<旧車シリーズ 835>


KUROGANE KP型


 
日本内燃機製造鰍フくろがねオート3輪は、1951年発売の1トン積み車・KD2型からフロントキャビンを初採用、当初は平板鋼板中心のシンプルな形状だったが、1955年に登場した2トン積みのKF型の頃には、より強い曲面を持つスタイルへと進化していた。ヘッドランプはトレンドに沿って2灯式となり、その両サイドにコーナーライトを配置、ボディカラーにはお洒落な2トーンが採用された。これらは工業デザイナー・広田長次郎氏が手掛けたもので、V型2気筒のパワーユニットと引っ掛け、「3つのTWO」のキャッチフレーズも生んだ。
 その後、このスタイリッシュな2灯式フロントパネルは、1.5トン積みのKP型、1.25トン積みのKHL型、1トン積みのKD型、750kg積みのKE型へ順次展開されたが、フロントサイドウィンドゥはKF型のみ曲面ガラスを採用していた。その他にもコクピット周りや室内レイアウトがモデルごとに微妙に異なっており、生産効率に優れない一面を抱えていた。2灯式のモデルは燃料タンクが大型化され、エンジン搭載はラバーマウント式に進化している。1.5トン積みのKP型は荷台長8.3尺、エンジンは空冷サイドバルブV型2気筒の1123ccで、最高出力は28psだった。
 1956年からはキャビン両サイドにドアを装着、翌1957年には「丸ハンドル+水冷エンジン搭載」の最新型が登場するが、くろがねは徐々にその終焉へと近付いていった。


 
写真の個体は日本自動車博物館の展示車両で、現在のくろがね号の残存状況からすると大変に希少価値の高いものです。ただ、モノトーンのボディカラーをはじめとして、シンプルなフロントマーク、曲がったロードレスト形状や短尺高床荷台など、数少ない当時資料と比べると外観で異なる点が多く戸惑ってしまいます。おそらくは当時の使用過程や復元の過程でモディファイされたものと推測しますが、実はこれが正規仕様だった、というセンが捨て切れないのも、くろがね号のミステリアスさの為せる業でしょうか・・・。

推定年式:1955
撮影時期:2002年5月
撮影場所:石川県小松市二ツ梨町 日本自動車博物館にて