桜の園、無念の公園化 北摂・大峰山へ 

山桜一筋  
雨、中休みの桜   
■目的地:大峰山(552.4m)<山域:北摂・兵庫県宝塚市>
■日にち:1999年4月10日(土)
■天気:雨 後 曇り
■同行者:日下部さん
■コースタイム:
  
 武田尾 発(9:30)〜廃線跡〜亦楽山荘(10:15-10:20)〜「桜の園」基準点(10:40)〜
 西の展望岩(10:45-10:50)〜山頂(11:15-12:05)〜山頂南の峠(12:15)〜
「瀧見の道」上の沢(12:40-12:50)〜「瀧見の道」〜「桜の園」東屋(13:10-13:25)〜
「エントランス広場」(13:35)〜廃線跡〜武田尾 着(14:10)

【大峰山】 六甲山の北東に位置する山、麓に武田尾温泉がある。
水上勉の小説「櫻守」(さくらもり)の題材となった「桜の園」が西麓にある。
 今日は雨。日下部さんとの1年振りの山である。こんな雨でホンマにやるんかいな
と思いながらも、最近雨の山もいくつか体験しているので態勢充分で武田尾駅で待つ。
武庫川渓谷の東には、白い煙のように靄を吹き上げてしっとりとした大峰山がある。
大きなリュックの青年が一人、改札に現れた。

【廃線跡の桜】 予報では雨が激しく降るようなことも言っていたので、様子見に
廃線跡を歩いてみることになった。僧川の鉄橋に咲く満開の桜に背景は大峰山。
雨のおかげで誰もいない枕木の列を歩く。瀬音が響く。
 トンネルを2つくぐって唖然となる私。いつもは、やり過ごしてしまいそうな細い
径が左手に現れる。しかし、今日は広げられた道に白い木の階段である。
 雨も止んできたのでもう少し行ってみることにする。

【なんでここまで】 沢には真新しい案内板が勝ち誇ったように立てられていた。
ここを「エントランス広場」と言うようだ。
「桜の園」周辺はすっかり公園化されてしまった。工事をしているのは知っていたが、
ここまでやるとは思わなかった。日下部さんと整備行き過ぎに憤る。あと数年程して
この道が自然に帰っていくのを待つしかないねという。
 以前のひなびた径が懐かしい。小説「櫻守」を片手に訪れる人も多かろう。その舞
台を彷彿とさせる径であったのに。前より安全に歩けるようにはなったが、訪れる
人の全てがマナーを守って、ゴミを捨てないようにしていただきたい。
武田尾渓谷  
武庫川渓谷を見る (約280mコブにて)
【桜とツツジ】 亦楽山荘も建て直してある。小休止の後、そろそろお目当ての桜が
見れるかなと「桜の園」へと登っていく。この天気では色も映えないが、過ぎたのか
早いのか桜の花は思ったより少ない。さらに登ってベンチの出来ている鞍部から西の
約280mコブへ寄り道して、武庫川渓谷を見下ろす。若葉とツツジや桜がほのかな靄で
ぼかされて春の色。そばにも雨に濡れたピンクのミツバツツジが、しっとりと咲いて
いる。
 引き返して少し登ると「桜の園」基準点に着く。ここから谷向こうの斜面を見るも
桜は少なめ。登るごとにツツジの花もまばらになってくる。寒さの戻りで遅れている
ようである。
 西の展望岩で小休止。三田市街の上に青空の穴が明き、期待に胸が膨らむ。六甲は
雲の中。さらに登るとツツジの花もなくなってきた。新芽のみ。

【風の山頂】 まだ花はなく冬の様相、わずかな新芽の雑木の山道をいく。頭上では
風が轟々と吹く。雲行きが怪しいと言われながらも、とうとうと来てしまった。
 誰もいない山頂には、すみれが雨に濡れて咲いていた。後で調べるとヒゴスミレ。
年々、山頂は踏みこなれてしまい、すみれが咲く場所が少なくなってきている。
どうか踏み歩くのは最小限にして大切にして下さい。
 お昼を何処にするか逡巡するが、この天気では適当な所が思い浮かばず、ここで。
私はおにぎり、日下部さんはウインナーつき。ワインもお裾分けをいただく。美味。
山の料理や携帯電話の電子メール、山のノートの話など。
 冷えてきた。セーターやジャンパーを着重ねし軍手を着けるが追いつかない。
ヒゴスミレ  
この花を守って下さい。 (山頂にて)
【谷の道】 違う道で下りたいというリクエストにお応えして、山頂東から南へ下り、
峠を亦楽山荘経由で武田尾へ向かうルートにした。計画では十万辻側の展望鉄塔まで
行く予定だったが、天気予報の「雷も混じり」というのが気になるのでパス。

【沢】 山頂南の峠から西は初めて歩く径。隠れた沢に山の中を感じ、いい雰囲気。
出てきたばかりの新芽に陽射しまで射してきた。カメラを持つ日下部さんは桜を撮る
チャンス到来と構えるが、立木などでベストコンディションとはいかないようである。
 やがて、ナメた沢の一枚岩に出る。ここは図らずも今回整備されたハイキング道の
最奥になっている。偶然の一致。「瀧見の道」と「遠見の道」に分かれている。
小休止。苔で覆われた岩たちもこの秋までその姿が保つだろうか。

【沢の高巻き】 道標に従い「瀧見の道」の方へ50m程沢を歩き、ほぼ平坦な巻き道を
クネクネといく。私はこの道が整備されていなかった時を知らないが、沢に迷い込ん
だら危険な径であったのだろう。伐採された斜面には苔むした岩がごつごつしていて、
山の本性を垣間見るようである。
 滝壺が眼下に見えるがやり過ごす。整備された道を思ったより長く歩いて「桜の園」
の東屋に着く。小休止。

【さくらの道】 この下は亦楽山荘。しかし、西へも尾根を巻くように真新しい道が
造られている。「さくらの道」とある。歩いてみると古い石垣があるので、昔から使
われていた径があったようだ。
 木の階段に何度か足を滑らせかけて廃線跡に近い「エントランス広場」に着く。
紅葉の若葉が覆う。「桜と紅葉を残して伐ったという感じ。」という日下部さんの
指摘に、人間の身勝手さを同感する。

【廃線歩き】 廃線跡に出ると4、5名の2グループが歩いていた。人出はそれだけ。
長尾の瀬の対岸にサギとカモがいる。よく川を見ると流れが変。赤白の棒が数本立つ。
ダムの調査だろうか。川底の石を浚ってあるのに気付く。
 次はまた別の山へと相談していたら武田尾駅に着く。ポツリポツリとまた雨が降っ
てきた。運良く雨のない時間に廻った山でした。次こそは晴天を。(^^)
長尾の瀬  
流れが変えられてました (長尾の瀬にて)

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1999.4.12. BY M.KANE