8/13 朝6時の薬師峠 左奥が黒部五郎岳 右に北ノ俣岳 景観の写真集 花の写真集 |
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■目的地:黒部五郎岳(2839.6m) ■日にち:1999年8月10日(火)〜 8月13日(金) ■天気:早朝晴れ後曇りと小雨 ■同行者:俊一 ■アクセス:川西 発(9:15)=(名神・北陸 道)=富山IC(15:30)=折立 着(17:30) ■コースタイム: 第1日 8月10日(火) 折立 テント泊 第2日 折立 発 7:15 8月11日(水) 太郎平 着 11:50 薬師峠 テント泊 第3日 薬師峠 発 4:45 8月12日(木) 北ノ俣岳 7:35 黒部五郎岳11:35-11:40 北ノ俣岳 14:30 太郎平 着 15:50 薬師峠 テント泊 第4日 薬師峠 発 6:35 8月13日(金) 折立 着 10:10 亀谷温泉 11:40-13:05 自宅 着 19:00 【夏山】 前々から憧れていた黒部五郎岳。というよりも北アルプスそのものが 遠い存在になっていました。が、俊一がどういうわけか、この夏は北アルプスに行き たいと言いだしました。渡りに舟、なんと親孝行な子なんでしょう。(^^) ひと月ばかり前から、地図、雨具、テント、シュラフ、フリーズドライ食料などを 買い揃えて楽しい計画三昧の日々。 【第1日・立山路へ】 名神で少し渋滞の後は、順調に富山入り。金沢あたりで 白山が遠望できないかなぁと期待していたが、山の方はずっと重い雲がかかっている。 富山ICを出てガソリンスタンドで給油、有峰への道を尋ねる。「立山公園」の 看板を頼りに小見(おみ)まで行ったらいいと教わる。そおかぁ、この辺りでは立山が メジャーなんだなぁ。途中のコンビニでおにぎりやジュースを仕入れる。 【有峰林道】 亀谷温泉の前を通り林道へ。車止めが少し開いていて監視員もいない。 少し疑問を感じつつも通り過ぎる。工事中のようで結構荒れている。高度を増して 心細くなるがゆっくりと進む。作業から帰る車とすれ違う。怪訝そうな顔。 そろそろ有峰湖の下かという所で前方にバリケード出現。そう、有峰林道小見線は 通行止めだったのです。ここまで来て向こうへ行けない口惜しさ。車から下りて どうにかならんかと、チェーンを上げて車が通れる高さになるか見てみる。そこへ 幸運にも向こう側から作業車がきた。「ホントは通行止めやでぇ、よう来れたなぁ。 他県ナンバーやから、」と親切にもチェーンを持ち上げて通してくれた。ありがとう ございました。一転してきれいな舗装道になり、いよいよガスが立ちこめてくる。 みなさん、林道情報はきちんと確認して出かけましょう。基本ですね。(^^; 【折立】 前方に縦列駐車の車が見えてきた。山奥なのにおびただしい車である。 80台程か。15年前、先輩に連れられて来た時の面影が残るテント場やバス停がある。 満車に近いが、たまたまバス停横に空きがあったのでそこへ入れる。受付の小舎は 営業時間を過ぎていて閉まっている。テントは5張りほど。車の割に少ない。好きな 場所を選んで俊一とテントを張る。今日は事前練習も兼ねてのテント泊。晩飯はおに ぎり。暗くなると寝る生活の始まり。炊事場有り。トイレは水洗。公衆電話なし。 【第2日・朝焼け】 4時半頃起き出す。夜中、寒くて何度か目を覚ます。車中泊の 人だろう大きなリュックを担いで歩き出す人がいた。俊一はまだ寝ている。 だんだん空が白み、朝焼けが林の上に広がる。昨日のガスが嘘のように晴れている。 静かな山中に小鳥のさえずりが清々しい。朝食後、リュックの中身を確認して詰め直 し、テントを撤収。 既に登山口は人が増えてきている。大きな木陰の中をいよいよ山道へと入っていく。【登り】 清々しい林の中の登りはリュックが重い。足よりも肩に堪える。 汗が噴き出し15分から30分間隔で小休止しながら、よいしょ、よいしょと登っていく。 ブナやダケカンバなどの林は、山の香りがぷんぷんとしてきて心地よい。足元には ツルリンドウがほいほいと咲いている。もう秋の気配。 三角点で頭上が開け、登る方向の道が一望できるようになる。いったん下って また登る。振り返ると眼下に有峰湖が姿を現した。しかし、雲が流れて次第にガスが 忍び寄る。裸地化の痛ましい登山道の脇には、精一杯に高山の草原が広がってきた。 【太郎平】 ガスに阻まれて、そろそろ見えそうな薬師岳や太郎平小舎は全く判りま せん。東の北ノ俣岳方面は緩やかな斜面が尾を引くが、頂きにはやはり雲。 既に花期が過ぎたお花畑には、チングルマの羽毛の穂とミヤマリンドウが主役。 ふわふわと繁るツガザクラの葉。ウグイスの声。10:00、折立から5km、太郎平3km。 10:30、雨粒が落ちてきたのでカッパ上とザックカバーを出す。 正午直前に小舎に着く。一応、無事の電話を入れる。 【薬師峠のテント場】 小舎の前から薬師峠へと向かう。雲が覆い被さった黒部の 谷は濃い緑に包まれている。側は広々とした草原。小舎から薬師峠は思ったより 長かった。テントはまだ5張り。場所を決めてさっそく設営。また、雨が降り出す。 テントの中に逃げ込んでしばらくすると、30程のテントが次々とできていた。水場ま で雨の中に行くのがおっくうとなり、とりあえずクラッカーと水戻しの餅でしのぐ。 俊一はテントの中ではもの足りず、小雨の中、外堀つくりにせいを出す。雨が止ん だうちに沸かしたお湯で牛丼、15時。この天気ではとても薬師平など行く気もせず、 16時、ゴム草履を履いて太郎平小舎側の丘に上がってみる。水玉を付けたチングルマ が雲に隠れた黒部の谷をバックにほうほうと咲く。崖にはオンタデが群生して地味な がら白い花をつけていた。 19時、暗くなってきたので寝る。 【第3日・星空】 3時過ぎに起きる。真っ暗。テントの外に顔を出すと満天の星。 これは俊一にも見せてあげないといけないと、揺り起こす。彼は三つ四つの流れ星を 見た。「早くてとても願い事が言えないよぉ。」と贅沢な不満。残念ながら私は 今日のリュックの中身を吟味していたので、お目にかかれなかった。 朝飯のあとテントは置いて、デイバックで出かける。4:45発。うすく明けかけた 空の下には、憧れの黒部源流の谷が目の前に広がる。今のところいい天気。 【朝の高原歩き】 支度人が多い太郎平小舎を過ぎて、朝日が低く射し込む太郎山へ。 清々しい高原散歩である。水玉を付けて朝日を浴びたチングルマやツガザクラの葉。 俊一は左足が少し痛いようだ。成長痛らしい。ゆっくりと歩く。 振り返ると薬師岳が大きい。周りはゆったりとした高山植物の草原。実に心地よい。 カメラを構える人もちらほらの道は、やがてゆっくりと登りに入る。 【北俣ニセピーク】 ハイマツの中に隠れてゴセンタチバナやハクサンシャクナゲの 残り花が咲いている。登っている間にガスが広がり、ピークに立っても視界なし。 腰を下ろして休憩していると雲が開いて素晴らしい展望が広がった。薬師、赤牛、 水晶、鷲羽、三俣、槍、五郎、笠。北アルプスの山が一堂に会す、これがこの山行で 唯一の展望であった。 あきゆきさんのレポートにもあるように、ここは北ノ俣岳ではなくてニセなのです。 眼前にのっぺりした緩やかな稜線を従えた北俣が居座ります。俊一の足に気遣い、小 休止を頻繁に入れる。緩やかな道、花の写真を撮りながら歩く。 【神岡新道】 やがて踏み跡がずいぶんとササに覆われた感じの神岡新道が合流。 ここから山頂へは10分。山頂は高山蝶保護の看板。道標に「黒部五郎へ荒天時、 引き返すなら今のうち」とあり、実に重みのあることばだ。俊一に先へ行けるかどう か聞いてみるが、負けず嫌いの所があり、止めるとはいわない。 小休止の後、ガスの中を下りていく。7:50、とうとう雨が落ちてきたのでザック カバーと雨具上衣を出す。 【赤木岳】 緩いアップダウンを2つほど過ごすと赤木平が広々とした尾根をおろす。 8:10 赤木岳の横を巻く。その先は大きな岩ゴロピークを登って下りる。今まで高原の 道ばかりだったので、変化があって良い。が、小雨の中。ハイマツの覆い被さる道を 下りていく。緩いアップダウンは続く。ずっとガスで展望はない。それでも行き交う 人は意外と多い。 9:10 中俣乗越、自分の体より大きいリュックを背負う若者たち2、3パーティが 通り過ぎる。か弱そうな女性もいて隠された体力に感心する。 9:40 五郎手前の2578mピーク。 【黒部五郎の肩へ】 辛い登りが待っていた。ガスに覆われた盛り上がりが前方に 現れて、もう良いかなと登り着くとその先にまた盛り上がりが現れる。これが2度や 3度ではない。何十回も繰り返されるように感じ。小雨でずぶぬれになり、足の疲れ に加えて精神的にとても辛く感じた。先を歩く俊一も気力が抜けてしまったようだ。 やっとトラバース状の道となり肩に辿り着く。数名が休憩。山頂を往復する人の リュックが多数置いてある。山頂へはまだ15分程の登りが残る。俊一は座り込んでし まい、歩こうとしない。ここを無理に山頂へ連れていくのは、あまりに酷、しかし、 目と鼻の先まで来ているのにあきらめるのも、後々本人の悔いが残ろう。 自分で登る気になるまで待つことにする。 【山頂へ】 やっとの思いで辿り着いた山頂はやはりガスの中。ほとんど見えない。 この頂上からの大展望を楽しみに計画したが残念。俊一には、頑張った結果がこれだ けとは申し訳なく思う。カールの崖は、ガスの中に消える。晴れていたらさぞかし 素晴らしい景色だろう。証拠の写真を撮って下りる。 肩で昼食をと思ったが、雨でおちちつかず、ひとまず下りて様子を見る。登って きたところを、濡れた石に滑らぬよう慎重に下りる。急な下りが続く。 小雨は降り続き、落ち着くところがないので、30分毎の小休止の度にクラッカーや ゼリー、蜂蜜、水等を補給しながら歩くことになる。疲れがたまらないように定期的 に休憩を入れて、エネルギーを補給するようにつとめた。 【何でここまで】 終始の小雨に対して、レインウェアには助けられた。ハイマツの 覆い被さる道では水玉がスボンに着くので、下衣をはいたがこのおかげで冷えること もない。しかし、靴は既に浸水してぐちょぐちょ。おまけに右かかとに靴ずれの感覚。 左から殴る風は眼鏡に小さい雨粒を付けて視野をさらに遮る。ただでさえガスで 狭い視界に拍車をかける。窮屈に感じながらの歩きである。何が楽しくて自分は今、 ここにいるのだろうかという思いがよぎることもあった。 【心理戦】 耳にゴロゴロの音。えっ、雷 ? 立ち止まって耳を澄ますが聞こえない。 しばらくしてまた、ゴロゴロ。今度はフードを脱いで耳を澄ますがやはり音はない。 こんなのっぺりした稜線で雷となればひとたまりもない。雷に打たれた親父を残して ひとりぼっちで太郎平小舎へ歩く俊一の姿を想像する。そうなってはならない。 一応、時計など金目のものを隠す。眼鏡はそのまま。(^^; 疲れたのか、フードが風になびいての音を雷に聞こえたのかも知れない。空耳なら それに越したことはない。 【復路】 14:00。あれっ、まだ赤木岳?、さっき通ったと思っていたのに...。 道標に愕然となる。疲れと天候とアップダウンが頭の中の地図を狂わすのだろうか。 単独行のおじさんと相前後して歩くが、この時間、それ以外に出会う人はいない。 俊一に、ここを登ったら北俣だからと勇気づけて登る。しかし、またしてもその先 にのっぺりとしたピークがのしかかる。力を振り絞って14:30 北俣山頂。誰もいない。 さぁ、ここまで来れば帰ったも同然。と、元気を出して歩くがニセピークまでさえも 長く感じる。 ただ歩くのみの復路である。お花畑もじっくりと見る余裕なし。ニセピークでも クラッカーを頬張り小休止、後は下るだけだからと勇気づける。下りには特に気をつ けて歩くよう、声をかけて下りる。ここまで来たのだから、けがは絶対しない。 【太郎平小舎】 北俣からは長い。実は復路の半分なのである。小舎に着いたら うどんだぁと、今度は食べ物でつりながら歩く。石ころのない平らな地道は足に 優しいく心地いい。 やっと、ガスの向こうに小舎の影が見えてきた。小舎では既に夕食の配膳が始まり うどんはなし。カップ麺も売り切れてなし。代わりにチョコレートとカロリーメイト、 ウイスキーを買う。公衆電話で自宅に無事を伝える。 【薬師峠】 小舎から峠への軽い登りがとてもきつかった。俊一がちゃんとテントが 残っているか心配するが、健在。16:30 テント着。直ぐに俊一をテントに入れ、濡れ たものを袋に仕舞う。水を汲んできて晩飯の支度。ピラフと味噌汁。暖かいので生き 返る。予想に反してまだまだ元気な俊一にひと安心。既に暗くなりかけており、歩き にも疲れたので19:00頃に寝る。 【第4日・朝の眺め】 寒さもあり、やはり夜中は12時過ぎに目を覚ます。さもあり なんと小舎で買っておいたウイスキーをふた口ほど含んで暖まるのを待つが、あんま り効果なし。俊一はよく眠るが、私のシュラフは薄かったようだ。 4時頃から周りは出発の準備でそわそわしてくる。今日は下りるだけなのでもう少 しゆっくりしよう。ゴロゴロして5時頃起き出す。残りの餅と味噌汁が朝食。撤収。 【下山】 太郎平小舎の前で小休止。ちょうど7時になり、小舎の間で天候の情報 交換をしているところ。東に広がる北アルプスの山並み。今度はいつお目にかかれる のだろうか。名残惜しいが、俊一に写真を撮ってもらって帰路に就く。 しばらくは眩しい青空だったが、いつもの如くガスが出てきた。リュックが重い。 今日も登りの人は多い。細い道では、何度も待つので思うように下りれない。しかし、 大きなリュックを担いで大汗かいて登る人たちを見ると、2日前の自分たちを見る ようで、思い出をかみしめるように待って見送るときがしばしば。 賑やかな折立には、バスが2台停まっていた。車は鳥の糞でいっぱい。荷を運ぶ ヘリコプターが大きな羽音で飛び立った。 【白樺ハイツ】 帰りはきちんと、有峰林道小口川線へ入る。途中で視界数mのガスの 中となるが、高度を下げるにつけ開けてくる。地元のラジオはお盆の帰省情報。 亀谷温泉の白樺ハイツに立ち寄る。真新しい立派な建物。入浴のみで大人\600、 こども\300。客は多くなく、湯船もゆっくりと入れた。実に心地よい。やっぱり山の 後の温泉は最高だ。食堂で親子丼定食。お土産を買って後にする。雨が降り出すが、 富山平野へ出ると止む。 高速はスピード取り締まりのパトカーがいて、おとなしく走るが、大きな渋滞もな く思いのほか、短時間で大阪まで無事に辿り着く。高速代 \8350(含む阪神高速)。 天気はもうひとつでしたが、親子に思い出深い山となりました。