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【お知らせ】
コニー・ウィリス『航路』、全国書店で発売中(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円
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『航路』ネタバレ感想・議論用掲示板を設置しました。あんなことやこんなことを心おきなく語りたい人はどうぞ。




【12月17日(火)〜12月18日(水)】


 グレッグ・ベアのネビュラ賞受賞作『ダーウィンの使者』の文庫版(ソニー・マガジンズ《ヴィレッジブックス》)が届く(→amazon | bk1)。
 お値段は単行本の半額になり、高橋源一郎の解説付き。今回の文庫化は、もちろんゲラは見たものの、あとは「高橋源一郎もしくは池澤夏樹に解説頼んでね」と言っただけで、カバーや帯がどうなったのかも全然知らなかったんですが、ふうん、こんな本になったのか。なんか単行本版のミニチュアみたいでちょっとかわいい。
 グレッグ・ベア版『継ぐのは誰か?』みたいな人類進化SFで、『SFが読みたい!2001年版』のベストSF2000第4位、『森下一仁のSFガイド』ベストSF2000第2位にランクイン。続編のDarwin's Childrenはまもなく本国で刊行予定。途中まで読んだところで年末のどさくさに入っちゃったので止まってますが、感想はまたそのうち。とりあえず、『ダーウィンの使者』のミニリンク集。

大森望による『ダーウィンの使者』単行本版訳者あとがき
渡辺英樹による書評(SFマガジン2000年6月号)
森下一仁による書評(小説推理2000年7月号)
尾之上俊彦による書評(SFオンライン38号)
野田令子〈遺伝生物学者の目から見た最新遺伝SF〉(SFオンライン39号)
岡本俊弥による書評(岡本家記録)
大野万紀による書評(THATTA ONLINE)

 作業の途中で、大森の原稿閲覧室のインデックス・ファイルが前回引っ越し時に古いバージョンに置き換わっているのを発見したので更新しておきました。



【12月19日(木)】


 ミステリチャンネルで『ブックナビ』の収録。今回はお正月バージョンなのでそれっぽい格好でひとつ――というお達しがあり、80年代末に原宿で買った(推定)三つボタンの海老茶色スーツを着る。なんとかズボンのボタンが留まってよかった。
 当時としてはふつうにカジュアルなスーツだったんですが、ロンドン土産(ハロッズのマイ・ファースト・テディベアとか)を持ってやってきたスタトレ洋行帰りの堺三保は、「なんかホストみたいですね」と一言。こんなおっさんのホストはいません。TVムービー版『柔らかな頬』の三浦友和か?

『終戦のローレライ』が次号まわしになったので、今月のイチ押しは松尾由美『スパイク』。珍しく香山二三郎氏と重なる結果に。帯には「恋愛ミステリー」とか書いてありますが、『スパイク』は思いきりSFファン向けなのでそっち系統の人はお見逃しなく。犬好きの人もね。

 年内最後ってことで、収録終了後はトヨザキ社長が発見した神田近くの居酒屋で軽く忘年会兼打ち上げ。



【12月20日(金)】



 ソニー・マガジンズから届いたクライブ・バーカー『アバラット』(→amazon | bk1)を読む。著者自筆のカラーイラスト満載のナルニア系というかオズの魔法使い系ファンタジー。養鶏業しか取り柄のないミネソタの田舎町に住む少女が異世界に行っちゃうまでの導入部は完璧。すばらしい。カンザスで竜巻にさらわれるよりずっと鮮やかなイメージ。行った先の異世界はアルファベット諸島みたいな多島海なので、ドロシーがアーキペラゴに行く話だと言えなくもない。ただしそこから先は、次から次へと珍奇なキャラや生物が紹介されるだけなので、ストーリーが動き出すのはまだこれからという感じ。しかしよくこの値段で出せるなあ。ソニー・マガジンズ恐るべし。この手のファンタジーで翻訳が池央耿っていうのもすごいけど、amazonの『アバラット』ページにはトヨザキ社長の解説と著者インタビューに加えて、訳者インタビューも載ってたり。

 さらにソニー・マガジンズの恐るべき新刊がもう一冊。まだ半分しか読んでませんが、マーク・Z.ダニエレブスキー著、嶋田 洋一訳の『紙葉の』(→amazon | bk1)も相当にすごい。D・A・スターン『ブレア・ウィッチ・プロジェクト完全調書』の現代文学バージョンみたいなホラー。
 内側から測るのと外側から測るのとでサイズがちょっとだけ違ってる妙ながあって、これはおかしいと調べはじめたら、存在するはずのない廊下とかどこまでも降りていく階段とかが出現し、どんどん凄いことになっていく――という探検の過程を主でもある世界的な写真が撮影したドキュメントフィルム『ネイヴィソン記録』があり、その真偽と芸術的な価値をめぐって膨大な数の論文や分析やインタビュー(デリダとかトドロフとかも登場)が発表されている――という設定の膨大な原稿の山を残して死んだ盲目の老人(ザンパノ)がいて、タトゥーショップでバイト中の主人公トルーアントがその原稿を再編集しつつ膨大な注釈を加えていくんだけど、その注釈の中ではまたべつの物語が進行し――というような構造。
 本文は二色刷で、という字だけが青くなってたり、ほとんど白紙のページが続いたり、デザイン的にもやりたい放題。半分まで読んだ段階では、タイポグラフィ的な部分がそれほど成功しているように見えないとか、(全体として)クロノロジカルな叙述と大枠の設定とがいまいち合ってないんじゃないかとか、いくつか疑問はあるものの、『ネイヴィソン記録』部分はスリリング。ホラー的に分類すれば一種のヘルハウスもので、映画の『ポルターガイスト』を思い出すような部分もあるが
、たとえばJ・G・バラードの「未確認宇宙ステーションに関する報告」に通じるような奇想SFでもある。けっこう悲惨な状況下でネイヴィソン弟が爆笑のジョークを独白したり、トルーアントおよびその友人の赤裸々性生活が披露されたり、コミカルな要素や細かいギャグもちりばめられていて、リーダビリティは意外に高い。
 ただし本が物理的に重たいので持ち歩くには向きません。オレは読書スタンド使ってるから寝転がって読めるけど、そうじゃないと腕力が必要かも。




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