ヤブ尾根から長老ヶ岳 山行記


 丹波の盟主、長老さん。
あとひと月もすると、イワカガミや
シャクナゲの花で一杯になりそうです。
 計画は2.5万図の破線尾根道。
しかし、急登とヤブ尾根で消耗。
やっと辿り着いた山頂は展望最高。
ぽかぽかした日よりにコーヒーと
ハーモニカを聞いて楽しみました。
 写真は森林ふれあいロードからの眺め
         (山頂付近) 97.3.28. 

■2.5万図:和知
■日にち:97年3月28日(金) 
■天気:晴れ
■同行者:単独
■コースタイム:
  自宅発(8:20)〜約80km〜和知町下乙見(10:00)

  下乙見[約180m]発(10:10)〜上乙見(10:40)〜西南尾根約635mピーク(11:35-11:45)〜
  西尾根の785mピーク(12:45)〜遊歩道〜山頂(13:20-14:35)〜
  遊歩道(森林ふれあいロード)〜東屋(15:20)〜展望台(15:30-15:50)〜
  管理棟(16:00)〜権現谷出合(16:20)〜仏主バス停着(16:30)
  
  仏主バス停(16:45)〜バス〜下乙見バス停着(17:00)〜自宅着(18:40)

   歩行時間:4時間50分 歩行距離:約13km 累積標高差:約800m

【下乙見バス停】 R173から篠山盆地に入り櫃ヶ岳の前を通ってR27、柔らかそうな
美しい雑木林の山が美女山のようだ。JR下山駅辺りから左手に目立つ、といし山。
といし山を過ぎると間もなくR27から右手に入り、いよいよ山深い様相になってくる。
 下乙見には、和知町設置のルート案内板がある。上乙見に向かう前に念のため
帰りに使うバス時刻を確認。『バス近』で調べた時刻より10分程遅くなっている。
そして予定の便は日・祝運休。「えぇと、今日は金曜かぁ、よしっ!」
 上乙見への谷に向かい、橋を渡ってちょっと行った防火用水地の所に車を停める。
車から出るといきなり豊かな沢音とうぐいすの声。ふきのとうも咲き、雰囲気満点。
 身支度をして清流沿いに車道を歩く。渓流釣りの人、2人。やがて前方に電波塔の
ある山頂付近が顔を出し、上乙見の集落に着く。ここにもルート案内板がある。

【上乙見のおばさん】 案内板には、谷道をずっと詰めていくようになっている。
左手の尾根に上がるルートは普通ではないようだ。畑仕事のおばさんに聞いてみた。
「こんにちはぁ、長老さんはこの道ですかぁ?」
「そうそう、真っ直ぐ行きはったらよろしいよぉ。」
「こちらの尾根の方から登っていく道はないですかぁ?」
「そうやねぇ、真っ直ぐ行きはったらぁ。」
「ありがとうございます。」
 真っ直ぐを強調されると、人の心理は禁止の欲望というか、尚のこと、尾根に取り
付きたくなってくる。地図で上乙見集落が途切れたところに直登道があるので、
目星をつけて小さい橋の手前を左の地道に入る。荒れた植林の中を一瞬登ると新しい
林道(地図にはない)に出た。

【鹿楽園状態】 林道がカーブしたところで堰堤の左から植林帯に入る。か細い踏み
跡があり、その中に蹄のような鹿の足跡も混じる。右手の沢に沿って杉植林の中を
登っていく。踏み跡は見え隠れしてよくわからないが兎に角、上に向かう。突然、
明るい沢の方で、パタパタパタと音がしてキジが飛び立つ。
 杉林の急登が続き、鹿の足跡、フンが多い。今日はいつもよりあごが上がる。
やっとこさ植林を抜け出たかと思いきや、その上は急斜面に笹と疎らな立木。
道がないかなぁと探しても、元々まともなところを登ってきた訳ではないので、無い。
かすかにこれかと思えば鹿の通り道。どうも鹿に誘われて上に登らされているような
感じだ。笹を手づかみで登る。ずっと、フンが多い。地面に手をつくのも躊躇してし
まうくらいである。こうして約350mをここで稼いだ。ふぅっー。

【約635mピーク】 やっと尾根に出たようだが、一面笹と自然林。しかし、ここまで
来ればあとは楽珍だろうと一息入れる。おにぎりとお茶で休憩。明るい自然林の灌木
越しに少しとがった785mピークと電波中継塔の山頂が見える。かなり距離がありそう
だ。それにしてもここはどこだろう。地図で当たりをつけるが自信がない。
 さてと、待望の稜線歩きと行くかな。ありゃぁー、道がない。
休憩した所からは山道のように見えたが、完全な見間違い。踏み跡を探す。
獣道のようなものがコブを巻くようについていて、とりあえずこれを辿る。なんだか
左に曲がって西に向かっている。さっきの景色を思い浮かべてコンパスと地図で確認する。
どうも、細谷への尾根に入りそうだったようだ。葉が落ちていて周りの景色が見えるので
事なきを得た。この付近はのっぺりしたところで方向を間違え易そうだ。

【ヤブ尾根】 これはいかんということで、右側のコブに登り、稜線に出る。すると道の
様な跡がある。やはり稜線上を辿るのかぁ。と行くが、道のようで道でない。植林の
仕事道のようでもある。笹や低木を高さ20〜30cmのところで切り払ってあるのだが、
これがスボンの裾に引っかかったりして歩きにくい。右手はヒノキ植林が続く。
 645mピークの手前からは素晴らしい谷と785mピーク、電波塔の山頂が見える。
まだまだ距離がある。足元には所々に、紫と茶色を合わせたようなピカピカした直径
5〜10cm前後の葉が群生している。これがイワカガミだろうか。
 何度もアップダウンして、道を失い、植林に入ったり、岩を登ったりした。
地図を見て計画した時のあこがれの稜線歩きとはほど遠い歩きを強いられた。
 上乙見のおばさんの言うことを聞いとくんだったと後悔もするが、負けずに
この道だからこそ見られる景色もあるんだと打ち消す。葛藤の歩きであった。(^^;

【785mピーク】 緩い登りが続いてそろそろ785mピークだ。登るのが疲れたので
東側をトラバースしようとしたが、こちらは笹の急斜面。甘かった。登り直す。
てっぺんは立木が多い、黄色のプラ杭があるだけ。この半分ヤブのような歩きは
もう辟易したので、地図を見ると林道が東から直ぐ下まで伸びてきている。これこれ
と気を良くして左手にヤブを漕いで下りる。すると、まだ雪が残った白い道が現れ、
やっと普通の歩きに戻れた。

【遊歩道の展望】 落ち葉で地面が見えない。幅2〜3mの良い道だ。日陰にはまだ
大きな塊で雪がある。後で判ったが、これが仏主からのハイキング道である。やがて
鹿除けのネットが道を遮る。看板にあるとおり、ネットを開けて元に戻す。これを
過ぎると左手に素晴らしいパノラマが開けた。(冒頭の写真) 植林が続く深い谷と
遠望の山々が一望に広がる。疲れが吹き飛ぶ。そして電波塔も出てきた。山頂近し。
 ただ、残雪が多くて、シャーベット道の登りは堪える。前方に年輩のご夫婦がいる。
今日の山で初めての人である。上乙見林道終点から登ってきたという。
「悪い道やねぇ。」
「私も尾根沿いで、難渋しました。ここは何度目ですか?」
「初めてや。1月にも来たけど、雪で引き返したもんで。」
 この方は仏主ルートをまだ歩いたことがないようだ。
同じ道を引き返すということで、山頂への道標手前にあるもう一つの電波塔左手の
方へ行かれた。上乙見からのルートはこんな所についているらしい。これは判りにくい。

【ハーモニカ・ソロコンサート】 山頂への道標からは広い地道を最後の登り。
重い足を引きずり息はずませて登る。東屋があってその直ぐ上が山頂。やっと来た。
 先客はおばさん2人。何やらお話中のようなので、あいさつのみして、腹減ったので
すぐお湯を沸かす準備。そしておにぎりを頬張る。ぽかぽかしたいい天気だ。
アンダーシャツとシャツの2枚でも丁度良い。
 陶板の方位図があり、展望を確認。弥仙山・青葉山・八ヶ峰・北山・多紀...。
まさしく360度の眺め。あいにく春のせいか大江山や丹後半島の山は霞んでいる。
 カップ麺を食べ終わる頃、郷愁をそそる音が流れてきた。おばさんの一人がハーモ
ニカを奏でている。「知床慕情」「おぼろ月」等、30分近くのソロコンサートを聞く。
コーヒー片手になかなか良い時間を過ごせました。ありがとう。曲が終わると拍手を
しようかと思いましたが、すみません、聞き流してました。

【森林ふれあいロード】 「美山町のルートはまだ雪があって危ないそうよ。」と
一言残しておばさん達が先に下りた。その後、一人展望を楽しむ。
バスの時間もあるのでそろそろ下りるか。管理道や電波塔の周りを少し徘徊して
さっきの遊歩道を戻る。山頂での眺めも良いが、谷底から上下への広がりがある
ここの景色は素晴らしい。弥仙山から青葉山の方向になる。しばし酔いしれる。
 車が通れるくらいの広い道をぐんぐん歩き、785mピーク下を過ぎて東屋につく。
ハーブ園という道標に従ってずんずん歩く。歩きやすいが、山を切り開いた道だ。
シャクナゲの葉が目に付く。ベンチや、「長老山頂まで2.5km」という道標もある。
朽ちかけた幅広い木の階段をくねくね下りていくと展望台がでてきた。ここの展望は、
もう弥仙山などは手前の尾根に隠れて見えない。
小休止の後、下り始めて管理棟が見える。

【管理棟〜権現谷出合】 管理棟までは下から砂利道がついている。車で来れそうだ。
5〜10台くらいの駐車スペースがある。ハーブ園入園料\510。
 砂利道をくねくねと下る。これが結構長い。いくつか土砂崩れもある。車一台がやっと
通れそう。谷が見えるところでは、遥か下に仏主の家並みがあり、まだまだ高い所にいる。
バスに間に合うかなぁ。小走り。
 権現谷出合は山頂のDDI電波塔管理道路もここで合流する。綺麗な流れを右手に
とにかくバス停へ、これに乗り遅れたらもう無い。それでも清流で手を洗わせてもらった。
なんかお清めの水のような感じだ。思わず飲みたくなるほど綺麗で澄んでいる

【仏主バス停】 バス停は権現谷出合からは思ったより近くだった。
こちらにも下乙見で見たのと同じ様なルート案内板があった。
仏主バス停は和知駅からの折り返し点の様で旋回スペースがある。余裕をみて10分前
の時刻を目標に来たが、バスはまだの様だ。この辺り、民家はあるが人の気配がない。
川の音だけが響き、やがてエンジン音が混じってくる。

【バスの運転手さん】 マイクロバスの大きさのバスが来た。乗るのは私だけ。運転手さんに、
朝のバスで、下乙見から単独おじさんが登っていったが、会わなかったか聞かれた。
その方は「山の家」バス停で乗って来られた。ルートも時間帯も違ったようだ。
「山の家」バス停の近くにも例のルート案内板があった。山の家(細谷)ルートというようだ。
まだまだ楽しみな道が色々ありそうな山である。

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1997.4.5. BY M.KANE