。出直してきます」と悄然。ウフコックを連れてきてればねえ。
 しかし大森もまだ納得がいかない。東浩紀は必ず倒す。

 と誓って合宿企画のSF雑誌部屋を覗きにいくとなぜか《ファウスト》の話。ここでも東浩紀の熱弁は続き、
「僕はべつに太田くんの弁護をする気はないんだけど、やつはすごいよ。ミステリはもちろん、SFもぜんぶ持っていこうとしてるからね。僕はSFファンだから心配なんだけど、放っておいていいんですか。ライトノベルもSFも、いいところはみんな《ファウスト》にとられて、太田の天下になっちゃいますよ。だから対抗誌がぜったい必要だと思うんだよね」
 などなどとしゃべり散らした挙げ句、その場で太田編集長の携帯に電話。時刻は午前3時。
「なに、いまどこにいるの? オレ? オレは京都だよ。京都じゃたいへんなことになってるよ。SFの連中がみんなで《ファウスト》吊し上げてて。すぐ来いよ。いますぐ。なに? 彼女といっしょなの? それ人間カノジョ? いやあ、悪かったねえ。でもセックスなんかしてる場合じゃないって。ちょっと待って。いま大森さんと替わるから」
 などなど。あらためてことわっておきますが、大森が《ファウスト》の創刊記念イベントに行かなかったのは、このミス大賞選考会直後で疲れてたのと、「呼ばれてない会には行かない」というポリシーのためで、太田くんにも《ファウスト》にも含むところはありません。タニグチリウイチは話を面白くしないように。いや、態度としては正しいが。

 ちなみに「SFは《ファウスト》をこのままにしておいていいのか」問題については大森が完璧なロジックで論破し、東浩紀が「わかりました。もういいです」と白旗を掲げたのだが、そのあとぽつりと一言。
「まあいいや。議論で負けても、麻雀で勝ったから」
 東浩紀許すまじ。

 明け方ちょっと寝てから、河原町でお茶。佐脇洋平一家のクルマで伊丹空港まで送ってもらって高知へ。心臓血管手術で入院していた母親の見舞い――のはずだがすっかり元気になってました。



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