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【2月1日(金)〜5日(火)】


 《本の雑誌》新刊ガイド用の読書。高橋源一郎『官能小説家』と『ゴヂラ』、菅浩江『五人姉妹』、津原泰水『少年トレチア』、筒井康隆『愛のひだりがわ』、牧野修『だからドロシー帰っておいで』……などなど。
《ライラの冒険》三部作の完結編が出ちゃったけど、今回は前月の積み残しが多くていっぱいいっぱいなのでそこまで手が回らず。リチャード・パワーズ『ガラテイア2・2』を風間賢二に奪われたのはむしろもっけのさいわいだったかも。ジャンルSFの新刊が多いので、周辺ジャンルまでなかなかフォローできない状況。いまいちばん読みたいのは金井美恵子『噂の娘』なのに(笑)。

 ひさしぶりに南砂の江東図書館に行ってディキンスンの既訳を調べ、ウィリス短編の翻訳をメール入稿。枚数的には30枚ぐらいなのにこんなに時間がかかっていては……。

 《SFJapan》の山田正紀・押井守対談、総計200枚あるベタ起こしをひいひい言いながら60枚にまで縮める。あとは山田さんの校正に期待。しかしいちばん面白い話は、山田さんから削除指令が下っているのだった。忘れてしまわないうちに活字にしといたほうがいいと思うけどなあ。




【2月6日(水)】


 ヘラルド試写室で『ロード・オブ・ザ・リング』。
 伝言板のほうにも書きましたが、これは傑作。すばらしい。『スター・ウォーズ』の16mmパイロット版をはじめて見たときの興奮がよみがえったYO! 映画的には後半のアクションが見所かもしれないけど、わたしは前半がめちゃくちゃ好きですね。オークとかはいまどきのホラー映画のモンスターになっちゃってるから、感心はするけど感動はしない。まあ、いちばん派手なシーンはすでに去年の夏、27分バージョンで見ちゃってるせいかもしれませんが。
しかし、 ダイジェストのパイロット版ではそんなに興奮しなかったのに、なぜ3時間の全長版がこんなに面白いのか。やっぱり指輪世界が完璧に再現されてて、奥行きとスケール感がちゃんとあるってことですかね。
 SFオンラインの柳下毅一郎の指輪評はいくらなんでも誉めすぎじゃないかと思ったけど、見れば納得。とはいえ指輪おたくがみんな納得するかと言えば、それは考えが甘いね。このレビューでいちばん笑えるのは、柳下が「どんなうるさ型の原作マニアも『ロード・オブ・ザ・リング』の前には頭を垂れるだろう」と書いたすぐ下で、井辻朱美が山のように文句を書いてること。ぜんぜん頭垂れてないじゃん!
 三村美衣も、「あのアルウェンは違う!」とか「あたしのガラドリエルが!」とか文句ばっかり言ってました。つまりこれは、男の子の《指輪》なんだよね。男性キャラからは母性本能をくすぐる部分がカットされ、女性キャラにはドリームが投影されると。
 その意味ではピーター・ジャクスンのおたく少年ぶりがちゃんと出てるわけですが、よくもまあこんな立派な映画をつくったよなあという感動は薄れない。なにしろ1961年生まれだし。『ミート・ザ・フィーブルス』とか撮ってた男だし。同世代では、たとえば庵野秀明とか比べても、そんなに突出した才能がある監督とは思えないのに、それでもこれだけの映画がつくれちゃうんだから、人間、努力すればなんとでもなるってことですよ。

 こんな傑作をつくってもあちこちから文句が出るあたりが指輪の指輪たるゆえんなんですが、オレは中学生のとき読んだきりなんで話はほとんど忘れてるし、当時も指輪よりナルニア派だったんで、この映画にほとんど文句はないっす。異世界ファンタジー映画最高峰の地位は揺らぐまい。注文があるとすれば、もっと長くしてくれっていうぐらいかな。
 というわけで、eiga.comには短い絶賛コメントを書きました。あと、WEB本の雑誌のSF談話室でも指輪ネタが地味に盛り上がり中。うちの伝言板にSFネタを書きづらいって人はぜひこちらにどうぞ。平和です(笑)。

 銀座から渋谷にまわって、ロッキン・オン《SIGHT》の書評対談with北上次郎。今回の課題図書は以下の9冊。

C・ダグラス・スミス『世界がもし100人の村だったら』マガジンハウス
カルロス・ゴーン『ルネッサンス』ダイヤモンド社
江國香織『東京タワー』マガジンハウス
エリック・ガルシア『さらば、愛しき鉤爪』ヴィレッジブックス
室積光『都立水商!』小学館
喜国雅彦『本棚探偵の冒険』双葉社
古川日出男『アラビアの夜の種族』角川書店
ニール・スティーヴンスン『ダイヤモンド・エイジ』早川書房
田中啓文『ベルゼブブ』徳間ノベルス

 上の3冊は編集部推薦。真ん中の3冊は北上推薦です。
『アラビアの夜の種族』は北上次郎も絶賛。トヨザキ社長はもちろん、香山二三郎も池上冬樹も絶賛らしく、いまんとこケナしてる人は見当たらない模様。
 《SIGHT》10号は、宮崎駿100枚インタビューの威力か、あっという間に完売しちゃったんだそうで、めでたいことである。北上おやぢとの連載漫談は、自分でやってていうのもなんですが、けっこう笑えると思うので、ヒマな人は立ち読みとかしてみてください。




【2月7日(木)】


 《サイトでーた》終刊号のコラム原稿。リニューアルしたと思ったらあっという間に休刊に。《ネットJ》ぐらい大々的な変身をしなきゃダメなのか。いや、《ダ・カーポ》スタイルの《ネットJ》が売れてるかどうか知らないけど、少なくともインパクトはあるよね。
 ところで、そのコラム中、ナイトウォーカーのサイトを紹介したら、あとで電話がかかってきて、
「うち(角川書店)では、例の件があるので、このサイトはちょっと……」
 すっかり忘れてましたが、「東京ウォーカー」がらみで抗議とか裁判とかしてたんだっけ。類似名称問題。この名前を認めてない以上、角川の媒体では紹介しないって方針らしい。メインのネタじゃないのでどうでもいいんですが、そうか、まだひきずってるのかとちょっと感心。




【2月8日(金)〜11日(月)】


 JASの誕生日割引を利用して三泊四日で高知に帰省。ふたりで帰ると飛行機代10万円のところが4万円で済むという威力。お正月はトキオ社長が絶不調だったんだけど、今回はこの冬でいちばんの絶好調でした。飛行機でも全然ぐずらないのでらくちん。

 日曜日は社長を祖父母に預け、昼間はまたしても西澤さんとカラオケ。

 さらに、小中高(追手前小学校・土佐中学・土佐高校)の同級生(帯屋町の服地屋、ゑり忠の若旦那)とひさしぶりに会い、向こうの奥さんおよび子供三人を交えて夕食。大学卒業後、大手メーカーに勤めてたんだけど、2年前から高知にもどって店を継いだという男で、いまは娘ふたりも追手前小学校。
 追手前小学校は高知のどまんなかにあり、130年の歴史を誇る由緒正しい学校(明治5年創立)なんだけど(東京で言えば泰明小学校みたいなロケーション)、今は少子化とドーナツ化で激しく生徒数が減り、全校で150人ぐらいになっちゃってるらしい。広末涼子も出た小学校だというのに(あー、なんか聞くところによると高知東生も追手前小学校で、オレの4年下だったらしい)。
 生徒数を増やすため、最近は特例措置で校区外居住者の入学も認められてるそうなので、高知方面在住の人はぜひ子供を追手前小学校に入れましょう。生徒数に対して校庭も広いし、のんびりしてるよ。
 と、ちょうど《週刊ポスト》の『WASABI』評で追手前小学校の話を書いたばっかりだったこともあって、えんえんそんな話をしてたり。
 メシを食いに行く途中、犬連れて散歩中の広末パパともすれ違ったんですが(商店街仲間なので、オレの同級生のほうは昔から仲良しらしい)、僕らが小学校一年だったとき、広末パパは小学校六年生だったと聞いて愕然。どっちかというとパパの世代なのか。って考えてみればあたりまえなんだけどさ。
 しかし、「凉子ちゃんがこないだ帰ってきちょったときは、よさこいでたいへんやったねえ」とか、地元では「凉子ちゃん」になってるのが妙に新鮮だったり。
 なお、ゑり忠のサイトでは、服地アウトレット販売以外に、室戸の海洋深層水とか土佐の地酒とか四万十のりとかも通販してるので、ひとつご贔屓に――と、奢ってもらったかわりに宣伝しておこう。

 高知には『フリーウェア』のゲラを持ち帰り、えんえん訳者校正。東京でやってると激しく飽きる作業なんで、帰省してる三日間に読み終わってちょうどよかったかも。うちの実家はマンションの一階に入ってる喫茶店含めて、徒歩3分圏内に4軒も喫茶店があるので、オレの仕事環境としては西葛西よりもむしろ充実してるのだった。その分、夜がはやいけど。
『フリーウェア』の科学ネタに関しては例によって菊池誠氏にチェックを受け、東京に帰ってから夜中に電話で相談。いつもありがとうございます。




【2月12日(火)】


 松竹本社試写室で劇パト3というか、『WXIII PATLABOR THE MOVIE3』+ミニパト3本。
 ミニパトはどれも出来がいいんですが、公開時には1本ずつの週替わり上映なので、まとめては見られません。1はガンマニア向け、2はメカ(巨大ロボット)おたく向け、3は千葉繁ファン(あるいはシリーズファン)向けってことでしょうか。押井節大爆発で、ほとんど声が聞こえてきそうな感じ。おたくじゃない人が見てもちゃんと笑えるつくりになってるのが立派。どうでもいいことに口角泡を飛ばしてる理論派おたくを眺めてて、話の内容はさっぱりわかんないだけど妙におかしい、みたいな。山田さんとの対談でも行ってましたけど、そういう趣味のレベルでおたくと接点があるのは押井さんの大きな利点かな。いや、アニメとしても非常によくできてます。
 本編の『WXIII』(Wasted Thirteenと読むのが正解だけど、「だぶりゅえっくすすりー」と読んでもOKだそうです。ストレートに「廃棄物13号」でもよかった気がするが……うーん、それはそれでマイナー感が漂うか)は、今年の邦画ベスト5には確実にランクされそうな傑作。刑事ドラマとしても秀逸で、おたく系の観客より、むしろ山根貞男とかに見せたい感じ。
 SFオンラインの東京ファンタ特集で、添野知生が、
「舞台挨拶で飛び出した「パトレイバーの実在する世界における、黒澤明の『野良犬』のような作品」という表現はじつに的を射ている」
 と書いてるけど、まさにそういう感じですね。それでいて、劇パトの流れにもきちんと乗ってて、前2作の押井テイストも微妙に生かされてるし。
 原作知らなくてもシリーズ一本も見てなくても全然だいじょうぶな映画なので、アニメに興味のない黒沢清ファンとかもぜひひとつ。こういう映画がちゃんとヒットすれば、アニメも成熟したなあって感じになると思うんですがどうですか。

 映画のあと、東銀座でメシ食ってから、近くの喫茶店で『フリーウェア』のゲラを早川書房I氏に引き渡す。
 夜中はソルトレークシティ五輪の中継を横目に新人賞の原稿読み。肩痛が治らないのでナショナルのアーバンウィング(アーバンリラックスの姉妹機)の上がほとんど定位置状態に(笑)。清水が打ったという痛み止めの注射にちょっと心引かれたり。いやべつに、ふだんはそんなに痛くないんですが。
 見てて面白かったのは男子モーグルの予選後半。前半で高得点が続いたプレッシャーから後半は勝負に行って転倒する選手が続出。そりゃま、スピード的には滑降にかなわないけど、あの速度で突っ込んでエアを決めるのはなあ。
 ジャンプは札幌からずっと見てるのにいまだによくわからん。じつはTV観戦に向かない競技なのでは。



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