オービス捕まり記 3



大宮の交通機動隊に出向いてからもう1ヶ月が過ぎようとしている。婦警さんの話で は3通の連絡がくるとのことだったが、あれ以来さっぱり音沙汰がない。あの後あわ てて免許の住所変更をしたが、そのため郵送先が変わり、郵便物がトラブっているの か? いや、住所を変更する以前も郵便物は転送されて来ていた。これはひょっとし て、取り調べの態度が素直だった俺を見て同情してくれた婦警さんが俺の違反記録を もみ消してくれたのではないだろうか。そうとしか思えない。違反から刑事処分まで 、通常こんなに時間がかかるわけがないではないか。

という俺の甘ちゃんな期待を裏切り、郵便物はやってきた。今回は転送されてきたも のではなく、ダイレクトに俺の新しい住所に送られて来ている。差出人は埼玉県警本 部交通部。封筒を開けて中を見てみると、薄っぺらい紙が一枚だけ入っており、それ は俺の行政処分を知らせるものであった。「行政処分通知書」と題されたその紙は、 俺が30日間の免許停止処分に該当する旨と、その行政処分を行うために○月×日に埼 玉県警本部交通部に出頭しろという記述が記されていた。やっぱりきたのか。このま ま俺の処分を忘れてくれるということも有り得ると本気で思っていたのでがっかりだ 。

どうやら○月×日に県警に出頭し、そこで講習を受けるらしい。講習を受けた直後の 試験で好成績を修めると免停の日数が短縮されるので、ここはもちろん講習を受ける に限る。紙の裏には講習を受ける場所の地図がある。俺の最寄り駅から2駅の好ロケ ーションだ。しかし受け 付けは朝の8時半〜9時半。講習は午後からのんびりいくんだろう、などと考えてい たがとんでもない。朝っぱらから午後の4時半まで、みっちりと一日取られるらしい 。また年休を取って会社を休まなければならないのか。

アホらしい。

しかし不思議なのは、この通知では罰金の金額について一言も触れられていないとい うことだ。紙の表、裏とも、隅から隅まで読んだが、50km未満の速度違反で違反点数 が6点であることが記されているだけで、罰金がいくらなのかという記述はない。こ れはひょっとして、取り調べの態度が素直だった俺を見て同情してくれた婦警さんが 俺の罰金をもみ消してくれたのか? もう一つ不思議なのは、友人の話だと先ず簡易 裁判所に呼ばれて裁かれ、そこで罰金を払うということだったではないか。システム が変わったのか、それとも俺程度の軽い(?)違反だといちいち裁判所に呼んでられ ないのか。裁判がちょっと楽しみだった俺は少しがっかりだ。まあいいや。

その1週間後、俺はもう一つの、罰金を払わなくてもいいんじゃないか、という希望 を胸に、試験に使う鉛筆を削り、消しゴムを揃え、出頭当日の朝を迎えた。

to be continued...

著作者:田中H




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