メインページへ 09/05/20  更新(初版)
春の昭和 へ行って来た −クマイシ(仮称)のこと−

09/05/04 からむし織の里近く


    2009年5月3日


    春の昭和で考えた/

    以前からずっと気になっていた場所があった。
    その地は、小中津川の宮原にある。
    宮原の田圃(たんぼ)の中にある。


    (石から気多神社方向を見る)


    その場所の田圃は宮原では高い場所になるのではないか。
    湧き水を引いた小さな水路が山裾に沿って流れている。
    その水が最初に分流する田圃は、その最高地の田圃となる。
    山裾をぐるりと巡ると、沢があるようでもあるが
    ここより高い場所の農耕地はあとは畑である。

    この田圃からは
    小中津川の扇状地のほぼ全域を見渡す事が出来るのである。

    見晴らしの効いたこの場所からは
    両隣の集落につながるたった一本の道路もよく見える。
    そこを移動する者は、
    どこの誰か、村人か、行商人か、マレビトか。
    この田圃に立てば
    農耕作業の人々の姿も
    彼等の作業の段取りの話も
    彼等の今晩のおかずの話も
    話をしている普段の声が聞こえるのである。
    そんな事まで判ってしまう場所なのである。

    現在では、非自然(人工)的騒音がこれらの声を掻き消してしまうので
    時代設定は
    ずーっと昔の事じゃったぁ
    ということにしてもらいたい。

    初めてこの村に立ち入る人が遠目に見えるのは
    山裾から這い出してきたクマが
    寝そべっているようでもある。
    近づこうとする部外者を寄せ付けないための擬態。


    (石からはげ山を見る。
    平山郁夫氏は気多神社曼陀羅の構図にはげ山を取り入れた)

    宮原の田圃の中にある、以前からずっと気になっていた場所。
    そこには、高さ50センチほど、直径1メートルほどの
    お椀を被せたような形の岩が、あるのです。
    そこには、高さ1メートルほど、直径1.5メートルほどの
    お椀を被せたような形の岩が、あるのです。
    (後で写真で確認すると、どうみてもこれくらい↑はありますね。 物理的事実自体を大げさに表現すると、本当の嘘になってしまいますので、 ガード心理が働いたものと思われます(笑))

    あぜ道脇にあるのではなく田圃の中にあるのです。
    田圃内での農作業の効率を考えると邪魔になる石です。
    ずーっとずーっと昔の人たちでも、田圃を開墾するときに
    岩の破砕方法や梃子の原理は経験則で知っていました。

    それでも田圃の中に鎮座する岩、、、
    その岩を残した意味を考えていたのです。

    わたしは、この岩を、小中津川村(宮原)の
    「要石(かなめいし)」
    として、
    同定してみようと思うのであります。

    この石(岩)の名前は?
    聞きそびれたままである。
    初めて見たときには、勝手に「弘法石」と名づけていました。
    いまは、「クマイシ」と名づけようと思っています。
    「クマ」は「隈」であり「暈」であり「熊」でもあります。


    (石から高舘山?を見る。
    山裾と杉木立の隙間から山頂が見える仕掛け)


    二十数年前の春先に小中津川の野原を散歩しました。
    道路と川辺以外は雪の残る真っ白な風景の中に
    その岩の部分は雪が融けて
    まあるく黒い地肌を出していたのでした。

    そのときからずっと気になっていた場所があったのです。
    その地は、小中津川の宮原にある。
    宮原の田圃(たんぼ)の中にあるのです。

     不思議な
    岩(いわ)の謂(いわ)れ
    を、迷想してみたのでした。


    (日輪を背にして坐らせてみる/心地がよい)


    奥会津昭和村も訪れられた、野本寛一氏の著作に『神と自然の景観論 信仰 環境を読む』(講談社学術文庫 4-06-159739-8)という本があります。
    この中には、海上から自分の位置を確認する為の「山アテ」という山の話や、 海岸に表われる「アテ木」という神聖な松の話、そして、磐座(いわくら)と しての「要石(かなめいし)」の話が出てきます。

    わたし(筆者)が知っていることは、これだけのことでした。
    集落全体が見渡せる位置。見張り台。 鎮守の社の近くにある。ヨソ者が近づき難い形象。 気多神社建立時の方角を測る為の石。アテ石でもある。 高館山と権現山との狼煙(のろし)通信の中継点。

    野本先生にも見ていただきたい磐座(いわくら)です(笑)。

    注意:この石(小中津川某所)は、私有地の田圃(タンボ)の中にあります。
    車は入れません。拝観施設ではありません。特に稲作期の立ち寄りはご遠慮するか、 近所の方にお断りの上で鑑賞してください。

改訂 09/05/20
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