【12月11日(月)〜12日(火)】


 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作、斉藤直子『仮想の騎士』(新潮社)の書評(for《波》)。関西弁でしゃべるカザノヴァが大人気の歴史ファンタジー。冒頭はこんな感じ。
 女は、眠るカザノヴァをベッドに残し、ある朝唐突に消えた。さよならの言葉は、あろうことか窓ガラスに彫られていた。カザノヴァが贈ったダイヤモンドの指輪で刻んだのである。そんな劇的な女であった。
「――もうええっちゅうに」
 カザノヴァは、思い出したくもない記憶を勝手に再生し始めた頭をがしゃがしゃと掻き毟った。
 いちばん驚くのは、ルイ十五世の密使としてロシア宮廷に女装して潜入するデオン・ド・ボーモンが実在の人物で、作中のエピソードも史実にほぼ忠実だってことですね。書評を書くために調べてみて驚きました。ちなみに主要登場人物の(現実の)成年は、
サンジェルマン伯爵 1710年ごろ生?
ルイ十五世 1710年生
ポンパドゥール夫人 1721年生
ジョバンニ・ジャコモ・カザノヴァ 1725年生
デオン・ド・ボーモン 1728年生
フランツ・アントン・メスメル 1734年生
 という感じで、なるほどみんな知り合いでもおかしくない。でも中身は少女マンガ。森川久美とか青池保子とかの少女マンガが好きだった人にはおすすめ。→『仮想の騎士』をbk1で注文。

 キネ旬の映画ベストテンを送る。こんな感じ。少年ものが弱点らしい。《映画秘宝》に送ったやつよりはやや一般性が考慮されてます。

●日本映画ベストテン

1 オーディション
2 岸和田少年野球団
3 はつ恋
4 人狼
5 呪怨
6 バトル・ロワイアル
7 PARTY7
8 デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!
9 顔
10 ナビィの恋

●外国映画ベストテン

1 マルコヴィッチの穴
2 遠い空の向こうに
3 ゴッド・アンド・モンスター
4 マグノリア
5 ファイト・クラブ
6 スリーピー・ホロウ
7 サウスパーク 無修正映画版
8 ドグマ
9 トイ・ストーリー2
10 フォーエバー・フィーバー




【12月13日(水)】


 ミステリ忘年会@ビヤホーフ麦酒館in恵比寿ガーデンプレイス。どんどん参加者が増えてたいへんです。もう誰が誰やら。
『ジョン・ランプリエールの辞書』(傑作!)や『老人ホーム』なんかの翻訳者、青木純子さんとは初対面。アーティストハウスの河村社長とも初対面。いろんなことを力説された気が。『ライディング・ザ・ブレット』のオンライン先行発売に関しては、業界的にそれほどの反発もなかったらしい。やったもん勝ち? まあ書店の店頭でも売れたから宣伝効果があったわけで、結果オーライなのか。




【12月14日(木)】


 15:30、UIPで「スーパーノヴァ」。アラン・スミシーは映画にまでなっちゃったので、トーマス・リーと改名したらしい。マーク・ステッドソンの特撮はそれなりによくできてますが、話は地味すぎ。やっぱりウォルター・ヒルはSF映画に向かないのか。SFネタは(リアリティが全然ないけど)ちょっと面白いので、宇宙SF好きは観ても損はないでしょう。しかしいきなり3000光年彼方から救難信号を受信するのはどうか。

 18:30、日本推理作家協会賞の第一回予選会@協会事務局。今回は本命不在というか、全然予想がつきません。レギュレーションは、重複受賞なし(過去の受賞者の作品は対象外)、新人の第一作は対象外(二作目から対象)。『日本沈没』や『ソリトンの悪魔』もとってる賞だから、境界線もよくわからないし。だれかが推薦したものを予選委員全員で読むシステムで、今回はとりあえず三十本ちょっと残る。大森の未読はそのうち3作でした。今回はまだいいけど、次回は思いきりもめそうだなあ。

 立ち会い理事の斎藤純氏、予選委員の池上冬樹、吉田伸子、西上心太の各氏と池林房。あとからオムロ・ピクチャーズの小出さんが合流、映画話とか。『人間の屑』は来春公開が決まったそうで、めでたいことです。しかしあんなでかい小屋でだいじょうぶなのか。




【12月15日()】


 1時からブエナビスタで「アンブレイカブル」の試写……と思ったら、六本木の路上で江戸木純氏とばったり。
「『アンブレイカブル』ですか? 満員で入れませんよ。なんか30分前に行かないと全然ダメらしいっす。ブエナで入れないと困るんですよねえ」
 と言いつつポケットから手書きの試写予定表をとりだし、歩きながらチェックする江戸木さん。なんかギャガ方面に走るらしい。もう1時なのに。
 しょうがないのでとっととあきらめて東銀座にとって返し、シネパトスで『天国までの百マイル』。なんか客席は映画が1000円で見られる人たちの山でした。これってシニア映画なのか? まあ1800円出して観るのはちょっとどうか。そりゃまあ、母親が八千草薫なら、がんばっていい病院に入れようという期にもなるでしょうが。

 3時をまわったのでUIPで『ギャラクシー・クエスト』。すばらしいおたく映画。『トレッキーズ』と二本立てで上映するのがいかすと思う。最近だとむしろ、『バビロン5』のファンがああいう感じでしたね。
 ある意味では『機動戦艦ナデシコ』と同じメンタリティかも。しかしアニメの場合は宇宙人が真に受けて迎えにきても助けにいけないのだった。




【12月18日(月)】


 ミステリチャンネル「ベスト・ブックス」1月号の収録。なんか風邪を引いて調子が悪いが収録は待ってくれない。ぼうっとしたまま収録。最近は読み終わった瞬間にストーリーを忘れてしまうので、小説の筋が説明できない。思い出すためのキーワードをメモしておく必要があるような気が。




【12月19日(火)】


「レッド・プラネット」と「アンブレイカブル」と「レクイエム・フォー・ドリーム」の試写を見る予定だったのに風邪で起きられず。一日寝続ける。




【12月20日(水)】


 体の具合は多少よくなったものの仕事をする気力が出ないので六本木のブエナビスタふたたび。40分前に行ってようやく見ました「アンブレイカブル」。M・ナイト・シャマラン恐るべし。いやもうたいへんな映画ですね。ネタ的には、むしろケヴィン・スミスとかタランティーノが撮りそうなアメコミおたく映画なのに、それがどうしてこうなっちゃうの。不死身のスーパーヒーロー(=unbreakable)願望が爆発する話を、ある意味アラン・ムーア的に処理した映画。『ウォッチメン』暗い編の監督はシャマランで決まりでしょう。「深淵もまた見上げる」だけでもいいから90分で映画化してください。傑作。

 本の雑誌別冊『新・恋愛小説読本』の原稿。全然余裕がないので、持ちネタの「人間が出てこないラブストーリー短編」で14枚。藤本泉「十億トンの恋」、大原まり子「メンタル・フィーメール」、ゼラズニイ「フロストとベータ」、ティプトリー「愛はさだめ、さだめは死」とか。さらに月刊アスキーのコラム原稿。


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