「ああ、暑いなあ、今日は。アイスでも食べようかな」 と、冷凍庫を開けた私は、そこに歯磨き粉が横たわっている のを発見した。
「ん・・? 何だこりゃ?」
それが、数日前、いや、数週間前に実験のために自分で冷凍庫に 入れた「Aqua-fresh」であることに気付くまでに2〜3秒を 要した。【Aqua-freshの秘密 3】を執筆して以来、「続きは 一体どうなってんだ」などのお便りを多数いただいたが、引っ越しの準備などの都合もあり、なかなか実験の続きを行うことができなかったのである。
今こそ、「Aqua-freshの秘密」を見届ける時だと、理由もなく感じた私は、アイスの事など忘れ、半ば凍った「Aqua-fresh」をむんずと掴み、冷凍庫から取り出した。そこで、私は新たな発見をした。
カチカチになっていて、刃物が通るだろうか、という私の心配を よそに、「Aqua-fresh」のチューブは未だその柔軟性を保っていた。 きっと、力を込めて握りしめれば、チューブはつぶれてしまうだろう、そう思える程度の柔らかさを、保っていたのである。もちろん、 チューブを握る右手からは充分はほどの冷たさが伝わってくるので、 決して冷凍が不完全であったわけではない。きっと、歯磨き粉の成分 の中に、凍りにくい物質が含まれているのだろう。或いは、水分が 少ないため、凍りにくいのだろうか。
まあ、それはこの実験の本質的な問題ではない。 そう、問題は中身なのだ。刃物を入れるのに手頃な固さのチューブを 握りしめ、私は包丁を探した。が、包丁は食べ物を切るものであるため 考え直し、カッターを手に取る。そして、テーブルが汚れないように、新聞紙を敷いた。ついに役者は揃ったのである。
著作者:田中H