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  猪名川町周辺の山ハードハイキング
  特選ショートコース その4

竜王山南尾根・丸山南尾根 環縦走 

  妻恋地蔵さんからご提供いただきました。 ありがとうございました。
  妻恋地蔵さんのE-mailアドレスは hirotani52@nifty.ne.jpです。  (2002.4.7.掲載)

 
 地図を眺めると、猪名川町境に連なる大尾根から派生して延びる、魅力的な尾根が幾つかあります。それらを拾って歩いてみようというのが「特選ショートコース」なのですが、その最後にこの二つの尾根を選びました。
 二つとも、猟期にハンターが入る程度で、ほとんど人が歩かない尾根でした。もちろん良い道があるわけではないので、歩く苦労はあるのですが、逆にゴミやテープなどという興ざめなものもなく、雑木林の美を心ゆくまで楽しむことができました。
 
山 域 北摂山地
 
山行日 2002(平成14)年3月31日[日]
 
同行者 迷犬ハナ
 
天 候 晴れのち雷雨のち曇り
 
時 間
 
槻並・たなかかきうち橋9:30・・・・10:00二五一m山・・・・10:20三二九m山・・・・11:05三八四m山・・・・11:45竜王山(昼食)12:15・・・・12:30宮峠・・・・12:50四ツ辻・・・・13:25堂床山・・・・13:37丸山・・・・13:55雷雨避難14:30・・・・14:40四四一m山・・・・15:00三七三、四m山・・・・15:30二七七m山・・・・16:10三二一、一m山・・・・16:50鍋坂の峠・・・・17:15槻並・たなかかきうち橋
 
 
◎竜王山へ
 
 槻並(つくなみ)の田中庭園の先、「たなかかきうち橋」前に車を止める。橋を渡って細い車道を歩くと、草道が右へ分かれる。そこで枝打ちをしていたおじさんに登り口を尋ねた。草道を槻並川の上流の方へ少し歩き、適当な斜面から取り付けとのこと。
 お教えのとおり、小さな資材小屋の脇から登り始める。道はない。藪の中の歩きやすい所を選んで、上へ上へと登る。『猪名川町全図』には、南尾根の末端から破線路が記されているが、かなり前に廃道となったようだ。枝がうるさい中を、かすかな踏跡を拾って登り続ける。新芽が吹き出したばかりの雑木林に、ミツバツツジの花が赤いアクセントをつけている。
 二五一m山を越えた先に小さなザレ場があり、西側がわずかに見えた。三二九m山の頂上から、木の間ごしに竜王山(りゅうおうざん)と三草山(みくさやま)が見える。この南尾根の登りは、竜王山を目指して北へ北へと進めばよいので、読図の苦労はない。しかし、この尾根を下降するとなると、道が明瞭でないだけに、読図が少し難しいだろう。
 三七〇m等高線山に登り着くと、関電の巡視路に出た。巡視路は西の尾根から登って来ているようだ。とたんに歩きやすくなる。それも三八四m山手前の鞍部から西へ分かれて行った。尾根上になお続く山道は、三八四m山には登らず、北東の鞍部へ巻いているようだ。
 三八四m山の頂上は、静かな雑木林の中。下り立った北東の鞍部には、「SHIMANO」と書かれたテープが張り巡らされている。そこから歩きやすい山道を進むと、裏山林道に出た。つい先ほどオートバイが通ったとみえ、かすかに排気ガスの臭いがしている。
 裏山林道から竜王山の南西面に取りつく。藪の薄い所を選んで登って行く。石垣のしっかり残った小さな炭焼窯の跡があった。蹄の地響きを立てて、鹿が急斜面を走りまわっている。ハナも色めき立って追いかける。
 岩が出てきたころ、急斜面も終わり、桧の植林に入る。ここには見覚えがある。去年の三月二〇日、三草山から愛宕山(あたごさん)まで縦走したときに通った所だ。すぐに竜王山頂上。小さな岩の上に座って昼食とする。
 
◎丸山へ
 
 宮峠(みやとうげ)へと歩きやすい道を下って行く。去年歩いたときには、テープが幾つかあったように覚えているが、今日は一つも見られない。どなたか心ある人が取ってくれたのだろう。
 宮峠から四(よ)ツ辻(つじ)まで、今日は尾根筋を歩かず、南西側斜面を縫う巻道を通ることにする。この雑木林をたどる巻道は、道幅が広く高下も少なくて、まことにすばらしい。昔、薪炭などを運ぶトラックや荷車が通った道なのかもしれない。マウンテンバイクの好きな人なら、たまらない所だろう。
 一箇所、尾根を歩く部分があり、剣尾山(けんぴさん)がよく見える。去年、マウンテンバイクのおじさんに出会った所だ。再び南西側斜面を縫うようになると、少し枝が出だしたが、歩く妨げになるほどではない。昨年、尾根筋を忠実に縦走したときは、宮峠から四ツ辻まで五〇分かかったのに、今日は犬と戯れながら歩いて二〇分で着いてしまった。やはり道は偉大だ。
 四ツ辻から、掘れた古い山道を登って行く。石や木の幹に赤ペンキを塗ってあるのはいただけない。登りが急で、暑い。シャツ一枚になって歩く。送電線の鉄塔を過ぎたころ、西側の空が暗くなり、ゴロゴロと不気味な音が聞こえだす。寒冷前線通過のため雷雨に注意と、朝の天気予報で言っていた。府県境尾根に上がると、ますます雷鳴が大きく聞こえてくる。
 堂床山(どうとこやま)で休憩もとらず、丸山(まるやま)へ急ぐ。丸山でも休まず、南尾根のハイキング道を追われるように下りる。
 
◎槻並へ
 
 ハイキング道が南尾根を離れるところで、危険な尾根筋の縦走は止めて、このまま林道へ下りようか迷ったが、雨も降っていないことだし、最初の予定を変えるのも癪なので、縦走続行と決める。
 ハイキング道と分かれた先の南尾根は、歩きやすい道こそないが、新旧の切り開きがされているので、歩きにくいというほどでもない。
 最初の鞍部に下りる手前で、辺りが急に暗くなり、雷光が閃きだした。雨も降りだした。いつもは好き勝手に藪の中を走りまわる暴走娘も、異常を感じて私の傍から離れない。これはヤバい。尾根にいてはいけない。鞍部から東の急な谷へどんどん下りる。炭焼窯の跡が点在する美しい谷だ。二俣になった小さな植林で雨宿りする。水筒に水を補給する。
 三〇分ほどで雨も小降りとなり、空も明るくなった。雷鳴も遠のいたので、南尾根へ戻る。鞍部まで登り返す足が重い。濡れた足が冷えて、四四一m山への登りも苦しい。
 三七三、四mの三角点は、四方に石が置かれているので見つけられたが、標石は埋もれる寸前となっている。次の山が目前に見えている。この南尾根は、小山が連続しているので、高下が激しい。しかし、そのおかげで読図はたいへんらくだ。次の山、次の山が目の前に現れるので、それを目指して歩くだけでよい。 
 二七七m山手前の鞍部への下りで、小さな岩小屋があった。一人分の乾いた寝場所がある。夫婦喧嘩をして家を追い出されたら、ここに逃げ込もうか。ふて腐れてやけ酒を飲む自分の姿を想像しながら、小さなケルンを積んだ。鞍部には小さなヌタ場があり、水が溜まっている。二七七m山の登りから、鉈の新しい切り開きが加わった。切り口が鋭く恐ろしい。二七七m山の次の鞍部には、地図どおりしっかりした峠道がある。
 枝が出て少し歩きにくくなった尾根を登って行く。西側の県道から、間近に車やバイクの音が聞こえる。自分はこんな藪の中で今何をしているのだろう、俗界に迷い出た仙人の戸惑いをふと楽しむ。三二一、一mの三角点標石は、埋もれかけていて見つけにくいが、掘り返された土に汚れて、確かにあった。
 三〇二m山から南の急な尾根を下りる。切り開きが少なく、たいへん歩きにくい。最後に深い笹の猛烈な藪を漕いで道路に飛び出した。ぴったり峠の所、水道タンクの横だった。東側の集落で聞くと、この道は昔、「鍋坂(なべさか)」と言ったとのこと。今は木津(きづ)へ通じる立派な道路となっている。ハナに紐をつけて、「たなかかきうち橋」の車に帰った。 
 

 妻恋地蔵さんの「深山をゆく」  

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2002.4.7. edited in HTML by M.KANE