青汁顛末記 3



胡散臭そうな風体の平林(仮名)はニコニコしながら包みを 俺に手渡した。

平林「ハイ、これ、青汁です。 まあ、飲んでみてください」

俺 「は、はあ」

平林「マズイですけど」

俺 「・・・」

平林「では、失礼します。」 バタン。

予想に反して、ごく短い時間の中で、あくまでもニコニコした 表情を崩さずに任務に徹した平林(仮名)であった。あれほど アクセスに長時間を要した俺への青汁の手渡しについてすら、これだけの短時間で事務的にやってのける所などはプロの仕事を感じさせる。

あっけない平林(しつこいけど仮名)との対面のあと、しばし呆然 と玄関に立ち尽くしていたおれは、ふと我に帰って手にした包みに 視線を落とした。薄いビニール袋の中に、凍った青汁のパックが5 つ、大きさのほどは10cm四方の厚さ5mm程の袋、に入っている。 既に凍っているため、ひんやりとした感覚が手に伝わってくる。

さて、これをどうするか・・・すぐに飲んでみるか・・いや・・。 その時の俺はやっと宝物を手に入れた海賊船の船長のように ほくそ笑んでいたに違いない。すぐに飲んでしまうのは楽しみに 欠けると判断した俺は、その包みをしばらく冷凍庫に保留して様子を見ることにした。

・・・一週間ほど経ったであろうか。  時は熟した。 おもむろに冷凍庫から例の包みを取り出した俺は、その5パックの うちの一つをコップとともに2階に持ち出した。俺の部屋は2階だ。

深呼吸をして覚悟を決める。平林(仮名だってば)の言葉が今一度 脳裏をよぎった。 

「マズイですけど」

・・マズイですけどマズイですけどマズイですけどマズイですけど・・

その一言は俺の頭の中で何度もリフレインされる。「ひょっとして俺はとんでもないことをやらかそうとしているのでは  ないだろうか・・・」ふっと不安になる。しかし俺はそんな不安を振り払うように、青汁の袋の裏に書いてある 注意書きに目を走らせた。

to be continued...

著作者:田中H





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