Aqua-freshの秘密 5



新聞紙の上に「Aqua-fresh」を横たえ、しばしそのチューブ を私は見つめた。そうして、ウェディングケーキへの入刀にも 劣らない程の緊張した面もちで、私はカッターを、そのチューブ の上に垂直に当てる。

「このチューブは中部地方で作られたものなのだろうか?」 そんな思いがかすかに身を焦がす。右手が震えているのを感じる。 「・・ついに、永年の疑問、「Aqua-fresh」の内部構造が明らか になるのだ・・」

と、その時、私の脳裏に、極めて冷静かつ重大な問題が蘇る。

「一体、どこを切ればいいのか・・?」

チューブの内部構造を明らかにするには、チューブのどの部分を、 何カ所、切るのが最も効果的なのか? 私は自分自身に問いかける。 「真ん中か・・、いや、チューブの口のすぐ横がいいか、・・・  それに、そもそもチューブを垂直に切断する方法でいいのだろうか。  場合によっては、チューブに添って平行に切り込みを入れた方が内部構造がよくわかるのではないか・・?」

いや、悩んでいる暇はない。そうしている間にも、チューブの氷解は 着々と進んでいるのである。額から一筋の汗が流れ落ち、チューブの 上にポトリと落ちた。

しばしの熟考の末、私はチューブの3箇所を、垂直に切る事にした。 3箇所とは、「チューブの口の直下」「チューブの真ん中」「チューブ の尻尾」である。この3箇所にすれば、もし、チューブの先端から尻尾 までに歯磨き粉の配置にずれがあったとしても、その傾向をつかめる と考えたからである。

次に生じるのは、3箇所をどの順番で切るか、である。 これはさしたる問題ではないが、キーとなるのは切り易さである。 最初に「口の直下」を切ると、その後に「真ん中」「尻尾」と 切っていく際に、「口の直下」の切り口から歯磨き粉があふれる ことになるだろう。その点、「真ん中」を最初にすれば、その後に 「口の直下」を切っても、あふれる量は少ない。なぜなら「口の直下」 の真横には、固いチューブの口があり、これが多少の支えになると考えられるからである。

意を決した私は、今度こそ、カッターを「真ん中」に、垂直に 押し当てた。ためらってはいけない。一気に、カッターを振り 下ろさねばならない。10秒ほど体の動きを止め、心を無心にする。

そして、私は静かにカッターを振り下ろした。 「グニュっ・・」 確かな手応えがあり、チューブはきれいに真ん中から真っ二つに なっていた。

つづく

著作者:田中H




Aqua-freshの秘密 6

田中H作品集目次へ

サイバー梁山泊の目次へ

田中Hにメールを出す→