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amazon.co.jpでコニー・ウィリス『航路』(大森望訳/ソニー・マガジンズ/上下各1800円)の予約受付中。
【発売日またまた変更のお知らせ】『航路』は10月8日発売になりました。

コニー・ウィリス日本語サイト:To Say Nothing of the GOD(神は勘定に入れません)開設しました




【9月24日(火)】


 東映試写室で金子修介監督『恋に唄えば』。見る前から、もしかして『山田村ワルツ』ふたたびかもと覚悟はしてたんだけど、想像をはるかに上回る凄まじさでした。こんな脚本、書こうと思っても書けないよな。竹中直人がアラビアン衣裳で壺の中から飛び出して願いをかなてあげましょうって話をやるんなら、いっそハクション大魔王の映画化にすればよかったのに。しかしなぜオーストラリア。いくらなんでもあの病院はないと思うぞ。
「オマエ、前から花が好きだったもんな」ってところでは、思わず「グーで殴れ! 殴ってやれ!」と叫びそうになったり。優香は悪くないです。ミュージカルナンバーは予算なさすぎ。

 大手町クラブ関東でファンタジーノベル大賞授賞式。主催者代表挨拶がしつこく西崎さんの年齢に触れて、「四捨五入すると五十歳」「もうすぐ五十の声を聞くお年の」と連発するのがやたらにおかしい。一方、鈴木光司は「この場で若い作家の初々しいエネルギーに触れてわたしも初心を――」とか言ってるんだけど、西崎さんは鈴木光司より年上です。いや、優秀賞の小山歩さんは初々しかったけど。西崎さんはまったくふだんどおり。客席にいた倉阪鬼一郎のほうが緊張してました。
 二次会は、いつもオーキッドルームから近場に変更になり、パレスホテル地下のバー。東雅夫、藤原義也、倉阪鬼一郎などなどとだらだらマイナーな小説の話をしてるとまるで恐怖の会みたいですが、横に佐藤誠一郎@新潮社文庫部長がすわってて、ときどき固有名詞をメモしたりしてるのがおかしい。オレと同期入社のニコライ江木@小説新潮編集長は酔っ払ってご機嫌。なのはいいとしても、若い女性作家にからまないように。まあ害はないんだけどさ。

 amazon.co.jpの(自著の)売上ランキングは倉阪さんもマメにチェックしてるらしく、ひとしきり「ランキング決定方法の謎」の話になる。数時間でものすごく順位が変わるのはどういうこと? みたいな。ちょっと検索してみたけど、あれがどのぐらいのスパンのどういう売上ランキングなのかを解説しているページは発見できず。知ってる人がいたら教えてください。

 ところで、今年の国産本格ミステリのベストワンは、いまのところ三津田信三『作者不詳 ミステリ作家の読む本』(講談社ノベルス)だと強く信じてるんですが、この小説を読み、さらに絶賛している知り合いは倉阪鬼一郎ぐらい。倉阪鬼一郎は『作者不詳』を誉めてる場合じゃないだろ! と思いきり突っ込みましたが、東さんは「まあ、悪くはないけど……」みたいな評価だし、そもそも読んでない人が多すぎる。これはもっと評判になっていいんじゃないかと思う。たしかにお約束の結末は弱いけどさ。小説すばるに書いた紹介の一部を引用すると、
 作中人物の三津田信三は作中作(同人誌『迷宮草子』収録作)を読むことで怪異にとり憑かれるのだが、その怪異から逃れるためには作中作の謎を解くしかない(しかもタイムリミットつき)。
 未解決事件の顛末を記した体裁の作中作は、それぞれ犯人当てミステリの問題編のような形式をとり、そこに出てくるモチーフが怪異として実体化(?)する。霧に包まれた館で起きた怪事件を描く「霧の館」を読んだ三津田は忍び寄る霧につきまとわれ、奇怪な赤ん坊消失事件の顛末を語る「子取鬼縁起」のあとではどこからともなく赤ん坊の泣き声が聞こえてくる……という具合。
 作中作の謎は、読後のディスカッションを経て、あくまでも論理的に解明される。探り当てた真相が正解だったかどうかは怪異が消えるかどうかで判定される仕組み――と、構造だけ説明するといかにもゲーム的だが、前作で証明した本格ホラー文体のおかげで、主人公に忍び寄る怪異はおそろしくリアル。「はやく謎を解かなければ殺されてしまう探偵役」というユニークな趣向が奏功して、切迫感に満ちた謎解きのスリルが味わえる。
 みたいな話です。しかし倉阪鬼一郎と大森望に誉められても迷惑なだけかもな。

 二次会の後半は新潮社テーブルに移って、新潮文庫時代の同僚のF島さんと昔話。あの人はいま――が中心ですっかり同窓会状態ですが、今は出版部と文庫編集部を合わせて二十代の編集者がひとりしかいないと聞いて愕然。



【9月25日(水)】



 SFマガジン11月号は特集が《SFミステリ再考》。ソウヤー『イリーガル・エイリアン』合わせらしいが、どうせなら日本作家の作品を二、三本集めればよかったのに。
 千街晶之の概論は、どこまでを「SF」の範疇に含めているのかよくわからない。ま、この種の原稿で定義論から入ると泥沼だし、「ミステリ」の範囲も曖昧だからこれでいいのかもしれませんが。むしろミステリ畑で評価されているSFミステリ限定にしたほうがよかった気も。ジャンルSFに対して、「作例」というミステリ用語(というわけでもないが、SF書評ではなぜかめったに使われない)が連発されるのは妙に新鮮。しかし『スカイ・クロラ』って未来ものか?
 ブックガイドでは『ミステリ・オペラ』や『金のゆりかご』が入ってるのが謎。逆に、この並びだったら、作品評価はともかく、釣巻礼公作品は入れるべきでしょう。
 ま、帰属ジャンルを明らかにすることがネタバレになるような作品も多いから、選択がむずかしいという事情はある。最近だと『天使の囀り』とか『15秒』とか。その意味で、笹川吉晴ホラー時評の伊島りすと『飛行少女』書評は、ネタバレ度が高すぎると思うんだけど、ジャンル別の書評欄の場合、ああいうふうに書かざるを得ない理由もわかるからなあ。いや、それでもやっぱりオレ尺度ではこれは書きすぎでしょう。
 もっとも『非行少女』の場合、テーマとか舞台とかが『航路』と激しくかぶってるので、あんまり客観的に読めてないかも。地図までつくるし。

 WOWOWでレバークーゼン1-2マンチェスター・ユナイテッド。BSデジタルの放送は見られません。

 某所で鮎川哲也氏の訃報に接する。慎んで冥福をお祈りします。



【9月26日(木)】



 日曜日にこのミス大賞の選考会なので、候補作をぼちぼち熟読中。選考経過がこれだけ詳しくオープンになってる賞も珍しいので、作家志望の人は一次選考、二次選考のコメントをじっくり読むと吉。
 ところで茶木さんの選評中、
 ただこの二作には、大きなマイナス要因がある。一度、もしくは二度、他の新人賞に応募して落選した作品であるという点だ。新人賞の予選委員に兼任が少なくないのは、こうしたチェック機能を働かせるためでもある。
 無論、これが選に洩れた理由のすべてではない。一度落ちた作品を改稿のうえ他の賞に応募することは、厳密な意味でのルール違反には当たらないからだ。が、こうした作品は、選考の過程で明らかなハンデキャップを抱えることになる。大賞レベルに達した作品でもない限り、それが分かった時点で、まずもって最終候補には残れないだろう。これは他の賞でも同じである。改稿を繰り返して同じ作品を応募する作者は、将来性に乏しいと判断されるからだ。作家志望者は厳に、戒めるべき行為と銘記されたい。
という件りは、鈴木輝一郎『何がなんでも作家になりたい!』(河出書房新社・1300円)の教え(サイクリック投稿法)と真っ向から対立するようですが、よその一次で落選した作品がべつの賞を射止める例も往々にしてあるので、大森個人は、「作品に自信があるならおなじものを何回も何回もいろんな賞に応募したってかまわない」という考え。版元の編集者でも過去の応募歴を気にする人としない人がいて、それについても運不運かな。このレベルの作品なら、こっちじゃなくてあっちの賞に送れば大賞が獲れそうなのにと思うこともしょっちゅうだから、あきらめが早すぎるのはもったいない。その一方、あきらめの悪さと作品のレベルは比例しないので、どう見てもダメな作品が何度も何度もくりかえしあちこちに応募されていることもしばしばだし、よそでは最終に残った作品なのに、ちょっと書き直してべつの賞に送ったら一次選考で落とされた――なんてケースも当然ありますが。

 連載が完結した岡本家記録「Infinite Summer 夏をめぐるSFの物語」の最後、Daicon 5編をようやく読む。16年も前のSF大会のデータがよくもまあこんなにきっちり残ってたもんやなあと思いながら見てると、25歳当時の大森の写真を発見して爆笑。人間の記憶というのはあてにならないもので、オレは初日から短パンにサンダルで行ってたと思ったのに。二日目が暑かったのかな。
 しかしこの中ホールの司会業務は、DAICONの会場について受付をしてたら岡本さんがやってきて、「キミには中ホールの司会をやってもらいますから」とその場で言われて問答無用で中ホールに拉致されたのである。スタッフでもなんでもなかったのに。おかげでずっと中ホールにいるハメになったから、DAICON5のほかの企画のことは全然知らない。このレポート見るとずいぶん楽しそうな大会だったみたいですが。
 ゲストへの依頼状から大会収支、事務局開設のトラブルまで詳細に記されているので、これからSF大会やる人は必読。Site mapから読んだほうが全体の構成はわかりやすいかも。

翻訳SFファン度調査 は三村美衣に抜かれて3位転落。
 オレ、《パーン》は全滅だし、《エンジェルズ・ラック》とかも読んでないしなあとか電話でしゃべってたら、三村美衣いわく、
「そんなはずない。アボ氏、解説書いてたよ」
「解説? 書いてないよ。著者名もよく覚えてないくらいなのに」
「ぜったい書いてた」
「なんかほかのと間違えてるんじゃないの」
「そうかなあ……ちょっと待って……何番だっけ」
 と三村美衣が本をひっぱりだしたところ、大森望は『やけっぱち大作戦』の解説を書いていたらしい。いったいいつの間に(笑)。そのうち自分で訳した本も忘れるようになったり。



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