桜の園にツツジ咲く大峰山 山行記


 大峰山は六甲山の北東に位置する。
 水上勉の小説「櫻守」(さくらもり)の題材となった
「桜の園」が西麓にある。
島田さんから山頂を西へ抜けて武田尾へ下る道も良いと
奨められていたし、この「桜の園」を一度見てみないと
ということで出発。
 二週間ぶりの静かな春の山旅をと思っていたが...。
 写真は「桜の園」基準点付近からの眺め 97.4.12. 
 
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■2.5万図:武田尾
■日にち:'97年4月12日(土)
■天気:晴れ 春霞
■同行者:単独
■コースタイム:
  自宅発(12:45)〜十万辻上の登山口着(13:05)

  登山口 発 [375m](13:15)〜展望の鉄塔(13:30-13:35)〜山頂(13:45)〜
  「桜の園」基準点(14:20)〜亦楽山荘への分岐(14:25)〜亦楽山荘(14:35)〜
  廃線に合流(14:55)〜武田尾(15:00)〜長尾山荘(15:50)〜十万辻上 着(16:10)


【春霞】 3月からの雨続き週末で久しぶりの晴天。すっかり春になってしまった。
五月山連山や妙見山は霞んでいる。県道脇の山肌には、なんといつの間にか
鮮やかピンクのミツバツツジが咲いている。いつの間に...。(^^;

【春風】 車の窓を開けて走る。若葉のにおいを運ぶ風が心地良い。
十万辻上の登山口から出発。若葉が肩に擦れる狭い山道。薄暗い雑木林の向こうに
盛りを少し過ぎた桜が日を浴びて枝を広げる。松葉のにおい立つ風が通る。
 峠のようなところで道標に従い右の急登に入る。ここまでに10人とすれ違う。
以外と人が多いなと感じる。

【展望の鉄塔】 松の混じる雑木林をえいっえいっと登れば、今日唯一の展望
ポイントの鉄塔に着く。以前に増して周囲が伐採されてなお良い眺め。しかし、
今日は霞で北は大船山、南は大平山が白いシルエットになっている。
 ここは十字路になっていて南北に下りる道がある。南へはまだ行ったことがない。
真っ直ぐ西の山頂へ向かう。いつもの静かな雑木林の中、緩いアップダウンを
2、3回繰り返し左へ大きく曲がると安倉山への分岐に着く。南が安倉山方面。
シジュウカラだろうか、「ツピー、ツピー」とヤケに元気に鳴いている。
ここから1分もかからず、見慣れた山頂。2年ぶり。板に手書きのルート図がある。

【ピンクの雲の中】 山頂は灌木で展望がほとんどないので、さらりと通過。西へ。
12才位の単独少年。珍しい。この道はさらに静か。緩やかに下りる。10分程すると
急坂。親子連れ。すぐ平坦になり、一人が林の中で昼寝。みんな春の山を楽しんでい
るんだなぁ。このあたりからミツバツツジが出てくる。今まで目立った花がなかった
ので、一気に春を感じる。若い夫婦が通る。ここにも春を感じる。(^^;
 14:05西に傾いた日を浴びて若葉とピンクのミツバツツジが綺麗だ。
まるで、ピンクの雲の中を漂っているよう。こうして、宝塚市「桜の園」基準点と
彫り込まれた標石のある十字路に着く。ここから南には、霞んだ尾根肌に桜がほっ、
ほっと咲き、手前の強烈ピンクを前景に素晴らしい絵を見せてくれる。
 夫婦連れが3組通り過ぎる。確かにこんな良い眺め、ポカポカした陽気。嫁さんに
分けて上げたい。(残念ながら、彼女は明日の川西市源氏祭りの準備である。)

【亦楽山荘】 「えきらくさんそう」と読みます。実在された桜博士・笹部翁が
「桜の園」を守るために建てた仕事小屋である。
 乱舞するミツバツツジに目を奪われつつ、鞍部の分岐に着いた。左(南)が亦楽山荘
という道標がある。前方がピークの様になっているので、ちょっと行ってみる。
 暖かい日射しの谷の中に緑色した武庫川がザワザワと流れるのが見える。その脇に
茶色の廃線跡が沿う。なにやら小さい散歩の人が、かなり行き来しているようである。
振り返ればのっぺりとした大峰山が眼前に広がる。
 元に戻って、斜めに下り、亦楽分岐は小広場。「桜の園」跡のようだ。10人程が
休憩中。左手の沢の方に少し下りていくと。小さな小屋がある。亦楽山荘だ。今も
草刈りなどの作業具置き場などに使われているようである。静かにツタにからまれて
いるのかなと思っていたら、地味な観光地の印象だ。

【桜守の道】 亦楽山荘から少し下りて、沢を渡る。上流に滝が見える。高さ5m位。
ハイカー2人が沢の岩の上を歩いて下りてきている。尾根をちょっと登って沢沿いに下る。
所々に古い石段があって、小説を思い出す。弥吉と園もこの道を歩いたんだろうなぁ。
現実と架空が入り乱れる。沢越しに見上げる尾根肌は、新緑と山桜の茶色の新葉そして
淡いピンクの桜でこれまたのぼせあがるほどの景色である。

【トンネルの枕木】 10分ほど下ると廃線に合流。たくさんの人出である。
「こんなん、不親切やねぇ。」とおばさん達が話している。どうも、亦楽山荘への
取り付きの道標がないのが不平らしい。私はそれで良いと思った。静かにしておいて
あげたい。武田尾側から数えて2つ目のトンネルである。
 ガイドブックにはよく懐中電灯持参と出ているが、点灯している人は誰もいない。
それどころかアベックも多い。最近、いろんな所で紹介されているせいだな。
 暗い中、大きめな砂利と枕木を踏んでいると、田舎の鉄道を歩いた時を思い出す。
実家の近くが鉄道で、その上をよく通ったものだ。前方の半円の明かりに着くと
子供の頃にタイムスリップするのでは...という錯覚を覚える。
 しかし、出てみるとバーベキューをしている河原と観光地のような人出の現実が
待っていた。振り返る山が淡い春化粧なのがせめてもの救いである。

【お返しの単調舗装道】 武田尾から馳渡山(289.5m)にも登って大峰山を眺めようと
計画していたが、取り付きを見逃してしまい、車道を戻ることにした。
 このコースは当初からの予定であったが、存分にミツバツツジと桜の山を堪能した
後ではかなりの苦痛だった。花は咲いているものの落差が大きすぎる。1時間強の
辛抱でやっとこさ車に辿り着く。沢音を聞きながらの気が遠くなるような復路だった。
 オマケに、道脇で足を投げ出して休んでいたら、片膝を立てたままにして冷えた
のか、左のすねがつってしまった。こんなの何十年ぶりだろう。久しく山に入ると
いろんなことがあるもんだなぁ。(^^;

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1997.4.16. BY M.KANE