夏はやっぱり熱々(あつあつ)の「とんかつ」です

秋葉原の「丸五」。
ラオックスコンピュータ館の先、ヤマギワリビナ館の前にあり、最先端電気街の中に
へばりつくように建つ木造の古びた仕舞屋風(しもたやふう)です。2本の木が目印。

とんかつは厚めのロース肉を低温でじっくりと揚げ、さくさくっとした狐色がなんとも香ばしい。
ご飯(ふっくら)、みそ汁(赤だし)、お新香(浅漬けのきゅーり)も文句なし。
しかもキャベツがたっぷりで特製のドレッシング(掛け放題)の酢っぱさととても良く合う。
最初に出るお茶(緑茶)と食べ終わってから“さっと出る”お茶(番茶)が違うのも気持ちが良い。
瓶入りの梅干が好きに取れるのも気に入っている。

男4人が黙々と働いている。
年配の主人(おやじ)は一日中一言も口を開かなくても平気な感じで、
じっと分厚い肉を見つめながら切り、叩き、揚げている。
他の若い3人もキャベツ切り、皿洗い、注文取りとレジなど
それ以外は眼中にないといった、風情である。
とんかつ屋はやっぱり“男”の世界だな、と実感する。
と突然、全員が「へーい、らっしゃい」と大声で怒鳴る。
続いて「どうもありがたんしたー」の声が響く。
そうです、客の出入りの時は(いやその時だけ)全員が主人の音頭に合わせ“合唱”するのです。
(丁度デュークエイセスのコーラスを聞いているようだ)

それにビールが麒麟ラガーの大と小しかないのも小気味良い。
前々から汗かいて店に入りビールを注文するとき、
「壜にしますか?生にしますか?、麒麟ですか?アサヒですか?、ラガーですか?一番絞りですか?、
あーあこういう“注文儀式”はうんざりだった。
ここは大・小を言えば良い。
(大体あの中壜というのが中途半端で気に入らない。
昼飯時なんかは1人の時は小、2人の時は大で丁度良いんでは)
付出しが塩昆布4,5枚というのも無駄がない。

最後に値段。
自慢のロース定で1650円、ビール小が300円、
〆て2000円でお釣りがくる(税込みですよ)。
いろんな店へ行ってみたが、1000円前後の店はどうしても油っこい所が多く(安くて良い店もありますが)、
上野・御徒町界隈の3000円以上もする“立派なお店”も結構ですが、
たかがとんかつで(失礼!)こんな高いのは?、
「丸五」はその品質・サービス・こだわり・値段で一番だ。

がたがた戸を押して外に出るといつも思う。
「今度来た時は、隣で喰ってたあの大きな海老フライにしよう」と。
(休みはいつかは知りません)

  2002.8.2記  藤原 忠


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