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【お知らせ】
コニー・ウィリス『航路』、全国書店で発売中(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円
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『航路』ネタバレ感想・議論用掲示板を設置しました。あんなことやこんなことを心おきなく語りたい人はどうぞ。




【11月8日(金)】


 夕方の羽田発ANAで高知。



【11月9日(土)】


 ずっとやってた鏡川べり(紅葉橋のたもと)の工事が終わったと思ったら、何十年も前からあるような野原に変貌していて仰天。泳ぐのは無理としても、夏場は水遊びができそう。トキオ連れで河原をぶらぶら歩いて、バッタをとる休日。

 といっても仕事が残ってるので、《本の雑誌》書評用にブラッドベリ『塵よりよみがえり』(「集会」に始まるエリオット・ファミリーの短編を集めて長編っぽく仕立て直したやつ。短編集のままのほうがよかった気も)、瀬名秀明『あしたのロボット』高野史緒『アイオーン』を読む。
 『あしたのロボット』は初出時に読んでるやつが多かったのであとまわしにしてたんだけど、通して読むとちゃんとロボット年代記的な長編になっているのだった。技術的なブレークスルーは仮定せず、現在進行形のリアルなロボット話が中心なのに、読み心地は明らかにSF。こういう手法で書かれた小説ははじめてかも。SF年間ベストに入りそうな傑作。手塚ワールド建設中止が発表されたおかげでパラレルワールド度がさらに高まり、ありえたかもしれない未来への郷愁を誘う話になっていたり。

 夜は新阪急ホテルの《ル・シエル》で今回の帰省のメインイベントがあったんですが、まだ内緒かもしれないので詳細は後日。



【11月10日(日)】


 早起きして、実家マンション一階の喫茶店で《通訳・翻訳ジャーナル》の原稿。「もうひとつの訳者あとがき」ってコラムで、『航路』の話。しかしもう書くことがない。

 市電で大橋通まで出て、ひろめ市場で昼食。屋台の鯛飯とかウツボのタタキとか。日曜の昼時なのでほぼ場内は満席。景気よさそうに見えるんですけど。
 帯屋町を歩くとゑり忠の店長が店の前にいたので、向かいの喫茶店でお茶。長女の中学校受験でたいへんらしい。高知の場合、中学校から私立に行かないとあとがたいへんなので、小学校から塾通いの子供が異様に多いのである。
 夕方、西澤保彦夫妻のお宅にちらっとお邪魔してから実家に帰宅。《いもと》で夕食。



【11月11日(月)】


 昼過ぎのJALで東京。西葛西に着いてから《本の雑誌》新刊ガイドの原稿を仕上げてメール送稿。

 家に帰り着くとYahoo! BBの12メガADSLのモデムが宅急便で届いてました。局内工事はもう終わってて、東京めたりっく通信の旧モデムではもうつながらない。
 東京めたりっく通信がソフトバンクグループに買収されてから1年と数カ月、ようやくめたりっくの1.6メガ回線からYahoo! BBの12メガに乗り換えられるようになり、オマケでBBフォンもついてくる。
 ためしに旧モデムをはずして新モデムに付け替えてみたら、説明書を見るまでもなくあっさりつながる。電話はNTTパーソナル時代のPHSホームステーションなんで大丈夫なかと思ったけど、モデムの電話ジャックにつなぎ変えただけで問題なく使えました。
 三村美衣のところがすでにBBフォンになってるので早速無料通話実験。音はいまいちだが実用上は問題ないレベル。BBフォン同士なら何時間かけても無料だし。宇都宮在住のさいとう妹の家もBBフォンなので無料通話率高し。さらにアメリカ全土どこにかけても通話料は1分2.5円。すでにアメリカも市内通話の世界なのか。
 問題は固定電話をふだんほとんど使ってないことだな。あと、いまんとこ番号通知非対応なので、携帯宛ての通話料も非常に安いとはいえ、ちょっと使いづらい。

 12メガADSLのほうは、回線速度計で測ってみるとだいたい4メガbpsぐらい。仕事場のマンションの8メガADSLとほぼ同じ速度ですが、まあこっちのほうが電話局との距離が若干遠いので仕方がない。料金的には前より安くなったぐらいなので御の字でしょう。



【11月12日(火)】

 SFマガジン用ディック映画座談会の原稿をなんとかまとめる。ほとんど放談会。中原昌也のキャラが立ちまくって爆笑なんだけど、知らない人ははたして笑えるのか? やっぱりだらだらビデオ流してたのが失敗だったかも。実のある話をしてるのは柳下毅一郎ぐらいだもんなあ。もしかして「司会」のクレジットが入ってるかもしれませんが、読めばわかるようにだれも司会してないのでよろしく。いや、オレは読んでてくすくす笑いっぱなしだったんですが、怒る人もいそうだよなあ。昔の奇想天外の座談会みたい。あとはS水くんの編集手腕に期待。



【11月13日(水)】


 書くのをすっかり忘れてたけど、11月3日はワセダミステリ・クラブ主催の『奥泉光講演会』に行ったんでした。ひさしぶりに正規開催された早稲田祭はものすごい人手で、しかも交通整理が全然ないので会場にたどりつくまでが大変。
 着いたときには講演も終盤。その前にSFの話もけっこうしてたらしく、肝心なところを聞き損ねた気がするが、しかし司会者の質問は異様にマニアックというか濃い話が混じっててびっくり。配布された資料の作品リストも異様に詳しくて、奥泉さん自身も感心してました。おかげで例年と比べてもかなり密度の高い質疑応答だったような。最後はお約束のフルート演奏つき自作朗読で幕。
 終了後の打ち上げは例によって土風炉。例によってたいへんな人数だが、OB参加は少なくて、知らない若者が大多数。ひさしぶりの奥泉さんから朝日の連載の話とかを聞いたあと、ブロッコリーの里見プロデューサーから最近のおたく業界についてのレクチャーを受けたり、福井健太に今年の翻訳ミステリ状況を取材したり――と、以上11月3日の日記でした。



【11月14日(木)】


 1:00、「ライバン」試写@京橋メディアボックス。来年1月末からテアトル池袋で開かれる《辛韓国映画祭》にかかる予定の作品。たしか去年のコリアンシネマウィークでも上映されたやつ。タクシー運転手三人組の生活感あふれるコメディで、「月はどっちに出ている」路線か。印象は悪くないけど、まあB級。

 集英社文芸三賞授賞パーティ@帝国ホテル――の前に、ラウンジで朝日中学生ウィークリーの取材。お題はハリー・ポッターについて。なんだかんだで1時間ほどしゃべる。ハリポタにはわりと好意的だったんだけど、4巻を読んだ直後だからなあ。

 パーティのほうは例によって大混雑で、来てるはずの人にもなかなか会えない。最後は野口百合子・青山南両氏から最近の海外文学情勢を聞く。『愛のゆくえ』ハヤカワepi文庫入りの謎とか、『ライ麦畑』村上春樹新訳プロジェクトとか、『望楼館』とか。

 田中啓文・浅暮三文その他と小説すばる新人賞の二次会に流れ、たぶん初対面の姫野カオルコさんに紹介されたのち、一緒に坂東眞砂子さんの二次会へ。板東さんが会場に居酒屋を希望したとかで、こちらの二次会場は東方見聞録。高給とり・経費潤沢の年輩編集者陣は、「こんな店に来たの初めて」という人が多かった模様。しかし田辺聖子先生までおいでになるとは。入れ替わり立ち替わりいろんな人がやってくる二次会の場所にはやや不向きかも。

 12時頃帰宅して、あしたの《闘うベストテン》用に『サイレント・ジョー』の残りを読む。ハードボイルドの定型を微妙にはずす主人公の性格設定が意外にツボ。泣ける話じゃなくて不気味な話。



【11月15日(金)】


 ジョージ・R・R・マーティンのベストセラー大河エピック・ファンタジー《氷と炎の歌》の邦訳第一弾、『七王国の玉座』上下(岡部宏之訳/早川書房各2800円)が届く(→amazonで購入 | →bk1で購入)。
 税込みだと6,000円近い献本かあ。さすがにこれだと読むしかない――と思ってると、上には上が。縁のない版元から届いた巨大な箱を開けてみると、中身はデイヴィッド・プリングル編の『図説ファンタジー百科事典』(井辻朱美日本語版監修/岸野あき恵ほか訳/東洋書林12,000円)。ぱらぱら眺めてみると、プリングルの本だけあって、おなじみの名前が多い。小説に限らず、ファンタジー映画、ファンタジーTVドラマまで細かくフォローし、マジック:ザ・ギャザリングをはじめとするファンタジー系のトレーディング・カード・ゲームの項目まで立ってます(ただしM:tGの説明はちょっと首を傾げる)。
 原書はお手軽ガイド本だと思うけど、日本語版は邦訳ファンタジー書籍のほぼすべてを網羅する長大なリストつき。項目内の邦題もかなり綿密に調べている模様。もっとも、M・J・ハリスンの『パステル都市』(サンリオSF文庫)が未訳扱いになってたり、SFおたく系の人にちょっと見てもらえば防げたような見落としも少々。ま、その昔、国書刊行会から出ていた荒俣宏編の『世界幻想作家事典』もSF関係の記述はやや弱点だったので。事実上のホラー百科事典だったジャック・サリヴァン編『幻想文学大事典』(高山宏・風間賢二監修/国書刊行会一八〇〇〇円)のファンタジー版といってもいい。ハヤカワ文庫FTで出ていた作家の名前を網羅したうえで、ハリポタ以後の児童文学系ファンタジーまで入ってる本は、考えてみるとこれぐらいかも。

 2時から毎日映画社でミステリチャンネル年末恒例《闘うベストテン》の収録。
 週刊新潮読んでるうちに九段下を乗り過ごし、ボケてるなあと思いながらミステリチャンネルに行ったら、「え? みなさんもうパレスサイドビルのほうに……」 だから今日の収録は毎日映画社のほうだってば。30分近く遅刻してやっとたどりつき、すみませんすみませんと謝ろうと思ったら、杉江松恋はさらに遅刻しているのだった。

 4時ぐらいからスタートした収録はわりと順調に進み、意外と盛り上がる。国内のほうは《このミス》とぜんぜん違う結果でした。あとは収録の最中、一瞬でもカメラが止まると携帯をとりだして打ち合わせをはじめる杉江松恋とか、茶木則雄が乗り移ったようにキレたふりをする(でもいまいち迫力がない)香山二三郎とか、勝手にどんどん順位を決める豊崎由美とか。

 4時間にわたる収録が終わったあと、パレスサイドビル地下の居酒屋で打ち上げ。明日が早いので11時過ぎにとっと帰宅。

 ――したものの、眠れないのでうっかり『七王国の玉座』上巻(→amazon | →bk1)を読み始めたら止まらなくなる。オマケをべつにすると、長さは『航路』とほぼ同じぐらい? (『航路』が高いと言ってた人は、こっちの早川書房定価とよく比べてみてほしい――というか、このほうがふつうの価格設定だと思う。ソニー・マガジンズはあれでも異様に安いのである)。
 ただしこっちは六部作か七部作の第一巻。ってことは、完結すると12,000枚とか14,000枚になるわけですね。
 ファンタジーと銘打たれてはいるものの、第一巻は魔法だのドラゴンだのは全然出てこなくて(そういうのが滅びちゃったあとの時代らしい)、架空歴史小説というか、薔薇戦争当時のブリテン島みたいな土地を舞台にした戦国時代小説。厳密に分類するとサイエンス・ファンタジーになりそうなセカンダリー・ユニバース物なんですが、マーティン自身は歴史小説がやりたかったらしいし、SF色もファンタジー色もほのかに窺える程度。むしろ日本人には、信長亡きあとの動乱の時代の話みたいにして読めるかも。

 ドラゴンの血を引く家系が七王国を統一してたんだけど、長く続いたその王朝を倒してロバートが玉座についたのが13年前。
 前半の主役となるヨーク家――じゃなくてスターク家の当主エダード(ネッド)は、北のほうの国を平和に治めている。ところが、ロバート王の補佐役(「王の手」と呼ばれる)が死亡し、ロバートの親友でもあるエダードが後任に指名されたのが悲劇の幕開け。
 ロバート王はけっこういいやつなんだけど、わりと単純な激情家で、政治的には王妃の一族、ラニスター家にいいように牛耳られている。とつぜん首都の宮廷陰謀劇のただなかに投げ込まれたエダードは、与えられた権力を使って、なんとかラニスター家の影響力を排除しようと奮闘する一方、前任の「王の手」の死に不審を覚え、ひそかに調査しはじめる。
 ――みたいな大筋のかたわら、多彩な登場人物たちの話が同時進行してゆく。冒頭、5匹の仔をはらんだ瀕死のダイアウルフをエダードの子供たちが見つけるエピソードがあり、ダイアウルフの仔は、5人の子供それぞれにひきとられ、子供たちの成長とともに数奇な運命をたどるわけですね。
 ふつうに読むとスターク家の連中が善玉で、ラニスター家の連中が悪玉だが、聡明な両親のもとにもアホな子供は生まれるし、悪者一族の中にもまともなことを考えるやつがいる――と、このへんは《銀英伝》の感覚で読めるかも。とくにキャラが立ってるのは、背丈が普通人の半分ぐらいしかなくて、インプ(小鬼)とか呼ばれてるラニスター家の男。彼が憎まれ口を叩きながらのしあがってく感じは、ちょっとマイルズ・ヴォルコシガン風。

 七王国をめぐる政治的大変動の陰では、虐殺から逃げ延びた先王の娘が騎馬民族に助けを求め、族長の妻となって復讐の機会を窺ってるという中国大陸的なエピソードも混じり、さらに北の国境をなす長大な壁(ハドリアヌスの長城みたいなやつ)の向こうでは、不気味な事件が……という具合。

 最近、波瀾万丈のプロットにはほとんど興味が持てなくなってるんだけど、これだけやってくれれば文句はない。アメリカではインスタントクラシック扱いされてるシリーズだし、長い物語が好きな人は買って損はないでしょう。



【11月16日(土)】


 というわけで、今日は、なんと今年で20回目を迎えるらしい京都SFフェスティバル2002

 10時過ぎの《のぞみ》で東京発。今年は紅葉が早くて観光客が押し寄せているらしく、八条口のタクシー乗り場は大混雑。京都教育文化センターにたどりつくまで30分もかかるとは。もっとも企画のほうも10分遅れぐらいになってたので、ちょっと前に着いたという河村親弘氏とおひさしぶりですの挨拶を交わしてから10分ぐらい打ち合わせ。

それから「アブノーマルSF」の企画に入ったんですが、河村さんはキャラ立ちまくりで会場を爆笑の渦に叩き込む。末井昭ネタとか藤脇邦夫ネタとか、上司が有名だと便利――って、よく考えたらお客さんが認識していたかどうか不明。SFの話もほとんどしなかったし、時間を10分勘違いしていて、やっと『シャドウ・オーキッド』の話に入ったときは「残り5分」の合図が出てたり、思いきり無計画で失礼しましたが、ラブドールの話がたくさん聞けたからいいや。

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 「明智抄インタビュー」と「非英語圏SFの世界」は部分的にしか見ていないのでコメントはパス。関係ないけど、松本眞氏は元SFオンラインの坂口哲也氏としゃべりかたがそっくりだと思いました。少女漫画家の夫になる人特有のしゃべり方なのか?

 終了後は、いつものレストラン十両の向かいにある和食屋の十両でカンパチ定食。和食の十両のほうがあたりだと思った。しかしメバルの煮つけ定食かスズキの塩焼き定食がさらにあたりだったような気がする。来年はそっちを注文しよう。

 疲れたので合宿レポートは次のファイルに持ち越し。




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