オービス捕まり記 4



いよいよ当日。眠い頭を左右に振りつつ電車にのる。試験は簡単だと聞いていたが、 よもや落ちるようなことがあっては恥ずかしくてこの文章の続きは書けなくなってし まう。出頭先の埼玉県警本部交通部は駅からおよそ徒歩15分だが、分かりにくい場所 。ようやく辿り着いてみると目の前に警察学校が位置していた。先ずは矢印通り受け 付けに行き、免許を提出する。この受け付けは誕生日の月ごとに分けられており、免 許を渡すのと入れ替えに「停止処分書」という紙切れを渡してくれた。もちろん、俺 の名前等は予め記入されている。

受け付けのおじさんが「講習を受けますか?」と尋ねた。「はい」と俺。講習を受け るには別の窓口で手続をしなければならないらしい。で、講習に受かったら先ほど渡 した免許を返してくれるらしい。

別の窓口に行って講習料6600円を支払う。講習料は「停止処分書」に、その場で購入 した印紙を貼ることによって支払う。印紙は5000円、1000円、600円を各一枚だ。印 紙を貼った「停止処分書」を提出すると、講習の教科書(一冊)をくれた。免許取得 の時の講習の 教科書とあまり変わらない感じ。講習開始まで30分ほど時間があったので周りをぶら ついてみる。俺と同じ境遇の違反者がたくさん、ヒマそうにタバコを吸ったり、座っ て文庫本を読んだり、携帯電話で誰かと話したりしている。よく見るとこの埼玉県警 本部交通部は自動車学校 と一体になっており、窓の外には車の教習コースが見える。既に車を走らせている生 徒もいるようだ。講習を待っている違反者の多くは10代後半〜20代前半の若者か40代 のサラリーマン風で、若者の大半が髪を染めている。服装もヤンキー風だ。

授業開始5分前。指定された部屋に入って席に着く。1クラス100人ぐらいの部屋で 、今日は2クラスに対して講習が行われる。席も指定されており、両隣ともにオッサ ンでがっかり。授業開始のベルとともに尾藤イサオばりのこれまたオッサンが入って きた。この人が教官らしい。尾藤イサオはやたら丁寧な口調で1頁目から解説を始め たが、とある箇所で「ここは試験に出ますから」などとほざく。さらに「1時限目の 私の範囲からは5問出ます。私が、試験に出ます と言った所が出ますのでよく注意 して聞いておいてください」って、おいおい! そんなんでいいのか尾藤イサオ!? さらに2時限目の教官は開口一番「私の範囲からは15問出ま〜す」だと。あ〜あ。 もちろんどこが出るかはあからさまに教えてくれる。

そんなこんなで試験の時間。試験は40問の○×選択式だ。試験官である教官は、問 題を配る前に「それではちょっと練習をしてみましょう」と前置きし、試験問題を読 み始めた。「例えば、ええと・・この第4問。死亡事故の原因で一番多いのはスピー ド違反である。 はい、これは○ですか×ですか? 一番前のあなた。」 その問題 は一時限目の先生が「出る」と言った問題だ。「○です。」苦もなく「一番前のアナ タ」が答えた。「その通り! よくできました。では次の問題は・・ええと・・この 第17問目・・・」 おいおい!!!こんな調子で5問ほど事前に答えがバラされた 後、試験が始まった。試験時間はわずか20分で、この間に40問を答えなければならな いのでかなりのハイスピードで解答しなければならないが、読んだ瞬間に答えがわか ってしまうような問題ばかりなので5分もあれば出来てしまう。「前方の横断歩道に 子供が飛び出して来たが、青信号だったのでそのまま通過した」って、おい!!「× 」に決まってるだろ!

で、試験結果は案の定「優」。いい忘れたが、40点中35点以上が「優」で、30日の免 停が29日短縮されて1日の免停になる。つまり講習を受けた次の日から運転してもよ いのだ。この試験、教官によると生徒の8割が満点だったそうだ。俺もきっと満点だ っただろう。こうして俺は、晴れて免停を一日だけで免れることになった。

試験結果を返し終わり、教官が最後に教官がこう言った。「ところで、罰金ですが、 まだ払っていない人もいるかと思います。この中の半分ぐらいはまだ罰金を払ってい ないはずです。そういう人達にはあとでハガキが行きますので、そのハガキの指示に 沿って刑事処分を受けて下さい。」ガ〜〜〜ン。やっぱり払わないで済むなどという 甘い話はなかったのだ。と言うよりも、今回の講習および点数の減点は行政処分であ り、刑事処分(つまり裁判)を受けないと罰金の金額が決まらないため、罰金の請求 が遅れていただけなのだ。考えてみれば当然のことだ。

まあいいや。ハガキを待つとするか。試験を無事に済ませたことによって、俺はもう 何もかも終わったような気持ちになっていた。

to be continued...

著作者:田中H




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