虚空を掴む 

    

油絵 1979年度作

著者 虚無生 夢酔

1985年6月30日初版発行

初版単行本(絵・イラスト入り)1部1700円

             

 

 

 

虚空を掴む 目次

 

 

第一部 表象機能

 Α 〈存在〉とは

 Β 統一主体

 Γ 情意

 Δ 直観的な世界

   α 感覚

   β 直覚

   γ 知覚

   δ 直観

 Ε 記憶

 Ζ 反省的な世界に入る前の過渡期

 Η 反省的な世界

   α 想起作用

   β 合成作用

   (補) 夢

   γ 言葉を伴わない思考作用(その一、因果的連結)

   δ 言葉を伴わない思考作用(その二、概念化)

     1 一般化

     2 特殊化(直額形式・思考形式)

     (補) 統一面での働き

   ε 言葉の成立とそれによる思考作用

     1 言葉の発生

     2 言葉の性質

     3 言葉による思考作用

 

第二部 統一力

   α イデア(個体の発現形式)

   β 純粋観照

   γ 統一力の体現

 

第三部 生成界

 Α 一つの全体としての宇宙

   α 宇宙の単一性

   β 物質の生成・消滅

   γ 空間上の制限

     1 ミクロ

     2 マクロ

   δ 時間上の制限

 Β 魂の発現

   α 発現の周期性

   β 「意志自由」論の是非

   γ 魂のイデア

   δ 魂の欲求

   ε 魂の健康・美しさ・徳

   ζ 魂の発現過程

   η 魂の対社会的な係わりと現状

 

第四部 内奥における情意の海と天空

   内的現象

   α 内奥における情意の海と天空

   β 不安

     1 発現過程に伴う不安

     2 構築物崩壊に対する不安

   γ 虚空を掴む

 

第五部 己れの実存を賭けた闘い

   魂の浄化

   α 管理の仕組

   β 魂の反抗

   γ 反抗と革命

 

第六部 詩編

  

 1 虚無の果てで

 2 望み

 3 預言者の昇天

 4 孤独

 5 幼児(おさなご)よ

 

あとがきに代えて

 

目次−−−おわり

 

 

 

 

 

 

虚空を掴む

 

 

If others had not been foolish,

We should be so.

 

      --The Marriage of Heaven and Hell (William Blake)

 

 

 

 

 何故これを出すのか、如何なる働きの下で私がこれを書き上げることになったのかは謎である。

 僅か実質的に四年間哲学をしただけで、これを出すのは僭越なことかもしれない。然し、私はこれを自信を持って出すことにする。

 人類の歴史の重大な局面に差し掛かっており、一刻の猶予もならないのである。

 これが出されるにせよ、出されぬにせよ、来るぺきものは必ず来るのであり、その点どうすることも出来ないのかもしれない。然し、これを真に必要とする者達に与えねばならない。一人でもそのような者がいれば、この苦労も報われるのである。

 だが、そのような者を一人も見出すことが出来なくとも、私は私に課せられた義務を全うするのであり、これをそのまま彼の虚空に座す統一的一者に、供犠として献じることにしよう。

 

 何故哲学をするのかに就いて。

 それは、我々が己れ自身の姿を正確に把握して、己れの発現を助け、己れの生を芸術性にまで高めねぱならないからである。

 その為、それを単なる知的な慰みに止めてしまってはならないのであり、また、それをパンや名声などを得る為の手段に貶めてしまってもならないのである。

 そしてまた、その児を気の抜けた学者共の手に、決して委ねてしまってはならない。

 彼等は何とその純真な輝く瞳を曇らせてしまうことだろう! 

 その児は、彼等の無能の為に「役立たず」のレッテルを貼られ、凍てついた街路に放り出されてしまう。

 然し、それは決してその児の責任ではない。

 その児は、生み育てた親が持つ瞳の輝きをそのまま写し出すのである。

 その瞳の曇らされた児を前にして躊躇してはならない。彼を遠ざけ、光り輝くもののみを手元に置くべきである。

 そして次に、哲学をする以上、己れ自身の頭で深く掘り下げて考えてゆかねばならない。

 古今東西のあらゆる書物を漁ろうとも、己れ自身の内で深く考えたことがなければ、それは全くの寄せ集めとして、単なる教養に止まるしかないのである。

 以上のようにして得られた己れ自身に対する認識は、此の世で、己れ自身の闘いを助ける最大の友となることであろう。

 此の世の闇の中に投げ込まれている魂の足元を燈し、魂の真正な発現を助け、己れの人生そのものを芸術性にまで高めねぱならないのであるが、そのような友を、この哲学の中にこそ求めることが出来るのである。

 

 この本の構成は、まず、認識の対象を二つの領域、即ち、統一され、表象内に表される被統一面と、それを統一する統一面とに区別し、その被統一面で得られた認識から、その統一面を推測してゆく形を取った。

 その為、最初に、一切の〈存在〉を表す形式的な表象機能を調べ、次に、その表される〈存在〉が持つ実質的な要素から、それを統一する統一力の働きを調べることにし、それから再び被統一面に戻り、その統一力に従って発現されて来る物質現象としての生成界を調べてゆくことにする。

 そして、また再び、内的な精神現象に戻って、その物質現象の様々な状態を内的に把握し、最後の所では、以上から得られた認識に基づいて、魂の本来あるべき姿を、魂の浄化を中心として描き出すことにする。

 

 

1984年12月

  虚無生 夢酔

 

 

序−−−おわり

 

 

つづく

目次

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