Powered by bk1(Online Bookstore) →詳細検索
Powered by amazon.co.jp ↑CD、DVDその他全商品を検索対象に含めました。


【9月12日(木)】


 届いた《本の雑誌》をぺらぺらめくって、鏡明の連載に驚愕する。ハルペリン『誰も死なない世界』(角川文庫)に対する評価はまったく同感なんですが、コラムの末尾にいわく、
 スティーヴンスンは、けっこう期待して読みはじめたのだが、暗号という素材が、素材のままで提出されているようで、結局のところが、財宝のありかを知るために暗号を解く、それじゃあ、暗号小説の元祖、ポーの「黄金虫」のままじゃないか。しかも、「クリプトノミコン」では、財宝を隠した側の当事者が生きているのだから、暗号を解くという行為の意味が半減する。まあね、現在の暗号を解くという行為そのものが、知的遊びではなく、物理的な作業ということのようだから、知的な快感を期待する方がまちがっているのだろう。
思わず目が点になって三回読み返したぐらい。どうしたらここまで徹底的に読み間違えられるのか。鏡明は『クリプトノミコン』がまったくわかっていない。こんなの冒険小説じゃないよと1巻目の途中で投げ出した北上次郎とほぼ同じというか、さらに罪が深い
 そもそも『クリプトノミコン』は知力をつくして暗号を解く小説ではまったくないし、「財宝のありかを知るために暗号を解く」ような昔風の冒険小説はコケにされている。さらに「暗号を解くという行為」を、実利のための「物理的な作業」としてではなく、「知的遊び」として(あるいは一種のアートとして)見る視点が基本でしょう。
 政府による管理vs個人の自由の二項対立というか、ハッカー倫理に対するシンパシーが小説の根っこにあって、、暗号はそれに力を与える(power to the people的な)道具であると同時に、戦時中の話と現代をつなぐ役割も果たしている(暗号解読を軸に、グローバルなハッカー・コミュニティ的な秘密結社が第二次大戦中に出現していた――という設定がそのまま現代に重なってくる)。
 しかも最後は、正義のハッカーが世界を変える(世の中をよりよくする)みたいな脳天気なビジョンまでぬけぬけと出てきちゃって、だから「『クリプトノミコン』は冒険小説 (あるいはヒーロー小説)である」というのが大森の結論。
 後藤伝吾についても、彼は最初から明らかに、日本軍におけるハッカー的な人物として描かれていて(土木工事ハッカーなので、極秘作戦の裏をかいてソーシャル・エンジニアリングをやってのける)、それを「ステレオタイプの日本人の軍人」としてヒロ・ヤマツォと並べるのは違うでしょう。しかしすでに細かいところを忘れているので具体的な例を挙げていちいち反論できないのが弱い>オレ。



【9月13日(金)】



 Air H"端末(RH2000)の調子が悪いので、128kbpsパケット通信対応のコンパクトフラッシュ型端末に機種変更。本多エレクトロンのAH-H401Cってやつ。
 128kサービスの使用料は、従来のつなぎ放題コース月額基本料4,930円(1年契約時)に、月額3,500円の『オプション 128』がプラス。ちょっと高い気が。しかし80k〜120kbpsぐらいは出てるみたいなので、いままでの(事実上)20k固定にくらべれば飛躍的な進歩。

 ……とか言ってるうちにすでにブロードバンドの主流はFTTHに移行? でも光ファイバの工事はけっこうたいへんみたいだしなあ。申し込んでもどうせかなり待たされそうだから、いいかげん東京めたりっくに見切りをつけてBフレッツのニューファミリータイプとかに移行すべきか。うーむ。

『航路』の製品版は結局2段組×上下巻に変更。パイロット版が一巻本でできるならこっちも一巻本でやればいいのに――と思ったら、パイロット版の驚異的に薄い紙はコストが高くてたいへんらしい。



【9月14日(土)】



 本の雑誌編集部編『日本読書株式会社』の続篇、『注文の多い活字相談 新 日本読書株式会社』が9月25日に刊行予定。メールで届いた案内を転載すると、
9月の本の雑誌社の書籍新刊は、WEB本の雑誌人気コーナー「読書相談室」単行本シリーズ第2弾がいよいよ刊行になります。好きな作家/好きな本があるんだけど、次は何を読んだらいいかな、という相談から、自分を励ますために読む本は、はたまたなんでもいいから笑える本が読みたいというご希望まで、おなじみ6人の相談員が知恵をしぼってご推薦。これを読むと、本好きな人でもちょっとフォローしていなかったジャンルの本など、読んでみたくなる本の5冊や10冊や20冊、必ず読みたくなってしまうはず!
●相談員と主な担当ジャンル:東えりか(ノンフィクション)池上冬樹(ハードボイルド、純文学)大森望(SF、ファンタジー)西上心太(ミステリー、時代小説)吉田伸子(恋愛小説)北上次郎(ミステリー、冒険小説)
だそうです。お値段は税別1,500円。去年はけっこうさぼってたので大森担当分は少なめ。反省したので最近はマメに回答してますが、ほとんど検索代行業という雰囲気も。大元になってる読書相談室のほうもご贔屓に。


 春都さんのリンク集「あのころキミは若かった〜いつからやってるの?〜」を見て愕然とする。うちがいちばん古いの? そ、そんなばかな。なんかすごく年寄りになった気がするんですけど。
 まあこれはミステリ系個人サイトが中心だからそうなるだけで、たとえば大森がサイトを立ち上げるときお手本にした金子誠氏のページは、サーバを移転していまも存続中。
 初期の日記リンクスのリストを見ればもっといろいろあるだろう――と思ってさがしてみたが、95年前半とかのは見つかりませんでした。MacのHD検索すればどこかに入ってるかなあ。奥脇さんのこのリンク集はかなり古そうだが、これでも96年ぐらい?
 もしかして、1994年から継続しているウェブ日記はもはや存在しない? 考えたら当時は学生が主力だったからなあ。
 と思ったら、奥脇さんのところの日記リンクス簡素リストが津田優氏の元祖《日記リンクス》の簡易版ミラーらしい。たぶん《日記リンクス》登場順。狂乱西葛西日記は14番め。狂乱西葛西日記のサーバがwww.sdw.comになってるので、96年の半ばぐらいでしょうか。つらつらリストを見ているとかなり懐しい。日記リンクス上では、学生以外のウェブ日記はオレが最初だったのか? ちょこちょこチェックしてみたところ、日記リンクスの最初の13日記のうち、いまも日記の更新が続いているサイトはほぼない模様(urlを移転してサイトが存続してるところはいくつかある)。現役でいちばん古いのはオレ? いや、あんまり現役じゃないけど(笑)。

 ふと気がつくと日記リンクス界の女王・河合あみこ@キノトロープの不連続日記事件もいまは会社のサーバ移転とかで一時的に読めなくなってることが判明。でもぐぐるのキャッシュには残ってるので、1995年の9月あたりを読むと
1995年9月2日深夜 河合あみこ「#にっき」チャンネルを開設とかためになる事実がわかります。THE SECOND SUMMER of WEB のレポートとか。大森史観では、日記ブームの頂点はこのへんの時期(笑)。この驚くべき奇跡の時代に立ち会えなかった人は思いきり悔しがるがよい。ほほほ。ってやっぱり感染力が高い模様。

 さらにいろいろぐぐるしてるとパーわセーブの日記で似たような調査が行われているのを発見。ポインタだけあっても、5年経つと参照先がなくなっている可能性が高いことを学習したので関連箇所をコピペすると、
・ふと、日記サイトで現役でなおかつ最古のもの、すなわち、最長のものってどこかと思う。【中略】
・で、調べてみましたン。とはいっても、ReadMe!のエントリー登録の一番古いのをチェックしただけなんですけど。
・「わかば日記 [赤尾晃一] 」が最古なんだなあと。で、日記を見ると、最古の日付が、1996年3月20日。で、そこにあるリンク「打倒! 大森望(^.^;」の 「大森望のSFページ」。と、ここの最古が1995年4/6。ま、判明したのがこの辺。これより古いのは調べきれなかった。8年なのね。すげえや。

 というわけでreadme参戦登録者一覧のいちばん古いところを見ると、大森望SFページのエントリは古いほうから4番めなのだった(最古サイトの登録日時から一日遅れの【1996-07-08】 )。しかもその前の3サイトはどれもリンク切れなのだった(赤尾晃一氏の「わかば日記」はいまも稼動してるのになぜかここからは飛びません)。
 ReadMe!に参加したときは、すでに100ぐらい参加サイトがあった気がするのは記憶違い?
 Internet Archiveは、1995年〜96年あたりの状況を調べるにはほとんど役に立たないので、すでにウェブ考古学が必要かも。あちこちの家にフィールドワークに赴いてハードディスクから古いキャッシュファイルを発掘し、旧来の常識を覆すとか。あなたの家にもバージェス頁岩が眠っているかもしれません。



【9月15日(日)〜16日(月)】



 スカパーでエールディビジのフェイエノールト3-1トゥエンテ。小野は2ゴール1アシストの完璧な出来。とくに2点めのGK股抜きゴールは技ありの一発。新加入の宋鐘国もすばらしく、最高に近いプレーだったけど、小野の強運のほうがさらに上でした。

 一方、イングランド・プレミアシップのフラム3-0サンダランド戦ではINAMOTOが1得点2アシストの大活躍で、こちらも完璧。しかし、それはそれとして、ファンデルサールが守るゴールにトーレ・アンドレ・フローが襲いかかるシーンとか、けっこう感慨深い。ベンチのクィンがほとんどアシスタントコーチみたいな雰囲気で笑える。それでも出場するし。サンダランドにはアメリカ代表のレイナもいるんですね。フラムの次節はホームでチェルシー戦。これは楽しみ。

 セリエAもようやく開幕。ペルージャ2-0レジーナは順当すぎる結果。レジーナはこの調子だとかなり苦労しそう。ボールを持ちすぎる選手ばかりでパスが全然まわらない。俊輔のプレースキックに期待がかかるのも当然か。コーナーキック以外では点が入りそうな気配がほとんどなかったもんなあ。ペルージャは例によってメンバーが激しく入れ替わり、ぱっと見てわかる選手はもはやテデスコ、ゼ・マリア、ミラネーゼぐらい。それでもチームとしてはけっこうまとまってる。俊輔もペルージャに入ってたほうがよかったんじゃ……。

 前途多難そうなのはウディネーゼと1-1で引き分けたパルマも同じ。中田の左サイドはどう見てもやりにくそう。左からクロスを上げられない――というか、むしろFWのムトゥのほうが左に流れていいクロスを上げてます。必然的に中田は中央に寄ってくるんだけど、パスが来ない。攻撃はムトゥとアドリアーノの2トップ頼み。昨シーズンより守備はよくなった気がするが、これではまだまだしんどい試合が続きそう。

本格ミステリファン度調査。未読は(読んだかどうか覚えてないもの含む)17冊。



【9月17日(火)】



 金曜日にいきなり電話がかかってきて頼まれた《編集会議》の恩田陸インタビュー@渋谷シネカノン本社(『木曜組曲』映画化合わせなので)。花田編集長の仕事だから急なのは仕方ないが、約束の4時に着いてみると、シネカノンの担当者が、「すみません、花田さんが突然、恩田さんの撮影をブック・ファーストでやりたいと言い出して、恩田さんといっしょにいまブック・ファーストに行ってるんですよ。しばらくお待ちいただけますか」
 というわけでそれから待つこと一時間。どの雑誌に行っても花田編集長の仕事ぶりは変わらないのだった。今日は乱歩賞だから6時前にはインタビュー終了の予定だったのに。

 ひさしぶりに会う恩田さんは元気そう。Jコレクションの刊行予定を思いきりすっ飛ばした『ロミオとロミオは永遠に』の改稿作業もようやく今週には終わるらしい。
 しかし恩田陸ファンページの作品リストを見ると、連載終了して単行本化待ちが4本、連載継続中が7本(笑)。体を壊すのも無理はあるまい。

 1時間半遅れで乱歩賞会場の帝国ホテルに到着。朝からなにも食べてないのでとりあえず食事。何人か知り合いに挨拶したらもうお開きでした。山田正紀氏がめずらしくSFについて熱く語りたいモードみたいだったので、堺三保と三人でホテルのティーラウンジ。
 山田さんもニール・スティーヴンスンはあまり評価しないらしい。真面目じゃないからダメだとか。ストーリーテリングの力がないくせにブロックバスターを狙ってるのがいかんとか。鏡さんもスティーヴンスンはダメらしいし、それは世代的な問題かも――と言ったら、いや、世代の問題じゃない(大森訳「オレを年寄り扱いするな」)と主張。川又千秋氏は前に『ΑΩ』の受けとめ方には世代間格差があるんじゃないかと指摘してましたが、スティーヴンスンもそうじゃないかなあ。と思ったら堺三保はスティーヴンスン否定派なのだった。あとは主にJコレクション話。

 ふたりと別れて、17階レイボーラウンジのかまいたち組(じゃないけど便宜上そう呼ぶ)10人あまりとと合流。我孫子さんは最近、碁にハマってるらしい。竹本さんははるばる桃谷(大阪)までイカ焼きを食べにいったとか。
 途中からこんこんと眠っていた我孫子武丸は店が閉まる直前にむくっと起き出し、「ほならカラオケに行こうか。このへんHyperJOYの店はないかなあ」。
 みんな新宿に泊まるんなら新宿パセラに行ったらどうですかと提案し、大森は終電帰宅。

 仕事の本を読むかと思ったら、スカパーでリーズ×マンチェスター・ユナイテッドの録画を流してたのでつい見てしまう。マンUは悲惨。ベッカム様は大ブーイングを浴びてます。後半、中央に入っても仕事ができず。フリーキックも宇宙開発的。チャンピオンズリーグ予選では調子よさそうだったのになあ。

 というわけで、午前3時半からはWOWOWでチャンピオンズリーグのグループリーグ開幕戦、C組のローマ0-3レアル・マドリード。久々に柄沢晃弘アナの実況で観る試合。
 レジーナやパルマのセリエA開幕戦観てて、サッカーってじつはつまんないんじゃないのかと思ってたんですが、それは単なる気の迷いでした。めちゃくちゃ面白いじゃん! のっけからがんがん攻め合う、レベルの高い好ゲーム。ホームのローマの気迫はものすごく、おいおいだいじょうぶかという勢いでボールを追い続ける。いきなり4-4-2のフォーメーションに変えてるんですが、急増とは思えない。トッティもバティもいなくても関係ないし、後半は頭からグァルディオラを投入。
 レアルのジダン、フィーゴもW杯とは見違えるような出来。まあ、W杯イヤーなのにゆっくり休めたからな。しかしここにロナウドが入ってグティが抜けるのか。それで強くなると言いきれないところがサッカーですが。
 試合のほうは、がんがん攻めてたローマがゴールを割れず、カウンターからレアルがあっさり先制した時点でほぼ勝負あり。さすがのローマも後半は足がとまり、レアルのパスまわしにやられ放題。まあこの組はレアル1位、ローマ2位通過で鉄板だろうけどな。



top | link | board | articles | other days