<旧車シリーズ 802>


MAZDA K360 (KTBA43)


 
戦前から三輪メーカーの大手だった東洋工業は、1959年5月発売のK360で軽三輪市場に参入した。他社ライバルと比べ後発の感はあったが、工業デザイナー・小杉二郎氏の手による優れたデザインと先進的なメカニズムが好評で、やがてダイハツ・ミゼットと人気を二分する代表的存在となる。
 エンジンは軽三輪としては贅沢な4サイクルエンジンを採用した。空冷V型2気筒OHV・356ccのBA型エンジン(最高出力11ps)は、ユニークな「シート背面ミドシップ方式」に基づいてキャビン背後に搭載され、十分なキャビンスペースを確保すると同時に、重心位置を最適化している。トランスミッションは3速コラムシフトで、最高速度は65km/hだった。丸ハンドル式のステアリングや、2人乗りが可能な全天候型の鋼製キャビンは、ライバル・ミゼットに先行して採用されたものである。
 K360は十年のモデルライフの中で数度の改良を受けるが、1962年には比較的大規模な変更を受け、サイドウィンドウをスライド式から巻上げ式へ改良、三角窓が設けられた。足元のベンチレータが新設されたのもこの頃である。ただし、幌式のルーフが鋼板化されるのは1964年のマイナーチェンジまで待たねばならなかった。


 
2トーンカラーのお洒落なイメージが強いK360ですが、そのデザインはなかなか愛らしいものがあります。ただ、発売直後から数年間は頻繁にディテール変更が施されたので、ぼぼ完成形となったマイナーチェンジ以降の後期型と、発売当初の初期型とではかなりイメージが違い、初期型は愛らしさというよりも純朴さが目立つ感じになっています。写真の車両は幌ルーフのままですが、巻上げ式のサイドウィンドウになっているので、過渡期に登場した中間モデルといえますね。

推定年式:1962
撮影時期:1988年4月
撮影場所:東京都世田谷区 スズキ城南(クラシックカー専門店)にて