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【お知らせ】コニー・ウィリス『Passage』の邦題が決まりました。『航路』のタイトルでソニー・マガジンズより10月4日発売予定(上下巻・予価各1800円)。bk1、amazonでの予約はまだできません。しばらくお待ちください。



【7月15日(月)】


 SF大会疲れでぼんやりしつつPassage再開。あと2週間で170ページ終わるのか?



【7月16日(火)】



 東映試写室と松竹試写室をはしごして、『桃源境の人々』と『ドニー・ダーコ』。
 青木雄二的コテコテ関西弁の世界に哀川翔を放り込むのは違和感ありすぎ。いっそ吹き替えでやればよかったのに。『ドニー・ダーコ』は電波系の男の子が主人公。ドリュー・バリモアが英語の先生でグレアム・グリーンとか講義するんですが、ふつう保健の先生だろう。せめてカウンセラー。と思ったらカウンセラーはなんとキャサリン・ロス。うわあ。まあしかし、なかなか子供らしい映画で、電波の命令に従って学校を水没させちゃうところはけっこう好き。



【7月17日(水)】



 ヤマハホールでスペインとフランス合作の『ウェルカム・ヘヴン』。天国のエージェントと地獄のエージェントがひとりの男の魂を奪い合う話ですが、天国は50年代のパリでモノクロにフランス語使用。地上はスペイン語で、地獄は英語。冒頭はペネロペ・クルスとヴィクトリア・アブリルがふたりでカチコミにいくみたいなタランティーノばりのシーンなんで(その途中でえんえん聖書談議をしている)、三池崇史にこの設定で撮ってほしいと強烈に思いました。ハングルと日本語と広東語で、地上の舞台は歌舞伎町、みたいな。
 悪くないんだけど、中盤はやや退屈。もっと面白くできる話なのに。惜しい。しかし冒頭と結末は文句なし。正月映画だそうです。



【7月18日(木)】



 SFJapan鶴巻×上遠野対談の原稿まとめと最強合作座談会の直し。最強合作座談会はほとんどブレインストーミングのような内容だったんで、原稿はどうかと思ったんだけど意外と笑えます。その場でスムースに話が流れるより、ない知恵を絞ってネタを出し合ったほうが結果的によくなるのかも。
 SFMの林譲治インタビューは結局ぜんぶS澤編集長におまかせになっちゃったので(というか、物理的にオレが見る時間がほとんどなくなったので)非常にらくちんでした。そろそろ楽をさせてもらわないと体が持ちません。



【7月19日(金)】



 ミステリチャンネルの収録のあと、アルカディア市ヶ谷で「池上冬樹さん・吉田伸子さんの出版を祝う会」。二次会は例によって池林房。修羅場なので泣く泣く終電帰宅。



【7月20日(土)〜25日(木)】



 Passageラストスパート中。



【7月26日(金)】



 第三回小松左京賞の最終候補作決定会議。全員Aをつけた一本が一瞬で決まり、もう一本もすぐ決まり、あと一本がちょっともめる。4本とか5本とか残しても無駄でしょうということで、今回の最終候補は3本です。なんか、資料をよく調べてみっちり書いたガチガチのハードSF系が非常に多いんだけど、採用するプロットを致命的にまちがっているケースが目立つ。せっかくディテールが面白いのに話がこれじゃあ……というパターン。お約束のプロットを借りてきて予定調和で落とすぐらいなら、落とさないほうがいいかも。

 選考会終了後は神保町の咸亨酒店で打ち上げ。値段のわりにかなり優秀。夜中までやってて便利そう。
 食いまくってる最中に、小説すばるの時間SF特集用に愛宕山で対談しているらしい恩田陸・山田正紀両氏から、どうしても思い出せないタイトル問い合わせの電話。『ワンダー3』のころのマンガか小説の時間もので、『ワンダー3』みたいなカタルシスがあった話は? といわれてもデータが少なすぎてわかりません。向こうの電波状況が非常に悪くて通話がすぐ途切れるし。お役に立てず失礼しました。あ、この時間SF特集は諸般の事情で10月売りにのびた模様。

 この日はトヨザキ社長主催の宴会もあったんですが、神保町で食い過ぎたため新宿までたどりつけず。



【7月27日(土)〜30日(水)】



 Passageが佳境なのでひっぱれるだけひっぱったけど、とうとうのっぴきならない感じになってきたので一時中断して小説すばる(書評のお題は幻冬舎の安東能明『15秒』。途中、山田正紀みたいな世界に入りかけるので、SF読者にもおすすめ)とアニメージュとメンズ・エクストラ(『ドニー・ダーコ』)の原稿。
 うーん、あとちょっとなのに。



【7月31日(水)】



 というわけできれいな体にはなれないまま温泉旅行。新幹線で宇都宮まで出て、さいとう妹一家に迎えに来てもらって、来年の日本SF大会が開かれる那須塩原温泉。そのいちばん奥の方にある明賀屋っていう日本旅館なんですが、えんえん木の階段を降りていくかわっぷちの露天風呂はなかなか。
 しかし仕事が終わらないので、風呂から出てはキーボードを叩き、飽きると風呂に入るローテーション。まあ、画面上の校正は東京でやっててもすぐ飽きちゃうのでちょうどよかったかも。しかしやはり今月中には終わらなかったか。



【8月1日(木)】



 塩原温泉を朝出て、ドピーカンの千本松牧場で子供サービス。JR宇都宮駅まで送ってもらって新幹線で東京にもどり、夕方から江東区花火大会。例年にくらべて今年は人手が多く、花火のほうも派手だったような。総勢二十人ぐらいで中州(荒川と中川の中間部分)に陣取り、のんびり見物。川っぷちは風が涼しくて快適。最初のうち思いきり怯えていたトキオ社長もだんだん調子が出てきて、初花火を満喫した模様。
 花火後は《大将》の2階で焼肉宴会。飲み過ぎてダウンする若者(ってもうそんなに若くないか)も出現する。途中、すさまじい雷雨が襲来、花火のつづきみたいな稲妻が炸裂する。



【8月2日(金)〜5日(月)】



 『Passage』ついに訳了。トータル2060枚、1,475,433バイトでした。これからすぐゲラ直しがはじまるかと思うと気が重い……。

 6日の綾辻インタビューに備えて綾辻作品を再読。さすがにぜんぶは読めなかったな。



【8月6日(火)】



 小松左京御大の招集を受け、一口坂のイオで小松左京賞受賞作検討会議。小松さんの評価も予選委員の評価とほぼ一致しているので、本題は一瞬で決まる。今回はもうこれしかないでしょう。

 感想戦(?)が続く中、タクシーで飯田橋の角川本社。『まるまる綾辻行人』――じゃないけど、そういう感じのアヤツジ本用に、綾辻行人インタビュー。全単行本について一冊ずつ話を聞いていく方式で、予想されたこととはいいつつ四時間がかり。そんなに脱線もしなかったんだけどなあ。しかし作品について突っ込んだ部分はほとんどネタバレなので使えない話が中心かも。どうするんだろう。伏せ字だらけになったり。どうせなら袋とじにすればいいのに。

 終了後は角川の編集者を交えて飯田橋で寿司。それからどうしたかは秘密らしい(笑)。




【8月7日(水)】



 渋谷ロッキン・オン編集部で、《SIHGT》連載の書評対談with北上次郎。今回、北上さんの推薦は、池永陽『コンビニ・ララバイ』(集英社)、東野圭吾『トキオ』(講談社)、平安寿子『グッドラックららばい』(講談社)。
『グッドラックららばい』はめちゃめちゃ面白い。お母ちゃんがいきなり家出して、旅回りの役者一座についていっちゃうんですが、その一座の話が抜群。キャラクター小説としても優秀で、これはおすすめ。

 一方、大森推薦は、浅暮三文『石の中の蜘蛛』(集英社)、ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』(晶文社ミステリ)、ニール・スティーヴンスン『クリプトノミコン』1〜4(ハヤカワ文庫SF)という布陣。北上さんは予想通り『クリプトノミコン』を読み切れなかったらしい。だれか冒険小説畑の人が絶賛しないと売れないだろうと思ったんですが、やっぱり無理かなあ。カーシュの短編集は「発見」だったらしい。オレとしては、『冷凍の美少女』と作品がだぶりすぎてるのがやや不満なんだけど、まあしょうがないかな。初訳の植物SF(「狂える花」とかなんとかいうやつ)が石黒達昌みたいな傑作です。カーシュはけっこうスタージョンに似てるんじゃないかと思った。

 編集部推薦は、アレックス・シアラー『青空のむこう』(金原瑞人訳/求竜堂)、キム・キャトラル/マーク・レヴィンソン『サティスファクション 究極の愛の芸術』(清水由貴子訳/アーティストハウス)、『ベラベラブック vol1』(ぴあ)。『サティスファクション』はこんなことでもなきゃぜったい中を見ない本なのでちょっとうれしい(笑)。クリトリスへの愛撫だけで10ページもあって愕然。でも8の字に舐めるのは不可能だと思います。訓練するのか?



【8月8日(木)】



『Passage』ゲラチェック中。



【8月9日(金)】



 ソニー・マガジンズで『Passage』のタイトル・カバー・宣伝その他の打ち合わせ。入稿のとき、『臨死航路』という仮題をつけてたんですが、ちょっと説明的で「いかにも」って感じがするのがいまいち。メディカルサスペンスっぽいウリで行くなら、ロビン・クック風に『NDE 臨死体験』と直球勝負とか。三振かホームラン狙いで女性読者も意識するなら、なんだか全然わかんなけど『航路』で――というような話をした結果、邦題は『航路』に決定。原題から言えば『通路』なんだけど、600ページ上下巻の小説が『通路』じゃねえ。
 グレッグ・ベア『ダーウィンの使者』のときと同様、パイロット版は二段組一巻本でつくるらしい。800ページ超は製本の限界かも。



【8月10日(土)〜8月18日(日)】



 世間はお盆休みだというようにどこへも行かず、ひたすら『航路』のゲラ読みと引用の出典調べ。この本のゲラは、校正者とべつに校閲者(原書と付き合わせて内容や訳文をチェックする編集者的な疑問出しをする係の人)も読んでるので、ケアレスミスとか抜けに細かくチェックが入っててわりと安心。さすがに長いので抜けが多く、同じ単語が二回出てくるところで間を飛ばすとか、まるで写植オペレーターの入力ミスみたい。

 ゲラだけ読んでると煮詰まって死にそうになるので、合間に新人賞の原稿読み。今月はひたすら読んでばっかりだな。

 ミステリチャンネルの『ブックナビ』用に、新刊読書。伊島りすと『飛行少女』(角川書店)とか、三津田信三『作者不詳』(講談社ノベルズ)とか、佐藤友哉『クリスマス・テロル』(講談社ノベルズ)とかいろいろ。

 さらに、『航路』訳者あとがきとか、サンプル版に添付する媒体資料用の(ネタバレあり)完全あらすじセットとか、著者略歴とか、インタビュー資料とかを作成。




【8月19日(月)】



 ミステリチャンネル本社で『ブックナビ』の収録。しつこく推薦した甲斐あって、トヨザキ社長と吉野さんは『クリプトノミコン』を読破。香山二三郎氏も途中まで読んでるらしい。トヨザキ社長はやはり絶賛。控え室(というか控えスペース)ではえんえん『クリプトノミコン』話でした。まあ、読み終わってからもいろいろと謎の多い小説なので。トヨザキ社長は冒頭の俳句が好きらしい(笑)。いや、たしかに戸梶圭太ファンにもぜひお薦めしたい小説ではある。

 終了後、他のメンバーは茶木さんの宴会に流れるらしいが、大森は『航路』初稿戻し作業のため、めちゃくちゃ重いゲラの山を抱えてソニー・マガジンズ。M山嬢とふたりで会議室にこもって、最後の校閲疑問の解決作業とかやってると、編集者時代が懐しく思い出されることである。




【8月20日(火)】



 試写室のお盆休みも終わり、『航路』のゲラも一段落したので各所で試写。『スパイ・キッズ2』、中田秀夫の新作『ラストシーン』、ようやく公開が決まった恩田陸原作・篠原哲雄監督の『木曜組曲』、おなじ篠原哲雄の最新作『命』、麻生幾原作の『宣戦布告』、タイ映画の『忘れな歌』、ジェニファー・ロペスの『エンジェル・アイズ』……などなど。

『宣戦布告』は見る予定じゃなかったんだけど(北野武の『Dolls』を見るはずだった)、『命』の次の試写準備に来ていた宣伝担当メイジャーのT氏がぜったい見てくださいと絶賛するので、暑い中、松竹まで移動するのはやめて同じ東映でこっちを見たんですが、たしかに意外とよくできてます。ふつうのハリウッド製現代戦争映画とは攻守が逆転してるのが新鮮。しかしバルカン砲は撃たないほうがよかったのでは。「次の次」を狙う官房長官役でいまだに佐藤慶が出てきたり、政界描写はどうしても古さを感じちゃうんだけど。しかしまさか、月末に降って湧いたような小泉訪朝が実現してしまうとは……。公開のタイミングを図ってここに持ってきたんだろうに、間が悪いというかなんというか。いや、公開のころにはどんぴしゃりの情勢になってるかもしれないけど。
『ラスト・シーン』は『女優霊』につづくバックステージもの。『女優霊』より好きかも。『エンジェル・アイズ』も意外な拾いものでした。

 ワーナー・マイカル市川妙典に『猫の恩返し』を見にいって、『ギブリーズ episode2』に愕然としたのでアニメージュの連載コラムのネタにしたところ、予想通り担当編集者からチェックが(笑)。まあ自社作品ですからね。修正してOKが出てたけど、原稿としてはむしろ嫌味度が増したような……。



【8月29日(木)】



 上大崎のタイ王国大使館でタイ・フィルム・ナイト。『忘れな歌』主演女優とタイ大使館の庭を見物し、タイ料理を食うのが主目的。『忘れな歌』はタイ演歌(というか、ムード歌謡?)の大ヒット曲をモチーフにしたラブストーリーなんですが、話の展開は『ブラック・タイガー』以上にぶっ飛んでて笑えます。これで歌うのが男のほうじゃなきゃ、二本でも大ヒットしそうなのに。『タイム・リセット』もそうだけど、タイ映画って、けっこう大林宣彦テイストだと思った。

 それにしても、ガーデンパーティの開始時刻が18:30ってのは早すぎで、最初のうちは汗だく。タイ料理はおいしくいただいたんですが、日本人向けに辛さを抑えてて、この暑さにはやや不向きか。

 添野の新居が近くなので、大使館前からタクシーを拾って乗りつける。完成に2年の歳月をかけたというだけあって凝り凝りの設計。おたくドリームハウス? 採光を意識した疑似吹き抜けの中庭がすばらしい。それでも一階がまるごと書庫(バス・トイレつき)になってるあたりが異様(笑)。



【8月30日(金)】



 新潮社でホラー・サスペンス大賞の最終候補決定会議。例によってオブザーバー参加ですが、今回は事前に一次通過作17本が送られてきたので泣きながらぜんぶ読みました。今年はけっこうレベルが高かった模様。最後はもめるんじゃないかと思ってたら、やっぱり激論に。3時間近くやってたけど、けっこう面白かったな。

 終了後は出席者のうち10人ぐらいでイコブ。

 家に帰ってからぐったり疲れて早々と寝てると夜中にバイク便が到着。ほんとは夕方着くはずだったのが、バイク便が事故って遅れたらしい。荷物の中身は、二段組み832ページのコニー・ウィリス『航路』サンプル版。薄くて軽い紙が使われてるおかげで、ゲラにくらべると重量は4分の1ぐらいじゃないですか。これで読むなら訳者校も楽なのに。
 それといっしょに届いた完本(1段組上下巻)のゲラのほうは持つのもいやな重さ。

 というわけで、この日記をお読みの作家・翻訳家・評論家・ライター・編集者etc.のみなさまの中には、まもなくこの『航路』がいきなり送りつけられてきて目をむく人もいると思いますが、こんな長いの読めるかと放り出さず、ぜひご一読を賜りますよう。いやほんと、この本はだれが読んでもぜったい面白い――と思うんだけど。誤植・誤訳・まちがい等々を発見した人は、9月10日ぐらいまでなら訂正が間に合うのでぜひご連絡ください。
 ほんとは書評系ウェブサイト主宰の人々にもがんがん送りつける計画だったんだけど、パイロット版の冊数が足りなくて断念。まあ、住所がわからないというのが最大の問題ですが。

 なお、各所で9月末発売予定とお伝えしてきましたが、諸般の事情で10月4日発売になりそうです。予価は、本体価格が上下各1800円。『ドゥームズデイ・ブック』が一巻本で本体価格3600円だったことを思えば爆安かも。




【8月31日(木)】



 急ぎの仕事が一段落したので葛西臨海公園で家族サービス。8月も終わりだというのにめちゃくちゃ暑い。人工渚はもうちょっと日陰をつくるようにしてほしいと思った。トキオは海にびびりつつも、波打ち際の砂遊びに夢中。水族園のマグロはけっこう気に入ったらしい。


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