Powered by bk1(Online Bookstore) →詳細検索
Powered by amazon.co.jp


コニー・ウィリス『航路』、amazon.co.jpで予約受付中。さらにbk1でも予約開始bk1でも国内配送料無料です)。
10月8日発売(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円)。

コニー・ウィリス日本語サイト:To Say Nothing of the GOD(神は勘定に入れません)開設しました



【10月1日(火)】


 きのうのアクセスログで64件も飛んできてるサイトがあるのでなんだろうと思って見にいったところ、『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史』を発見。思わず読みふけってしまう。これを見ると、オレは1997年の後半ぐらいから状況変化についていけなくなってる模様。
 それにしても、ここでも最初に登場する個人サイトがNozomi Ohmori SF pageだとは。歴史的建造物なのにまだ人が住んでてすげえや、みたいな。
 この当時有名だった個人サイトっていうとピクスピ(Pickles Spin)とかアナテロ(analyzing terrorist)とか。すでに思い出せないサイト多数っていうか、ぐぐるしてもあんまりヒットしなくて愕然としますが、そうか『Net Travellers '95』を発掘すればいいのか。紙媒体重要。
 1995年末とかの日本語ウェブサイト状況を全面的に再現する「Yesterday Once More」プロジェクトをだれか立ち上げませんかね。「The Second Summer of Web」同窓会も可。

 そういえば、新海誠氏がオープニングを担当した『Wind』は監督が酒井伸和って人で、同姓同名の別人かと思ったらnbkz本人らしい。竹中番長ことnt氏は最近「技術家」が肩書きらしいとか、2chにファソクラブができてるんだね、とか、近況もいろいろ。

 きのうの夜遅く、『航路』製品版の見本がバイク便で到着。カバーの色校は見てなかったんで、けっこう驚く。こんな紙だったのか。すばらしく渋い。ミステリでもSFでもなく新潮社の外国文学ハードカバーみたいな感じ。ソニー・マガジンズの本には見えませんね。雰囲気はぴったりなので、(タイトルともども)売れると「あの装幀はよかった」と言われるんでしょうが、ある意味かなり冒険的。売り方としては正しいと思うのだがしかし。

 こまめにチェックしているamazon.co.jpの売上ランキングでは、9/25の14:15に92位を記録したのが最高。あとは細かく上下動をくりかえしつつ落ちていって、最近は700位〜1万位とか。どうも1日単位のランキングらしい。

 台風21号が迫りくるなか、第三回小松左京賞授賞式&角川春樹事務所創立6周年記念パーティ@キャピトル東急に出かける。
 さすがにこの悪天候のせいか、参加者は少なめだが、春樹事務所の社業はこのご時世にもかかわらず上向きらしい。北方三国志はすでに200万部を売り、来年さらに100万部上乗せしたいとか、思いきり景気のいい話。ハルキ文庫の点数を絞るとかのリストラクチャリングで赤字を減らし、相変わらず好調の《ポップティーン》や『三国志』で利益を出すと。
 しかし春樹社長がいない間にあんまり躍進すると、もしかしたら春樹社長がいないほうがいいのではということにもなりかねないので――とか、だれもが思ってて口に出さないことをシメの挨拶で堂々としゃべりつつ会場の笑いを誘い、なおかつ嫌味にならない森村誠一氏のスピーチはあいかわらず見事としかいいようがない。

 第三回小松左京賞受賞作、機本伸司『神様のパズル』は萌えキャラ(天才美少女科学者)を導入した学園ユーモアものでありながら本格宇宙論SFでもあるというアクロバティックな傑作。現代版「フェッセンデンの宇宙」をここまでスマートに書ける人がいようとは。著者の機本さんは46歳なんですが、小説読んでると20代ぐらいの感じですね。いやまあ、それでも西崎憲氏よりは若いけど。
 その『神様のパズル』は11月刊行予定。カバーイラストを担当するDK氏とか、『星のバベル』の新城カズマ氏とか、初対面の人もちらほら。

 パーティ後は、山田正紀、高橋良平、永井豪など各氏とティーラウンジで一服。おもに最近の映画の話と、来週横浜で開催されるMANGAサミットの話。

 休憩のあとは風速30メートル(推定)の暴風が吹き荒れる中、徒歩で二次会場へ向かう。体重の軽い森奈津子嬢など、突風にあおられて5メートルぐらい飛ばされてました。ていうか、今日のこの天気なのに雨具が傘だけというのはみんな考えが甘いと思う。ま、風が激しい割りに雨はたいしたことなかったのはさいわいでした。

 二次会場では、作品内容や投稿歴について根掘り葉掘り受賞者から取材。二次会場に今野敏氏がいたおかげで、かろうじて「受賞者が会場の最年長」という事態は避けられた模様。その今野さんはすでに著書が100冊に到達したそうで、いやまあたいへんな仕事ぶりですね。
 前回受賞者の町井登志夫氏とは『ハルビン・カフェ』話とか。第二回小松左京賞受賞作『今池電波聖ゴミマリア』は、近未来学園ノワールの傑作なのに、ミステリ系の人にはほとんど読まれていないらしい。心ある編集者は町井登志夫に現代物の鬼畜ノワールを書かせるべきだと思いますね。ちなみに『今池電波聖ゴミマリア』(→bk1amazon)がどんな話かというと、
 時は2025年。日本の出生率は低下の一途をたどり、人口の3分の1が60歳以上。財政は完全に破綻し、健康保険も公共サービスも崩壊、街には回収されないゴミが山積みだ。主人公の森本聖畝{せいほ}は、日本中部の都市・今池の高校に通う17歳。暴力教室と化した学園にはフラタニテと呼ばれる学生グループが群雄割拠し、組織に属さない聖畝は、恐ろしく凶暴な大男の白石にくっついて、金{ペラ}稼ぎの仕事{トラボー}の手配役を勤めることで、なんとか苛酷な日々を生き抜いている。
 馳星周の歌舞伎町が引っ越してきたようなこの破滅的近未来描写が抜群。ただ陰々滅々なわけではなく、いきなり風俗嬢のマリアにハマって暴走する白石に聖畝が振り回される前半には(たとえば黒川博行『厄病神』のような)乾いたユーモアも漂う。(《本の雑誌》の書評より一部引用)
 三次会はパスして午前零時ごろ西葛西に帰り着く。
 酒見賢一『陋巷に在り』最終巻をついに読み終わり、これで全13巻をついに制覇。いやあ、長かった。

 その勢いで、著者から話を聞いているかぎりではたいへん面白そうだった新刊、町井登志夫『諸葛孔明対卑弥呼』(ハルキノベルズ)→bk1amazonを読む。冒頭は赤壁の戦い。天才軍師・孔明の軍事戦略には最新科学知識の裏付けがあった――という発想と、べらんめえ口調で喋らせる奇抜なキャラ造型が楽しい。一方、邪馬台国側の描写では、《倭国大乱》がほとんど歌舞伎町のシマ争いのような雰囲気で書かれているのがすさまじい。中国系・朝鮮系が入り乱れ、倭人の言葉をしゃべる人間のほうが少数派。
 この発想を押し進めれば、邪馬台国ノワールが書けたんじゃないかと思いますが、なにしろタイトルが孔明vs卑弥呼なので、話をそこへ持っていくためのツナギになっちゃってるのがもったいない。いろんな意味で惜しい小説。



【10月2日(水)】


 TBSでチャンピオンズリーグC組、ゲンク0-1ローマ。ゲンクは早々とGKがレッドカード退場、ローマの楽勝かと思われたが後半30分をまわっても0-0。このまま引き分けるか、ローマが負けたりしたらたいへんな事態になるなあと思ったが、最後の最後で底力を発揮。しかしローマはトッティがもどっても前途多難。まあバイエルンよりはましですが、ブンデスリーガのチームはともかく、セリエAのチームは今シーズンぐらいがんばらないとね。

 アジア大会の日本5-2バーレーンの試合は後半だけ見た。4-0から1点返されただけであんなにガタガタになるチームも珍しい。もうちょっと自分に自信を持てよ。そこそこうまいんだからさ。



【10月3日(木)】


 ワーナーマイカル妙典で『サイン』『リターナー』。侵略SF二本立て(笑)。

 M・ナイト・シャマランの『サイン』は、大バカ映画を大まじめに見せるという『アンブレイカブル』な方法論をそのまま踏襲。獣医がらみのネタの振り方はじつに好み。兄弟でテレビを観るシーンもいい。口を極めて罵ってる人もいますが、怒るような映画じゃないと思う。まあ前作とパターンがおなじなので、インパクトはあんまりないけどさ。ただし喘息描写はいまいち。

 山崎貴の『リターナー』のほうは『ターミネーター』+『ID4』+『E.T.』+『マトリックス』。時間理論の整合性が『ターミネーター』以下っていうのはどうかと思いますが、鈴木杏なので許す。許せないのは、せっかくお約束の変身シーンがあるのに、どうしてよりによってあんな冴えない服を選ぶのかってこと。会社訪問用に地味めにしたってことまでは認めても、あのブティックにあんな服売ってないでしょ、どう見ても。あと、未来社会で英語をしゃべらせるのは躓きの石。ダイアローグもセリフまわしもヘタすぎる。まあ、金城武の日本語に合わせたレベルと言えばそうなんだけど。だいたいあんなに説明する必要はないでしょう。みんな『ターミネーター』観てるんだからさ。でも嫌いじゃないよ。康珍化が脚本書いた少年隊主演の『19ナインティーン』をちょっと思い出したり。そう言えば鈴木杏って小沢なつきのラインかも。

 各所で評判のいい新城カズマ『星の、バベル』上下(ハルキ文庫)読了→amazonbk1。アイデア的には文系日本SFの王道というか、小松左京〜山田正紀ラインの正嫡。ミクロネシアの架空独立国を舞台に、現代ポリティカルサスペンス風の導入から本格SFに持っていく構成もいい。しかし、そういう冒険小説的な語り口を採用したために、かえってストーリーテリングのまずさが目立つ結果になっている印象は否めない。ネタは抜群にすばらしいのに、いまいちそれが生きてなくて非常にもったいない感じ。このアイデアが百パーセント生かせていれば、今年の日本SFベストワンになったかもしれないのに……。これだけの材料をちゃんと書くならいまの倍ぐらいの枚数が必要で、ヌーヴェルSFの枠にはまったくおさまらない小説になってしまうので、これはこれで仕方がないかもしれないが。いずれにしても、アイデアの魅力と密度ではJコレクションに遜色ないどころかたぶん凌駕しているので、SF読者は必読。


top | link | board | articles | other days