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【お知らせ】
コニー・ウィリス『航路』、全国書店で発売中(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円
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『航路』ネタバレ感想・議論用掲示板を設置しました。あんなことやこんなことを心おきなく語りたい人はどうぞ。『航路』感想リンクも地道に更新中。




【10月15日(火)】


 きのうのライオンズ最終戦、カブレラは結局ホームランを打てなかったらしい。こうなったら、ローズとふたりでシーズンオフは漫才コンビを結成したらどうですか。ユニット名はもちろんコント55号。

 ソニー・マガジンズのM山嬢から架電。『航路』増刷のお知らせでした。週末三日間の全国紀伊国屋の販売部数が急激に跳ね上がったのが決め手とか。
 編集者時代には、紀伊国屋から上がってくる発売三日目と十日目の販売データに一喜一憂してたんですが、いまはレジのPOSデータがリアルタイムで更新され、版元の端末からリアルタイムでチェックできるシステムになってます。各社営業部それぞれが、紀伊国屋での販売部数をもとに全体の売れ行きを推計する過去のデータを持ってて、それに合わせて一カ月後とか三カ月後とかの総実売部数予測をはじき出すわけですね。

 それにしても、二刷りの増刷部数は初版部数にほぼ匹敵するような数字で、こんなに刷ってはたして大丈夫なのか。と思ったら、すでに(書店からの)注文残がかなりあるらしい。これもひとえに、この長い本を読んでコメントや感想を書いてくださった皆様のおかげ。ありがとうございました。これでウィリスの残りの未訳作品も出しやすくなるかも。

 劇場用パンフの原稿を受注したので、五反田イマジカ第二試写室で『ザ・リング』ふたたび。今回は字幕入りで、前回のノースーパー版と違ってクレジットロールつき。例の馬のシーンはフィル・ティペットのスタジオでやったらしい。今回は目を皿のようにして待ちかまえてたけど、どこからCGIなのかはやっぱりよくわからなかった。ぜんぶ実写だったりして。
 セリフを聞きとり損ねて話の辻褄が合わないのかもと思っていた部分は、やっぱりもとからシナリオの辻褄が合っていない。高山がサイコメトラーだという設定はなくなってるんですが、過去を調べる部分について説明がほとんどないので、頭の中で納得のゆくストーリーをひねりだすのがたいへん。まあ、中田版でもかなり辻褄が合わないところはあったんだけど。

 終わったあとは駅前のエクセルシオールで中原昌也氏ほかとお茶。中田版とあまりに同じなので日本ではどうか――って声もあったけど、意外と大丈夫じゃないかなあ。あとは「傑作『サイン』がなぜウケないのか」とか、『ジェイソンX』に怒る人はどうよとか、平日の昼間シネパトスに来る客についてとか。

 柴田よしき『聖なる黒夜』読了。暴力団に戦いを挑んだ謎の犯人グループを捜査官とヤクザ(またはそれに準じる人)のコンビが追う――という構造は、大沢在昌『砂の狩人』とほぼ同型。つづけて読むと作風が好対照で面白い。もっとも、『聖なる黒夜』のほうは、むしろラブストーリー的な側面が中心。韮崎が殺されるのが話の発端なので、軸は山内‐麻生で、背景に及川‐麻生と韮崎‐山内という感じ。攻/受関係は複雑にからみあってますが、こういうのは山内の誘い受っていうのか。
 物語の現在は1995年の10月で、麻生が警察を辞める前の話だから、緑子シリーズでいうと、『RICO 女神の永遠』『聖母の深き淵』の中間あたりですかね。独立した長編なので、必ずしも既刊を読んでる必要はない――というか、『聖母』や『月神の浅き夢』は未読のほうがドキドキできるかもしれない。

 ミステリ的には『砂の狩人』のほうがバランスがいいんだけど、捜査の過程に関して、「結局それが決め手になるんかい。だったら最初からそっち調べろよ」みたいな部分があったりするので、そのへんは『聖なる黒夜』のほうが緻密かも。ただし、実行犯の正体に関してはちょっと苦しい。この小説に関しては、エンターテインメントのパターンをもっと大胆に無視してもよかった気がする。まあ、男性読者は無視できないか。ある程度お約束を踏まえた分、リーダビリティは抜群で、この長さを一気に読ませるのはさすが。緑子は出てこないので、あのキャラクターがちょっと苦手っていう人にもおすすめです。

 山口雅也『奇偶』(講談社2,400円→amazon)も読了。タイトルは「奇数/偶数」じゃなくて(その意味も入ってるが)「奇妙な偶然」のこと。「サイコロ遊びをする神」をモチーフに、不確定性原理、易経、シンクロニシティ、人間原理、内蔵秩序etc.をめぐる議論がてんこ盛りの科学幻想ミステリ。著者自身を連想させる(キャラは全然違います)ミステリ作家が主人公で、竹本健治〜山田正紀のライン。個人的な事情として、シュレディンガーの猫の話をまた一から聞かされるのはけっこう脱力するんですが、一般的にはどうなんでしょうね。蘊蓄部分をもっと広げてあっと驚く架空理論を打ち立ててくれれば――ってそれじゃSFになっちゃうか。量子論の正統的な学説とトンデモ系の学説が説明なく並置されるのはちょっと。ミステリの枠組みでこういう小説を書く場合、もうちょっと違った処理の仕方があるような気がするが……。

 ゲラで読んだ川端裕人『竜とわれらの時代』(徳間書店)が到着。amazonでは24時間以内発送なんだけど、bk1ではお取り寄せ。『奇偶』はそれと逆になってますね。
 このサイト経由でもけっこう売れているラファティ『地球礁』はamazonでもbk1でも24時間発送。ところでamazonの「あわせて買いたい」だと、「『地球礁』と『現代思想の遭難者たち』、どちらもおすすめ」と言われてしまうんでした。そうか、ラファティと一緒に買うのはいしいひさいちなのか。目からウロコが落ちました。
 いしいひさいちと言えば、こないだの小説新潮の宮部みゆき特集号に載ってた「仁義なき戦い」マンガが大傑作でした。各社ミヤベ番編集者が実名で登場し血で血を洗う抗争を繰り広げる話。いや、顔はあんまり似てないんだけど。

 松坂健氏が産経新聞10月13日付朝刊のミステリー千夜一夜《海外作品》で『航路』を紹介してくれてるんですが、「臨死体験で見る××××××の夢とは何か」といきなりネタバレ(笑)。長めの書評でこのネタを割るのは問題ないと思いますが、そこで仰天した人も一定数いるらしいので、ある程度配慮していただけると吉。もちろん、「この小説の読みどころはそんなところにはない!」という確信があればかまいませんけど。だいたいこのネタ割らないと後半についてはほとんどなにも書けないからなあ。発売から1カ月たったあたりで、××××××小説として売り出すとか。××××××ものなら読みたいって人もいるだろうし。
 ウェブ上の感想を検索してみると、amazonのDMで『航路』のことを知って試しに注文してみたって人も発見。やっぱり実効性があるらしい。というわけでウェブ上で読める『航路』感想リンクは地道に更新中。あと、有里さんのところで、『航路』登場文学作品の調査が行われています。



【10月16日(水)】


 地上波で日本1-1ジャマイカの親善試合。新生日本代表はなんだかダメなときの(南米予選で低迷してたころの)ブラジルみたいなチームだと思った。ボールはキープできて足元のテクニックもあるけど、ワンタッチパスはつながらない。オールスターの親善試合ならいいけど、約束事がほとんどないっていうのはどうですか。俊輔はガラスのファンタジスタって感じだったしなあ。あのジャマイカ相手に引き分けでは。まあ、先は長いからいいけど、欧州組がそろっての練習は今後もそうそう時間がとれないわけで、今回のような 試合がくりかえされる予感も。ジーコもホームでジャマイカ相手に引き分けて満足してるようじゃジーコじゃないぞ。

『ザ・リング』のパンフ原稿用に、1500円DVDで買った『エクソシスト ディレクターズ・カット』とか『ポルターガイスト』とかを見直して復習。でも2500円の『オーメン』はレンタル。

 HDがいっぱいになってきたのでファイルを整理していると、WindowsMEのデスクトップから、いつのまにか「ごみ箱」が消失しているのを発見。recycledフォルダはあるんだけど、削除したファイルはそこには入らない模様。WinFDからごみ箱に送ったファイルはいったいどこへ? そういえばスタートメニューの検索も効かなくなってるし、大丈夫なのか。



【10月17日(木)】


 昨日の欧州選手権予選、9組イタリアはアウェイでウェールズ相手に敗北、7組イングランドはホームでマケドニア相手に引き分けの波乱とか。ともに現在の勝ち点は4。イングランドはまだ2試合しか消化してないからいいけど、同組のトルコが3連勝で絶好調だからなあ。9組はウェールズが1位で走るとは思えないのが救いか。




【10月18日(金)】


 月刊アスキーのコラム用に近代デジタルライブラリーを漁ってて、河竹黙阿弥「怪談木幡小平次」を発見。京極夏彦『覘き小平次』の元ネタ――というわけじゃないが関連文献のひとつ。『一谷凱歌小謡曲・隅田川鴬音曽我・怪談木幡小平次』の合本というか、25ページしかない台本集で、「怪談木幡小平次」はたった3ページの序幕だけ。こっちでは浪人の安達左久郎が商家の手代を騙して、持ってこさせた短刀を奪いとって刺し殺す現場を辻堂で休んでいた小平次が目撃する。
 これを黙阿弥が改作した「小幡怪異雨古沼」のほうも近代デジタルライブラリーで読めるんだけど、残念ながら山東京伝の「復讐奇談 安積沼」はないらしい――と思ったら、個人サイトで現代語訳が公開されてました。いちばん謎なのは、近代デジタルライブラリーで「小平次」を検索すると出てくる羽化仙史『死人の執念:怪談小説』。目次にはたしかに「第十七 宛然小幡小平次の末路 」っていう章があるんだけど、どう読んでも小平次とはなんの関係もない。
 小平次と聞いて大森が最初に連想するのは中川信夫の『怪異談 生きてゐる小平次』('82)で、これは1957年の青柳信雄監督『生きている小平次』のリメイクなんだけど、オリジナルは未見。中川信夫版では、小平次が藤間文彦、太九郎が石橋正次、おちか(お塚)が宮下順子でした。青柳版ではおちか役は八千草薫。チャンネルNECOで9月に2本立て放送したらしく、このときに見とくんだったな。どっちも原作は鈴木泉三郎の新歌舞伎らしいんだけど、これは大正年間の作品なので近代デジタルライブラリーにはありません。
 落語バージョンは聞いたことがないんだけど、名作落語大全集#73によると、八代目林家正蔵(彦六)の「生きている小平次」は絶品だったらしい。CDインターネット通販トムとかで買える模様。
『覘き小平次』のほうは、『嗤う伊右衛門』とほぼ同型の構造で、怪談を合理的に解決するための黒幕として小股潜りの又市一派が再登場する。『伊右衛門』同様、異形の夫婦愛ドラマですね。しかしトイレと食事と風呂はどうしてるんだろう。




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