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なにわ修習記

1999年11月

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11月30日(火)

 午前中は取調べの相方(検察事務官役)として、身柄事件(被疑者が逮捕、勾留されている事件)の被疑者取調べに立ち会う。以前起訴した被疑者についての追送致分(前の事件に追加して検察に送られてきた分)である。でももう1度尋問及び調書作成は行わねばならないのだ。

 午後は明日行う予定の取調べの準備。記録を読んで、尋問事項、調書に取るべき事項をそろえておくのである。しかし現実はなかなか大変。一応の整理はしたが、明日午前中に再検討すべき点も残っている。うーむ。


11月29日(月)

 今日は朝は交通事犯の件の起訴状の起案。午後は水曜日に被疑者を呼び出している事件の記録の検討だった。

 水曜日に取調べ予定の事件、記録を読み直してみると結構ややこしい。事案自体はそれほど複雑ではないのだが、構成要件該当性の検討が結構大変だ。特別刑法は難しい。

 夕方になって、明日身柄事件の取調べをする人の相方を務めることになった。おや。水曜日に取調べを行う分の事件の検討がまだ残っているのだが・・。


11月26日(金)

 今日は鈴鹿へ安全運転の講習に。朝10時に近鉄難波の駅に集合して、10時30分発の名古屋行き特急で白子に。

 安全運転講習の場所は、鈴鹿サーキットに隣接した講習施設。まず、2人1組で、うち1人が自動車を運転して、濡れた路面及び凍結した路面での急ブレーキの実験を、アンチロックブレーキシステムを作動させた状態と解除させた状態で行った。私は免許取得以来運転歴ゼロのペーパードライバーなので、ずっと助手席に坐っていたのだが、急ブレーキはなかなか腹部にこたえた・・。

 その次は、危険を認識してから実際にハンドルやブレーキを動かすまでの時間、距離を計測する実験。走行していると前方に準備された信号が変わる。運転手は、その変わり方によって、ブレーキをかけるか左右いずれかにハンドルを切るかする。その際に信号が変わってから停まるまでの距離(ブレーキをかける場合)や信号が変わってから車が曲がり始めるまでの時間を測定して、突然現れた危険を回避するまでにかかる時間、距離を知るというものである。危険を察知してから実際に反応するまで2秒台というのが平均的なところだった。

 夜は検事、検察事務官の人も交えてホテルで懇親会。1次会では結構みんなおとなしかった。2次会は・・。


11月25日(木)

 朝1番で、昨日の取調べで作った調書の読み聞かせと被疑者による署名押印。略式手続についての説明と被疑者の承諾を含めて20分ほどで終わる。

 その後、私が担当する事件の処理の決裁をもらいに部長のところに。事案についてつっこまれて聞かれたが即答できず、記録を見て何とかこたえたものも・・。

 午後は相方担当の事件の取調べ。先週すっぽかされたもの。交通事犯は訊くべき事実が多くてなかなか大変だ。


11月24日(水)

 午前中は相方担当の事件の被疑者の取調べ。調書の口授まで済ませて、後は翌日にすることに。相方担当のときの調書は、要点をコンパクトにまとめたもので、検事の手直しも少ない。見習わなければ(汗)。

 午後は未処理で残っている事件についての必要書類の作成。上げる予定の決裁は、急ぐものではないので、翌日に回すこととした。

 夜は事務所訪問。弁護士数10人程度の事務所である。事務所の人達は本当に気さくで、いろいろ話してくださるので、頭が下がる思いである。

 最近、回りの人間でも結構就職先が決まったという話を聞くので、焦りがだんだん増している。その一方、修習終了までまだ1年近くあるのに・・という思いも強い。こんな考え方をすること自体甘いのかもしれないが・・。


11月22日(月)

 今日から公判実務に一部の人が入るため、席替えがあった。といっても、私と私の相方が公判演習に入るのは来週以降のため、私たちの席は替わらなかったが。

 今日は指導担当の検事が終日不在のため、取調べもなく、また決裁を上げることもなくゆったりしていた。


11月20日(土)

 今日は早朝に新幹線に乗り東京へ。東京の法律事務所に訪問するためだ。朝11時までに東京に着くようにするのはなかなかきつい。事務所訪問の成果は・・。うーん、今一つという感じだ。役人をしていたということが、研究好きな者と取られたようだ。そうではないんだけど。歩き回るのもいとわないつもりなんだけどなあ・・。

 訪問した事務所がかつて勤めていたところの近くなので、勤め人時代によく食事をしに行ったウナギ屋で昼食を取る。相変わらずおいしい。って、結局何をしに帰ったんだか・・・(汗)。


11月19日(金)

 今日は午後から相方の在宅事件(被疑者の身体が拘束されていない事件)の取調べがある予定だった。しかし時間になっても被疑者は来ない。すっぽかされたのだ。私たちの近くの班の修習生が被疑者に取調べをすっぽかされていたのは見ていたが、私たちの班では初めてだ。うーん、手持ちぶさただ・・。まあ、弁護士の立場から言えば、「取調べ受忍義務は無いのだから、出頭しないことに何ら問題はない。」ということになるのだろう。検察としても、被疑者が出頭しないからと言って、すぐに逮捕勾留したりはしない。2回連続してすっぽかしたらどうなるかは不明だが・・。


11月18日(木)

 今日は何と2件も取調べ。しかも両方とも私の担当である。

 1件目は身柄事件、つまり、被疑者が逮捕、勾留されている事件の取調べである。午前中は事情の聴取と調書の口授で、調書の読み聞け及び調書への署名指印は午後に行った。このように午前と午後に取調べがまたがることが予測される場合、被疑者を連れてくる警察にはあらかじめ「弁当持ちでお願いします。」と言っておく。被疑者の昼食を用意させるという意味であろう。

 勾留の満期が翌々日であり、土曜日は裁判所が受け付け事務をしないことを考慮すると、起訴するか釈放するかを明日金曜日までにしなければならない。処分は少し迷ったが、諸事情を考慮して公判請求することに。

 調書を作って、起訴状の案と事件記録を指導担当の検事に渡して、午後は次の取調べへ。以前1度取り調べた被疑者について、前回よく聴取できなかったところを聞き直すためだ。あまり芳しくはなかったが、何とか話がつながったかな、という程度までは聞けたので、ヤレヤレ、という感じだ。しかし、仔細に聞かないといけないというのも、立証のためとは言え、考え直さなければならないのかなとも思う。仕事を持っている被疑者を何度も呼ぶのは若干気が重いし。だからといって検察官の立証の負担を軽減するというのには賛成しかねるが・・。

 夜は事務所訪問。弁護士が20人近くいる事務所だ。話はなかなか面白い。大阪の弁護士の方は東京に比べざっくばらんな気がする。


11月17日(水)

 午前中は在宅(被疑者が身体を拘束されていない事件)の被疑者の取調べ。交通事犯である。以前取り調べた参考人の供述に大筋合致する供述をしていたので、調書を取るのもそれほど大変ではなかった。ただ、被害者の病状についてどう考えるべきが疑義が残ったので、処分はまた再考することに(ちなみに、一定額以下の罰金刑の求刑が相当と考えられる場合には、被疑者の同意を得て、略式命令を請求する手続というのを取ることになるので、そのための被疑者の同意を得る手続が必要となる。)。今回は病状の取り方によっては懲役刑の求刑も考えられるケースなのだ。うーん、難しい。

 夕方は、52期の司法修習生の人たちの歓送会である。みなさん色々お忙しいのか、出てこられない方も結構見られたのが残念だった。会自体は検事も加わり、かなり遅くまで盛り上がっていた。今年は修習期間が短縮された最初の年に当たるため、同じ時期に2つの期が同じ修習を受けるという事態が生じたという次第である。通常の2倍の人数が一度に押し寄せるため、受け入れる側(検察庁、裁判所)も大変なようだった。でも、我々修習生にとっては、前の期の人と知り合いになる機会が増えたわけで、ありがたい面も合ったと言える。個人的にはもっとお知り合いになっておけばよかったと後悔している。

 今日は仕事で1つ失敗。翌日の取調べの事件の記録を警察にもってきてもらうよう請求し忘れたのだ。そのことに気づいたのは夜。仕方ないので、翌朝警察の人が被疑者を連れてきた時にちょっと待ってもらって記録を読むことにする。


11月16日(火)

 今日は警察の捜査の実態を、現場の刑事の人について回って見た。それにしてもよく歩くよなぁ〜。まさに「足で稼ぐ」仕事である。残念ながら(と言っていいのか・・)、犯人を検挙する現場には巡り会えなかった。


11月15日(月)

 今週は取調べが目白押しのことから、取調べの事前準備を行う。といっても、記録を読んで質問事項を検討し、相方が主任の事件については調書の氏名、本籍、現住所の部分を入力しておくだけなのだが。


 

11月12日(金)

 今日は1日捜査実務、ということで記録の検討。まずはたまっている記録の検討と、取調べの準備。来週は私の担当事件と相方の担当事件併せて4回も取調べがある(すべて違う被疑者)。

 午後、昨日来た身柄付き事件の記録がやってきた。前科調書に記載されている前科の判決の謄本と前歴の事件の記録を検察事務官の方に頼んで取り寄せてもらう。

 夕方、身柄の事件の処理方針等について検事に説明。

 夜は事務所訪問。今回訪問したのはパートナー1人、アソシエイト(勤務弁護士、給料をもらって働く弁護士のこと)4人の事務所である。修習生は全部で3人で伺った。一般民事事件中心と聞いていたが、企業の仕事も多く、また、所属する弁護士の方には刑事事件をなさる方も多いとのこと。お話しもなかなか面白い。
 ちなみに帰ったのは午前3時である・・・。


11月11日(木)

 朝、身柄事件が入る。被疑者が検事の前につれてこられる前に、事件記録が渡される。10分で読むように、とのこと。短時間でざっと読むのは結構厳しい。検事が被疑者の弁解を録取するのを横で聞く。検事が口授するのを書き取り、弁解録取書作成(最後に検事自身が署名押印される。)。勾留請求もすることに。勾留請求書の勾留理由のところに適用条文を書き込む。今回は刑事訴訟法60条1号及び3号としたが、2号も含めた方がよかったかなあ。

 作った書類をもって、担当部長のところに説明に。犯罪事実や動機、目的について逐一訊かれ、若干答に窮したところも。記録の検討を短時間できちんとできるようにしなければ、と反省。

 午後は他の事件の記録の検討。しかし、昼過ぎから急に寒気を感じるようになり、記録を見ていても集中できない。修習室の外に設けられた休憩場所(通常は喫煙用に用いられている。)で一休みした。うーん、事件処理がなかなか進まないぞ・・。


11月10日(水)

 午前中は私が担当する事件の被疑者取調べ。被疑者が素直な人で、被疑事実を争っていなかったこともあり、助かった。

 午後は取調べを受けて、事件処理の決裁文書の作成。そして、たまっている事件の記録の検討。明日とあさっては取調べが入っていないので記録の検討ができるな、と思っていた。

 ところが、夕方になり、明日身柄事件(被疑者の身体が拘束されている事件)が割り当てられることになった。5件目にしてやっときた、という感じだ。わくわくする。

 夕方は中堅検事との懇談会。会費制である。といっても修習生が負担するのはそれほど大きな額ではないが。

 懇談会は途中で抜けされてもらい、夜は法律事務所の訪問。事務所で扱っている事件の説明や、たずさわっておられるプロボノ活動(公益活動)の話が大変興味深いものだった。


11月9日(火)

 今日は朝6時45分の飛行機で東京から大阪へ戻り、そのまま検察庁へ。午前中に相方担当の事件の取調べがあるので、急がなければならない。

 役所に着いて自分宛のメールボックスを見ると、病状照会書の回答が届いている。照会書を出してから約1か月である。これでやっと事件処理を1件進めることができる。嬉しい(病状照会への回答が来てから被疑者を呼び出すということになっていたのだ。)。

 正午近くになって、被疑者来訪。午後1時30分からの予定で読んでいたのが2時間も早く来た。待たせるのも悪いということで早速取調べに入る。

 取調べの次第について述べると、以下のとおり。

 まず被疑者を検事の前に読んで、検事が、黙秘権の存在及び今回の取調べを司法修習生が担当することを被疑者に告げる。

 そして修習生による取調べ。みんな被疑者に丁寧な口調で接している。

 事情を一通り聞き終わると、原則として被疑者の面前で、調書の内容を口授(「くじゅ」と言う。)。事件担当の修習生が調書の内容を口で述べ、それを相方の修習生がパソコンのワープロソフトで打ち込んでいる。

 作り終わった文章を検事がチェックする。

 チェックを経てできあがった調書を被疑者に読み聞かせて、誤りが無いということになると、被疑者に署名押印(適切な印鑑をもってきていないときは指印)をしてもらう。

 末尾の決まり文句を書き加えて、調書完成。

 取調べはなかなか難しい。今回も1回訊いた後聞き漏らしがあったとして、聞き直しをすることになった。

 明日は私が担当する事件の取調べである。前やった事件では動機などうまく聞き出せず、再度取調べとなってしまっている。今度の事件はうまくいくだろうか。


11月8日(月)

 今日は休みを取って東京で事務所訪問をした。昼過ぎに事務所に伺ったのだが、うーん、感触は今ひとつという感じである。
 終了後、弁護士会に出向いて求人票を閲覧する。年齢制限を設けている事務所が結構多い。20歳代という限定が多く見られる。30代半ばの私にとっては厳しいなあ。一律に年齢で切るというのもどうかと思うのだが・・。


11月6日(土)

 今日は東京で弁護士会の就職説明会があった。東京弁護士会主催のものである。


11月5日(金)

 今日は見学研修ということで、紀律の厳しさで有名な某学校を訪れた。紀律の重要さを学ぼうという趣旨である。生徒は目的意識をもって入学してきている人達ばかりのところであり、また学校側もその目的達成が将来の人材育成に直結するとあって、講師陣や講義内容にも本当に配慮がなされているものだと感心した。


11月4日(木)

 午前中は、相方担当の身柄事件(被疑者が逮捕、勾留されている事件)の被疑者取調べがあった。以前取り調べた被疑者についてもう1つ事件が追送致されてきたものだ。今回聴取する事実については前回の取調べの時に1度聞いていたものなので、スムーズに聞き終わった、と思ったが、検事のチェックを受ける段階で、聞き落としがあることが判明。うーん、なかなか難しい。


11月2日(火)

 今日は労働基準講義・見学ということで、枚方市にある北大阪労働基準監督署に。午前中は基準監督署の人と大阪府労働基準局の人の講義だ。過労死と労災補償といったトピックな話も聞け、興味深かった。ただ、労働基準法や労働安全衛生法の基準を守っていない企業もかなりあるということで、その対策に苦労しているとのことであった。
 午後はクボタの枚方製造所を見学させていただいた。工場見学は、前期修習で三島の特種製紙に行って以来である。クボタはさすがにでかい。水道のポンプやバルブ、鋼製品などの製造工程は今まで見たことがなかったものなので、面白かった。


11月1日(月)

 今日は法医学講義と解剖見学があった。
 午前中は法医学の講義。法医学の講義は和光の研修所でもあったが、今回は脳の構造と脳のけがを中心に説明が行われた。スライドが何十枚と移されたのだが、その中にはちょっと気持ちが悪く感じられるものも。目をそらしている人も何人となくいた。
 午後は解剖を見学に。今回見学した解剖は行政解剖というものだ。解剖には司法解剖と行政解剖の2つがある。司法解剖は裁判所が事件の真相を把握するために鑑定という方法で依頼する解剖である。裁判を行うためのものだ。これに対し行政解剖は、不審な死を遂げた者について、行政機関(都道府県知事)からの依頼によって行うものである。司法解剖は性質上刑事事件と関係がある場合が多いのに対し、行政解剖は刑事事件に発展するものとは限らない。自殺による死亡や、単なる行き倒れなども含まれるからである。

 医師が死体の腹部にメスを入れると、黄色い部分がボワッと出てきた。脂肪である。体の中にある脂肪ってこんないろしているんだ!これはダイエットして脂肪を減らさないといかんな〜などと不謹慎なことを思ってしまう。私たちが見た解剖の死体は外傷がないもので、一見すると何が死亡原因か分からないものであった。解剖の結果、心臓付近の動脈がせばまっており、瘤ができているのが破裂したのではないかということに。しかし、よくあんな見つけにくいものまで分かるものだな〜。プロは違うな〜。

 私も1年後には法律のプロになっているわけである。心しなければ・・。


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