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【お知らせ】
コニー・ウィリス『航路』、全国書店で発売中(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円
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『航路』ネタバレ感想・議論用掲示板を設置しました。あんなことやこんなことを心おきなく語りたい人はどうぞ。




【11月23日(土)〜26日(火)】


 ハヤカワSFシリーズ(銀背)のことをちょっと調べてて、「水鏡子みだれめも」の1992年に「◎叢書の研究1 ハヤカワSFシリーズ」があるのを思い出した(というかgoogleでひっかかった)んですが、いいかげんにhtml化したファイルがあまりにも読みにくいので反省して、この部分だけ独立させました。こんな情報にいまどき興味がある人がどのぐらいいるのか謎ですが、水鏡子師匠が語る銀背の歴史に興味がある人はhsfs.htmlをどうぞ。ほかのことはともかく、地道に調べた重版データはけっこう貴重かも。

 12月売り《小説すばる》時間SF特集の時間SFブックガイド原稿。ロボットSFのときと違って数が多すぎてたいへん。さらに、話の中身は覚えているのにタイトルと著者名を思い出せない短編が山のようにあり、読み返すこともできなかったり。タイムトラベルしない時間SFを山ほど紹介する予定がもろくも挫折。『世界のSF文学総解説』の増補改訂版が望まれる。

 その『総解説』を参考文献に挙げている平谷美樹『ノルンの永い夢』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)も『果てしなき流れの果に』トリビュート風の本格時間SF。私小説風の導入は半村良スタイルで、そこから戦時下のドイツの研究都市へと話を飛ばすあたりの呼吸は抜群。公安調査庁第三部とか、エスピオナージュ的な要素がいかにも絵空事っぽい難点はあるにしても、書きっぷりはおおむね堅実。この手のモチーフだと、『グランド・ミステリー』とか『エリアンダーMの犯罪』とか、強力なライバルが多いので、不利は否めないが、あえてそういうところで勝負するのが平谷美樹の作家性か。高次元多胞体理論にもうちょっと説得力があれば傑作になったかもしれない。結局、多世界解釈+ヒルベルト空間ネタに見えちゃうのが惜しまれる。



【11月27日(水)】


《辛・韓国映画祭2003》で上映されるホン・サンス監督『Turning Gate』の試写@メディアボックス。「韓国映画とハングル」輝国山人の韓国映画では『生活の発見』というタイトルで紹介されてるやつ。Turning Gateは作中で主人公が出かけるお寺の「回転門」のこと。そこで語られる安珍清姫みたいな説話が映画の通奏低音になるという仕掛け。ちょっとゴダールっぽかったり、笑いの間が独特で面白かったりするけど、もうひとつぴんと来ない感じ。
 試写に来ていた柳下毅一郎と近所の蕎麦屋で食事して帰宅。



【11月28日(木)】


 高田馬場ルノワールで、三村美衣と「SF者の癖」対談。《本の雑誌》の「なくて七癖」特集の一環だとかで、あとは編集者編と翻訳者編と書店員編と書評家編があるらしい。オレの場合、あとは書店員を経験するとコンプリートなのか。ってなにを。
 伝言板のほうでは皆様から多数のネタを頂きましたが、どの程度採用されるかは《本の雑誌》M村嬢次第なのでいまのところ不明。投稿ネタのうち、大森がこれはあるかなと思ったのは、
・「マガジン」、「セミナー」といったように、会話中で「SF」の語は省略してしまう。
・固有名詞の間違いに敏感。
・団体でレストランや喫茶店に入ると、追い出されるまでしゃべり続ける。
・十一人だった場合、必ず誰かが「11人いる!」と「!」付きで言ってしまう。
 ……というあたり。
 三村美衣が言ってた、「知り合いの名前に言及するとき(先輩後輩同輩を問わず)フルネームで呼び捨てにする」っていうのはSF者の癖じゃなくて伊藤典夫の影響か。それとも一の日会流? 敬称に悩む必要がないし同姓も区別できるので便利ですが。
(例)「それだったら水鏡子より中村融のほうが詳しいんじゃないの。山岸でもわかるかもしれないけど」(年下の場合、ファーストネームを省略する傾向あり。でも浅倉久志は「浅倉さん」だし、伊藤典夫は「伊藤さん」かも)。
 大森が在学中の京大SF研では、姓のあとに氏をつけるという竜宮式(笑)の呼び方が定着してましたが(「アボ氏」「サワキ氏」など)、いまは採用されてない模様。

 対談終了後、M村嬢と三人で近所のタイ料理屋カオタイへ。



【11月29日(金)】


 第三回小松左京賞受賞作、機本伸司『神様のパズル』(角川春樹事務所)を刊本で再読。予備選考段階の原稿を読んだときほどのインパクトはさすがにありませんが、こういうタイプの宇宙論SFを長編で書いたのはたぶん前代未聞。ふつうだと科学者ディスカッション小説になっちゃうんだけど、そうじゃないところが凄い。
 小柴昌俊のノーベル賞受賞でスーパーカミオカンデにスポットがあたったところだし、タイムリーな出版になったかも。
 一言でいえば、作中でも言及される「フェッセンデンの宇宙」の現代版だから、SF読者には展開の予想がつくわけで、この作品がおもしろいのは、それを現代小説として成立させるための手練手管。借り物じゃないアイデアで勝負する勇猛果敢さもすばらしい。作中で提唱される光子場仮説はけっこう説得力があるような気がするんですが、その筋の人が読むとどうなんでしょうか。



【11月30日(土)】


 amazon.co.jpの『航路』上ページはいまも一日一回はリロードして売上ランキングをチェックしてるんですが、11月になってからは148位が最高で、最低が14,718位。だいたい3桁から4桁を行き来してたのに、月末になっていきなり35位まで再浮上、トップ100に返り咲き。明和書店に寄ったら、「昨日は3セット出ましたよ。上巻が切れちゃって練馬から持ってきました」と言われるし、なにかあったんだろうか。いや、とにかく売れ行きがぱたっと止まらなくてよかった。
 というわけで、『航路』感想リンクもひさしぶりに更新。

 扶桑社から12月20日に出るイルハン王子の写真集がamazonで予約受付開始。扶桑社K編集長はやることが早い。扶桑社ワールドカップ三部作のトリを飾る本らしい。あとの2冊は古沢さんが訳したファーガス・ケリー『戦う男:ベッカム』『もう一度、会いたい! Oliver Kahn―世界最強ゴールキーパーの素顔』。イルハンの写真集はたぶん世界初の日本オリジナル本なのでポイントが高い。トルコ女性に高く売れたりとか……しないか。



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