ラーメンとは何か、ラーメンの魅力2008.7

ちょっと前に(讃岐)うどんに凝っていたが、今はラーメンである。うどんは洗練されたファストフードである。讃岐うどんの食感と適度にうまみを含んださっぱりしただし(つゆ)、このシンプルな料理は体にやさしく実に良かったが、やはりラーメンと比べるとパンチが足りない。
近頃はつけ麺ブームで、どの店もあからさまに新メニュー・なんとかつけ麺なんてのがあったり、汁なしラーメンがあったりして、またそもそも支那そばとか中華そばなんて言い方もあるから、ラーメンの定義というのは実に曖昧である。ラーメンとは「スープに茹でた中華麺を入れた日本の料理」(Wikipedia)とのこと。中華麺とは鹹水(かんすい。アルカリ水)入りの小麦麺のことで、鹹水を使わないパスタやうどんやその他のアジアの麺とは異なるし、中華麺とはいっても中国ではその独特の風味があまり好まれず、麺の腰も重視しないことからあんまり一般的ではないらしい。つまり中華麺からして日本独特のものである(僕は韓国人ではないため、日本が元祖とは決して言わないが)。さらに言えば、ラーメンはいわゆる中国の麺料理とは異なる。厳密な区別はできないけど、基本的な方向性として中国の麺料理は単体のスープに、柔らかく味も腰も無い麺と、味のついたしっかりした具を入れた料理であって、日本のラーメンのように、スープと麺が一体化したものに脇役・引き立て役としての具を入れた料理とは異なる。日本のラーメンのスープは醤油味噌塩とんこつ及びその複合と多様であり、しかしスープ単体では存在しえぬし、それぞれのスープに合った様々な太さの、少しもしくはかなり腰のあるストレートもしくはちぢれ麺を必要とする。その一体感が日本のラーメンの中心であり、液体であるスープと、その担体であり実(固体)である麺を同時に食すグルーヴ感を楽しむのがラーメンの醍醐味であり、おそらくほぼ全てのラーメン好きはそれを求めてラーメンを食べてしまうのである。この一体感・グルーヴ感は、おそらく他の食品では体感できないものである。
僕は夢中で食べ、気がついたらもう食べ終わってしまったというラーメンを求めてまた新しい店に赴き、多くの場合軽い失望感を覚え店を後にするということを繰り返してしまう。これは薬物探索行動みたいなもので、一種の中毒なのかもしれない。


100店くらい食べてみた2008.9

ここ4ヶ月くらい、週2〜3回はラーメンを食べたと思う。とにかく新しい味を探していた。
でもどうだろう?もういいかな?ラーメンばっかり食べてたら絶対に体に悪いと実感する。すごくうまいラーメンっていうのも、なかなか無いしね。これまで食べたのを、大きく超える驚きっていうのは、たぶんもうほとんどないと思うし。ささやかな経験から。

1.街のラーメン屋は、やっぱり大したことがない

やっぱり近所、いつでも行ける店がうまいと良いのだが、昔ながらの店はそういう味だし、落ち着いちゃってるから味の追求なんてしないし、ただ同じものを供給してれば商売成り立つし、店のオヤジも歳だから、進歩というものはなく、味は当然凡庸である。

2.とんこつはうまいけど、大ハズレもある。醤油と塩にハズレなし

どうも九州の人は、とんこつのあの独特の臭いが必要っていう人もいるし、とんこつ嫌いの人はあの臭いが嫌いなんだと思う。僕は味は好きだけど臭いは嫌いなので、臭いとんこつの評価は低い。臭みなく適度にこってりしかし重くなくうまみの出たとんこつスープが理想と考える。そういう観点からするととんこつは当たり外れが大きい。逆に醤油ラーメンでまずく作るのは難しいだろうね。塩は味気なくなるかもしれないけど。

3.またとんこつ醤油かよ

印象に残るラーメン→コッテリ→とんこつのマイルド・コク+醤油の風味ということで安易なとんこつ醤油がやたら多いが、失敗するとクドいだけのラーメンになる。最近のラーメン屋は大抵そうだ。チェーン店なんてほとんどとんこつ醤油だね。そういうのをたくさん食べると、そろそろ醤油・塩の繊細なうまさに出会いたくなる。最近はプラス魚介・鰹節系が流行中。というか、それくらいしか風味って無いもんだね。

4.みそラーメンはどこも同じ味

みそラーメンは個性が出にくいね、みその味が強くて決まっちゃってるから。失敗も少ないけど、新しい味という意味ではつまんない。むしろ塩・醤油の方が個性が出る。

5.やっぱり有名店はハズさない

行列とプラセボ効果もあるかもしれないけど、やっぱり有名になるだけあってうまい。ただ味が落ちるとか、みんな真似しちゃうから新鮮味が無いとか、そういうのはあるね。

6.チェーン店に大成功はないが手堅い

昔はラーショを初めチェーン店はダメ、街のラーメン屋もダメ、新規開店で凝ってそうなラーメン専門店をと思ってたけど、いろいろ食べてるうちに、例えばラーメンとして考えればリンガーハットはあれだけの店舗で同じ味で誰が食べても普通にうまいと思うものを供給するのは偉いと思い始めた。むしろ個人でオヤジがテキトーに作ってる店の方がひどい場合がある。チェーン店はまずければ全部つぶれるし、やっぱし一定以上にうまいから店舗が増えたんだろうし、、味のブレも少なく、また万人向けの無難な味になっているし、店舗が多くて立地条件も良く開店時間も長いし回転も良いから便利である。

7.所詮中華屋のラーメン

中華料理店みたいなので片手間に作ってるのと、ラーメン一本で勝負してる店ではやっぱり違うよね。サイドメニューくらいはあっても良いかもしれないけど、僕はギョーザなんてまず頼まないし。ただ、もちろんそこらのラーメン専門店よりうまい中華屋も、中華街の店も少数ながらあるとは思う。尚、ラーメン**という店名でも入ってみるとただの中華屋ということはある。まぁ店構えでわかると思うが。

8.地方に行く必要なし

都内ならあらゆる地方のうまいラーメンが進出してるし、むしろうまいラーメンなら東京で一旗揚げようと考えるのが普通なので、都内で食べ歩けば日本ひいては世界で一番うまいラーメンが食べられる。

9.基本メニューでいい

僕は肉嫌いなのでチャーシューメンなんて絶対に頼まないし、トッピングもむしろ不要。ラーメンの要素としてはスープ60%、麺30%、具10%程度と考え、看板メニューの基本ラーメンを頼むことがほとんど。これがまずければ、他のがうまいわけがない。

10.ラーメン>つけ麺

僕はつけ麺ブームの存在意義がわからなかったけど、最近いくつかうまいつけ麺を食べてわかったのは、スープを中心に楽しみたければラーメン、麺を中心に楽しみたければつけ麺かなと。基本はあくまでもラーメンだけど、つけ麺っていう食べ方も、夏に限らずアリかなと思い始めている。ただ、つけ麺のつゆは必ずラーメンのスープより甘酸っぱいね。なんでだろ?”スープ割り”を足してそれこそ”そば湯”みたくして飲んでもいいけど、麺食べながら同時にスープもすするという楽しみが無い分、やっぱラーメンかな。

11.どうせうまくないなら、軽い方がいい

くどいラーメン=インパクト=食べ応え、ということで若者・労務者向けにこってりとんこつ醤油が多いが、うまくない場合は、特に夜はもたれて困る。そこへいくと、中華料理屋のラーメンは実に無難に作ってあり、うまくはないが普通に食べられるしもたれない。どうせ特別うまくないんなら、胃にやさしい軽いラーメンの方がいい。


ラーメンの評価は難しい。評価なんて高尚なものじゃない、単に好き嫌いの覚え書きにしかならないのだが、他のサイトとか見ると全然評価が違ってて、全くそんなもん好みなんだなと思う。ただ一つ、大してラーメン屋に行ってない人の評価はまずアテにならない。味なんてものすごく相対的なもので、比較しないと評価なんてできない、それには少なくとも週1くらいはまともなラーメンを食べてないと、今食べてるラーメンと比較する味というのを忘れちゃうから、評価にならない。僕の感想も、初期のは相互比較すべき味の記憶が無いから曖昧になってる。
そうして比較すると、まぁうまいと言われてる店に行けば、ほとんどが普通にうまいもので、飛び抜けてうまいのっていうのは無いね。二郎やぎょうてん屋あたり、極端なのはインパクトはあるけどすごくうまいってわけじゃない。やっぱり塩ないし醤油の春木屋・坂内食堂・本丸亭・雷文・一番いちばんあたりが、非常にバランスの取れた味、麺も凝ってるし、くどくない優しいラーメンで、若者が食べてウメ〜とは思わないだろうが、誰がいつ食べてもまずくないし、安心して食べられる。そういう店が良いラーメン屋だと思う。とんこつについては、個人的な好みなので追求してるけど、むしろそれほど凝ってなくてファストフード・軽食の範疇におさまってるくらいのおとなしめの店の方がとんこつらしいと思う。あんまりにもこだわってクドくなっちゃうのは、本来の博多長浜ラーメンではないでしょう。
あとね、ずっと同じ味じゃやっぱり飽きられる。春木屋のように、客が飽きる前にちょっとずつでも改良してうまくしてゆこうという姿勢が大切。でないとよくあるのが「昔はうまいと思ってよく行ってたが、久しぶりに行ったらこんなんだっけ?」ということ。北斗神拳と同じ、相手の技を取り入れてどんどん強くなっていかないと、最強を維持できないんだ。

次のラーメンって何だろう?スープはとんこつ醤油+鰹節系ということで行くところまで行ってしまったし、つけ麺にもなってしまった。後はそれこそ、ぎょうてん屋のやってるようなカルボ郎みたいな全然違った味をラーメンにしてしまうしかないか。でもそういうのは結局定着しないんだよね。で逆にシンプルになってくと、そばが小麦+鹹水のラーメン麺になっただけのつけそば・かけそばになってゆくのかも、立ち食いとかでね。でもそれじゃ儲からないから、やっぱり1食800円くらい取って客が入るラーメンをみんな一生懸命考えるのかな。


良いラーメン屋・悪いラーメン屋2008.10

うまいラーメン屋=良いラーメン屋であることは確かだろうが、うまいというのは主観であって、でも客観的に良い・悪いというのはあると思う。まず、行きやすい店は良い店である。近所のラーメン店を大事にして欲しい、ラーメンごときに車で1時間も走るというのは、ラーメン好きからしてもある程度無駄な事である。それだけうまいとは限らないから。そして営業時間、ラーメン屋というのは夜中までやってるものだと思っていたが、最近はそれで商売になるのか、昼頃から夕方までで終わってしまう店も結構ある。例えば二郎は昼と夜(といっても21時迄)の3時間ずつしかやらないとか、極端な店では葵亭は19時から早い日には21時にスープ切れで終了、仕込みには時間かかってるにしろ、営業時間2時間である。それを考えると、チェーン店、国道沿いで昼から夜中までやってて十分駐車場がある店というのは貴重である。 でも結局のところ、ラーメン好きになるとすごくまずいラーメンというのは稀であることがわかる。例えばカレーはまずく作ろうとしても難しいが、それほどではないにしろ、ラーメンも普通に作ればとりあえずラーメンにはなる。ただ一番困るのは、あたりまえの普通のどこにでもあるラーメンの場合である。僕はここんとこほぼ毎回違うラーメン屋に行っているが、同じような普通のラーメンが出てきた場合には、わざわざ違う店に行く意味がなくなってしまうので困る。毎回新鮮な驚き、新しい味を提案してほしいのだが、現実的にはおそらく現在のラーメンというものはほぼ行き着くところまできており、例えばそば・うどんよりはずっとバラエティに富んでるにしろ、それほど新しい味は無いのかもしれない。 行列について。うまいラーメン屋は行列するものである、とされるがどうだろう?おそらくつまらない味ならばそれほど話題にならず、余程悪質な宣伝をしない限り行列は発生しないが、話題先行で行列してても大した店でない可能性がある。とりあえず昼時、特に土日の12時過ぎに行ったら行列は仕方ない。そこで混んでなければ商売としても厳しい。平日でも14時以降から夜であれば、どこでも普通はそれほど混まないはず、行列してもしなくても味は一緒だから、空いてそうな時間に行く必要がある。行列でいちばん印象的な店は69'n roll oneである。僕はラーメン好きだが並ぶのは無駄なので、混雑覚悟の店に行く場合はなるべく空いてそうな時間に行く事にしているが、ここは最もいけない日曜の昼だった。12時前に行ったが食べるまでに1時間、期待が大きかったせいもあり、意外に地味なラーメンが出てきて落胆した。


うまいラーメンとは2008.10

ん〜でもいちばん美味しいと思うラーメンは地元の**だね。と言われて行ってみる。確かにまずくはないが、さんざんいろんな店でラーメン食べてる者からすると、まぁ好みというのはあるけど、その店が抜きんでてるとは思えない。味の基本は昔ながらの醤油だったりして、でも一本調子でなくて魚介系とか焦がしネギとかの工夫はされてる。特別なギミックはない。そういう店が多い。
それは珍しい事じゃないね。やっぱり、おそらく10代の頃とか、自分の味覚が完成される頃までに食べたもの・その頃好きだったものが一生うまいと思うんだろうね。音楽だって映画だってそうでしょ、10代の新鮮な感性で良いと思ったものが、一生いいわけ。だからおじいさんとかはいくつになっても、昔見た白黒映画以上のものは無いと思っちゃうわけ。ラーメンもそうで、おそらく当時としては工夫があってまわりとは違ったラーメンで評判のうまい店だったんだろうけど、何十年も同じ味でやってると昔からたまに行くファンはともかく、普通はある程度飽きられてそんなに何年も常に混んでる店って無いよね。だから現代の多彩な味に慣れたラーメン好きからすると、大したことないじゃんと思うわけ。でも地元の昔から食べてる人にとってはそれが基本のうまい味って定義されてるんだな。それはそれで間違いじゃないけど、だから昔懐かしいこの味が正しいんだと決めつけちゃうと進化がなくなっちゃうんで、例えば春木屋みたく、常に味を改良し客を飽きさせない店というのは強いね、それだといつまで経ってもある程度新鮮だし飽きられない。新しい店は新しい味を模索しているから、つまり停滞は退化である。北斗神拳は戦いの中で奥義を見いだし、必要なら相手の技も取り込み常に進化し続けるからこそ、1800年間無敗の「地上最強の拳」たりえた。ラーメンも同様である。


参考文献
『ラーメンの真髄』石神秀幸/ベスト新書 154
ラーメンのスープによる分類や食べ方、というか人生におけるラーメンとのかかわりが書いてある。これ1冊読めばラーメンとのつきあい方がわかる。


back