Powered by bk1(Online Bookstore) →詳細検索
Powered by amazon.co.jp ↑CD、DVDその他全商品を検索対象に含めました。


【お知らせ】コニー・ウィリス『航路』(ソニー・マガジンズ)の発売日は、新聞広告etc.の都合で10月10日になりました(上下巻/予価各1800円)。bk1、amazonでの予約はまだできません。いましばらくお待ちください。



【9月1日(日)〜2日(月)】


 『航路』が終わって、9月からはおなじコニー・ウィリスのタイムトラベルコメディ『To Say Nothing of the Dog』(丸谷才一訳の『ボートの三人男』副題を採用すれば『犬は勘定に入れません』)に着手――の予定なんだけど、『航路』宣伝キャンペーン用の各種依頼とか、カバーまわりの文章チェックとか、いろいろ細かい仕事が残ってて、まだ頭がヴィクトリア朝に切り替わりません。
 ちなみに『犬』は『ドゥームズデイ・ブック』の続篇というか姉妹篇。今度はだれも死なない話(笑)。犬も猫も死にません。

 なお、パイロット版がお手元に届いている方は、できれば製品版を待たずにそちらで読んでいただけると(そしてウェブ日記や口コミや各種媒体で宣伝していただけるとなお)吉。まだ細かい直しは入りますが、一応、再校まで行ったゲラを製本してるので、製品版と大幅な違いはないはず。原稿校了だった訳者あとがきはいろいろまちがいが残ってますが(×キャンベル新人賞→○キャンベル記念賞とか)。

 ソニマガのS木氏は、『航路』の版権をとって翻訳を依頼してきた張本人なんだけど、パイロット版でようやく読んだらしく、いきなり出張先の沖縄から携帯に電話してきて、
「いやあ、これは面白いです。ぼくがこれまでの人生に読んだ小説の中でも、こんなに感動させてくれたのはないくらいですよ!」
 おいおい。と思いながらもちょっとうれしかったり。しかしあとで担当編集者から聞いたら、このときS氏は第二部までしか読んでなかったらしい(笑)。おいおい。
 といいつつ、この本は全身全霊を傾けて売ろうと努力してるんですが、これで売れなかったらどうしよう。長いからなあ。とちょっと弱気。



【9月3日(火)】


 ダカーポのK田氏が西葛西に来訪。宗教特集に入れる「世界の宗教ミステリ・ブックガイド」の取材。大森がコメントしたのは『火蛾』とか『黒い仏』とか『神の子の密室』とかそういうの。ゾロアスター教ネタのミステリとか、ありそうでないもんだね。



【9月4日(水)】


 モンド21でやってる情報番組『モンド総研』の日本SF特集トーク収録のため、都立大学前のレンタルスペースへ炎天下を出かけてゆく。三階建ての豪邸の一階と二階がレンタルスペースになってて、収録は奥の和室の庭に面した縁側を使用。
「それは長い長い夢のような……いや、夢物語です」みたいなロケーション。
 しかし問題がひとつ。縁側なのでめちゃくちゃ暑い。一カ月後の夕方だったら最高だったのに。
 トークの相手は東浩紀氏。30分番組の2本撮りですが、VTR素材も入るのでトーク部分はどのぐらい使われるのか謎。個々の作品はほとんどできず、だいたい状況論でした。
 収録が終わったあと、『魔女でもステディ』と柴田昌弘について熱く語る東浩紀(笑)。『狼少女ラン』はぱらぱら見てたけど、当時の《花ゆめ》では浮いた連載で、だれが読んでるのか謎だったんですが、そうか少年・東浩紀が愛読していたのか。
 この番組の放送は11月だとか。秋の夜長に汗だくでSFの話をする人を見るのか。



【9月5日(木)〜6日(金)】


『犬』の翻訳速度がなかなか上がらない。というか頭がまだヴィクトリア朝モードに切り替わらない。ディケンズでも読むか。21世紀人の視点だから、ヴィクトリアンな文体じゃないんだけど、会話ぐらいは多少なりともそれっぽくしたい気が。



【9月7日(土)】


 西崎憲氏の第14回日本ファンタジーノベル大賞受賞を祝う会@赤坂ですぺら。
 受賞作の『ショート・ストーリーズ』は小説新潮に載った一部分しか読んでませんが、いきなりアンナ・カヴァンとか出てくるので思わずのけぞる――という反応は倉阪鬼一郎といっしょだったり(笑)。
 ちなみに優秀賞の小山歩『戒』のほうは一次が大森の担当だった作品。この年齢でこれだけ書けるのは驚異的で、優秀賞以上はまず確実。これを上回る作品はそうそう出ないんじゃ――と思っていたら、なんと西崎さんが大賞をかっさらっていったという。史上最年長受賞だそうですが(小山さんのほうは史上最年少)、中年の星と呼ぶしか。

 帰りは馬場に寄って、ユタ組とルノワールで合流。三村美衣は『航路』パイロット版を8時間で読んだらしい。いまのところこれが最短記録かも。北上次郎は10時間だそうです。しかし急いで読むと伏線に気づかない可能性大。ただしゆっくり読むのはむずかしいかもしれない。



【9月8日(日)】


 高知からうちの母親が来ているので、トキオ連れで近所の公園とか。

 河出書房のI藤氏からゲラで送ってもらったR・A・ラファティ『地球礁』(柳下鬼一郎訳)を読了。いいなあ、こんなにゆったりした組で、こんなに薄くて。
 翻訳は《すん》連載のときからそんなに変わってない気が。むかし読んだときは、単純にSF長編(宇宙人がやってきて地球人を殺す話)だと思ってたんだけど、いま読むと、むしろSFじゃない部分が強調されて見える。行動原理がよくわからない登場人物が人を殺そうとする話ってことでは、ノワールと言えなくもないし。いやもちろん、プーカ人に「心の闇」なんか存在しないんですが。ラファティ版「ポップ1280」?
 いまや文学的に新しいものに見えてしまう可能性さえ孕んでいる。それにしても、ふつうの小説だと思って手にとった人は、第一章で投げ出してしまう危険性大。べつに実験小説じゃないのでちゃんと筋はあります。なんじゃこりゃと思ったときは、とりあえず第二章から読むのが吉。
 カバーはインパクト強すぎ。ラファティの本だと気づかないかも(笑)。

 飛浩隆の第一長編『グラン・ヴァカンス』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)もゲラで読了。Jコレ既刊分の中ではベストに推したい作品だが、三部作の第一作ってことで、根本的な謎はほとんど未解決。冒頭、流れガラスが出てくるんですが、どうせなら錆びた自転車も出してほしかった。って、砂粒の数まで数えられる海岸には似合わないか。UOとかEQとかにハマってる人にぜひ読ませたい小説。これがイーガン以前だったら手放しで絶賛するところだが、現状では留保部分が残る。完結時にどう謎解きをするのか、刮目して待ちたい。



【9月9日(月)】


 13:00、東映試写室で『狂気の桜』。ヒキタクニオの原作は細かいところをあんまり覚えてないけど、映画は相当違います。ほとんど窪塚洋介プロモーション映画。「ナショナリストってちょっといいよね」みたいな。東映ヤクザ映画のコギャル対応バージョンとか。
 冒頭、東映マークの波ざっぱーんが巻きもどり、それがカレンダーの写真になったところに、トイレに篭もってる窪塚くんが△に東映のマークを落書きするギャグは秀逸。トリッキーなカメラは『ラブ&ポップ』風だったり、渋谷の古本屋が廃業する話で、窪塚くんが「ブック・オフ!?」と叫んだり、けっこう見所も多いんだけどなあ。香山リカいうところの「ぷちナショナリズム」に思いきり奉仕しそうな映画。右翼はダメでナショナリストはOKと言われましても……。
 しかし15:30の回の試写は三池崇史監督の『実録安藤昇侠道伝 烈火』。どうせなら二本立てで公開してほしいと思った。

 夕方は三省堂にまわって『最後の記憶』刊行記念綾辻行人サイン会。各社編集者をはじめとする関係者だけでも50人ぐらい来てたのでは。三省堂の一階で出版記念パーティやってるような雰囲気。知り合いに挨拶してるだけで一時間ぐらい経ってしまうような。

 歩くのに疲れると2階のピッコロに陣どる国樹由香・河内実加組に合流、さらに宇山夫妻も加わって四方山話。意外な事実が判明したりもしたんですが、それはそのうち。
 サイン会終了後は、三省堂の応接室経由ですずらん通りの中華料理屋。安藤プロの警咳にはじめて接しましたが、恐るべきパワーですね。麻雀は活力の源なのか。

『航路』パイロット版の反響がウェブ上でもぼちぼち。、中野善夫〈手に取って、読め!〉の9月9日とか、細井威男「たぶん読書日記」とか。



【9月10日(火)】


 銀座ガスホールで天願大介久々の監督作『AIKI』を観る。新人王めざして快進撃をつづけていたボクサー(加藤晴彦)がバイク事故で脊髄を損傷、車椅子で失意の日々を送ってるときに大東流合気柔術と出会い、立ち直ってゆく――という青春スポーツ映画。
 終わったあとロビーで会った天願監督は「芸風変わったでしょ?」とか言ってたけど、たしかにこれまでとはうってかわって、とことんサービスしまくった大娯楽作。大東流合気柔術っていうと、武田惣角を主人公にした今野敏『惣角流浪』で読んだ程度の知識しかないんですが、古流柔術の神秘の世界にはあまり踏み込まず、マンガ的なエピソードまでとりこんで、ひたすらエンターテインメントに徹している。『ウォーターボーイズ』『ピンポン』と来た邦画マイナースポーツものヒット路線に乗れば、けっこう当たるのでは。この中ではいちばん面白いと思うけどなあ。12月公開予定。



【9月11日(水)】


 FOX試写室で『マイノリティ・リポート』。冒頭15分ぐらいは完璧。トム・クルーズが逃げ出すあたりまでの展開もかなりいい。後半はお決まりのパターンなのでやや退屈するが、トム・クルーズ主演のハリウッド大作でスピルバーグの監督にしてはかなり健闘している部類でしょう。B級っぽいギャグを入れようとしてどうにも板につかないあたりも微笑ましい。こんなにえらくなる予定じゃなかったのに、みたいな。これで2時間以内におさまってればなあ。しかしそうか、スピルバーグも、『ブレードランナー』のあのパートが好きだったのね。
 脚本はそれなりに考えてあるんですが、粗も目立つ。プレコグの予知映像に街並が映ってれば、あの世界だったら一瞬で場所を特定できるだろうとか。それでも『トータル・リコール』よりは許せる気が。

 つづいてワーナーの試写室でEight Legged Freaksこと『スパイダーパニック!』。《映画秘宝》特別試写だそうで、どこからどう見ても《映画秘宝》以外の雑誌は特集しない作品。デヴリンが心を入れ替えてつくったドB級らしい。B級モンスターパニック映画のお約束だけで出来ている映画ですが(濡れ場がないのはやや難)、『トレマーズ』好きの人は必見。しかしどうせなら最後は全長100メートルのツチグモに軍隊を蹴散らしてほしかった。



top | link | board | articles | other days