パシャッ!! 「やべ!」 俺よりも先に声を上げたのは助手席に座っていた悪友K だった。所沢から浦和へ向かう通称:浦所街道のど真ん中で、俺の車はオービスにひ っかかってしまった。時刻は夜中の0時前。遅い時間のせいか、周りに車は一台もい ない。初めて通った道とは言え、スピードを出さない方がおかしいようにさえ感じら れる。フラッシュが光った瞬間に反射的にブレーキを踏んでいたので、メーターを見 たときは減速されていた。ゆえに何キロで走っていたのかはわからない。俺は今まで オービスに写真を撮られたことは一回もないと認識している。今回も、フラッシュは 光ったものの、多くのオービスはフラッシュを炊くだけでフィルムは入っておらず、 ドライバーを威嚇するためのものであるという話を聞いていたため、不思議と冷静で あった。
そんなことを忘れかけていた一週間後。何気なく郵便受けを見てみたら・・・あった のだ。差出人に「埼玉県警」と書かれている一通の封書が。ゲェーーー、本当に来や がった、やっべーーー!!
その手紙は「通知書」と銘打たれていた。
要旨は「○月×日◎時頃に埼玉県●●市●●町を走っていたあなた名義の車が速度違 反をしたことについてお尋ねしたいので2週間後の○月×日に大宮の交通機動隊に出 頭してください。なお、運転者があなたでない場合は違反当時の運転者を出頭させて ください」というものだった。いきなり頭から「速度違反をしたことについて」と決 めつけられている。オービスの写真ってのはそんなにきれいに写ってるものなのか?
出頭を要請されている日は平日だ。年休を取らなければなるまい。ばっくれてやろう か、という考えが一瞬脳裏をよぎったが、逮捕されるのもシャレにならないので止め ておこうと思い直す。そう言えば、俺は引っ越し後3カ月にもなるのに免許の住所の 書き換えをしていないのだ。それも併せて怒られることは想像に難くない。(県警か らの封書は元の住所から転送されてきた)
次の日、職場の友人で同じくオービスに捕まったことのある奴に聞いてみたところ、 全部で3回呼び出されるのだそうだ。最初に県警に出頭した際にオービスの写真を見 せられ、尋問を受けて罪を認めると取りあえずその場は帰してもらえる。2度目は簡 易裁判所で刑事処分を受ける。いわゆる被告として裁かれるのだが、周りには同じよ うにオービスに引っかかった人が10人ぐらいいる。つまり、10人ぐらいまとめて裁か れるんだそうだ。ここで10万円以下の罰金も払う。で、3度目は教習所で講習を受け て免停の日数を軽くしてもらう。(これは行きたくなければ行かなくてもいい)
で、出頭当日、会社を休んで出かけようとしたところでハタと気が付いた。地図を見 てみると、交通機動隊はどう見ても車でないと行けない場所にある。でも、あの時の スピードだとどうみても一発免停だし・・・。で、しょうがないから電話して聞いて みた。
俺「もしもし、交通機動隊ですか?」
男「はい、そうです」俺「あのー、オービスつかまったんですけど、これ、車で行っていいんですか?」
男「あ、いいっスよ。すぐに免停にはならないッスから」
話はあっけなかった。 俺は安心して車で交通機動隊に向かった。 免許の住所の書き換えはもちろんしていない。
著作者:田中H