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Archangel


Archangel jacket

この本を読むまで、アルハンゲリスク(英語ではアルハンゲリ)意味のない地名と思っていたのです。Arch angel、聖書からきている言葉と、初めて知りました。

モスクワで学会に参加した歴史学者が、事件に巻き込まれます。スターリンの死後に、残されたが、どこかに消えてしまったと伝えられている黒い皮表紙のスターリンの手帳の行方を知っているという老人が、彼の前に突然現れたのです。なにしろ専門分野にかかわる話ゆえ、聞き捨てならず、ついつい深みにはまって、話の途中で消えた老人を探し始めます。やがて話は急展開して、この学者はずっと北の港町アルハンゲリスクへと向かうことになり手に汗を握る事件が続きます。
現代ロシアの政治経済、モスクワの雰囲気などがなかなかうまく描かれていて、なかば観光気分になったり。本当にありそうな気がしないでもありません。

同じ著者によるファザーランドは、ナチスにまつわるミステリーでした。個人的な興味のせいか、こちらの方がずっとおもしろく思われました。
正直にいってはじめのほうは、なかなかはかどりませんでしたが、真ん中あたりからは中途で止めるのがつらいほど。

amazon.comの読者評価では、最後があっけない、というむきが多いようですが、私にはさほど感じられませんでした。まさに混乱状態にあるロシアならではのお話。久々におもしろいミステリーを読ませてもらったというのが本音です。「ドイツの場合のヒトラーとは違って、ロシアでは、スターリンに対する悪魔払いが終わっていない。」という記述に、ロシア同様に悪魔払いが中途半端な某国を思い出したりも。

同じようにロシアを舞台にしたミステリーとしては、アルハンゲリスクとは反対方向のシベリアで繰り広げられるSiberian Lightも、なかなかお勧め。どちらも、ハイテク時代のお話という意味で、共通点があるような気がします。

アルハンゲリについての紀行文もあるOpen Landを読み返そうかとも考えたり。

(1999.5.24記)

アルハンゲリスクの亡霊」新潮文庫から翻訳が出ました。上下二巻。帯には映画化決定とありました。

(2000.5.2追記)

Amazon.co.jpで、本を購入することができます。


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