97年論文式試験受験記その2

答案構成編答案執筆編

民法 

 1日目、昼食を採った後の2科目目は民法だ。これは前の年もA判定だったし、何とかなるだろうと思い臨む。

答案構成編

 問題を開く。おや?2問目は1行問題?なんだこりゃ?とりあえず1問目から構成へ。

 ところが、昼に食事用にゼリー飲料を摂ったのがまずかったのか、尿意を催す。とりあえず我慢して答案構成に臨む。1問目、カーポートを土地に附合させようかどうかで悩む。附合させた場合とさせない場合のそれぞれどうなるかを検討していたが、尿意のため集中力続かず。これではまずいと思い、答案構成の途中で用を足しに出る。これは痛かった。

 すっきりした後、答案構成へ。附合させた方が簡単そうかな、と思い、附合させる方向で考えてみる。しかし、こんなの附合させちゃやばいよな、と思い、方向転換。あと、建物についても、土地賃借権について短期賃貸借の規定の類推適用があるかどうかで収去させられるかどうかが決まってくるので、その点も書くのかなと思う。また、建物買取請求権も、否定はするものの、一応触れておいたほうがよいだろうと思う。

 さて、後段だ。建物が競落されたら、土地賃借権も従たる権利として移転するよな。とすると、土地賃借権の無断譲渡ということで、土地賃貸借が解除され、建物を収去しなければならなくなるのが原則だ。でも、それじゃあまずい。そこで、承諾に代わる裁判の請求、と。あと、信頼関係破壊理論って言うのもあったよなぁ。それと、建物買取請求権がやはり問題になるだろう。

 カーポートは、今度は建物の従物だ。従物は主物の処分に従うから、抵当権の実行とともに所有権がFに移るっと。(抵当権設定後の従物であることに気付いていない。)

 さて、2問目だ。連帯債務と連帯保証の違いでしょ。債務相互に主従関係があるかどうかっていうこと、それに関連して、連帯保証の場合には(主債務者と連帯保証人との間での)負担部分が債権者にとってはっきりしているっていう点がポイントだろう。それが各項目についてどのように反映してくるかってことだよね。総論でこの点について述べて、後は演繹的に降ろしてくる形にしようっと。でも、具体的にどのようにちがうんだ?
とりあえずマトリックスを書いて並べてみるか。
 契約の無効・取消しはどうなのか?これって、連帯保証では附従性が働くから、却って債権者には不利じゃないの?でも、実は連帯保証の場合も債権者にとってそんなに不利ではないんだな。なぜって、債権者は主債務者だけ注意しておけばいいから。
 債権の存続?時効のことかな。確か、時効中断事由については連帯保証の場合は請求以外のものでも、主債務者との関係での中断の効力が連帯保証人にも及ぶから、連帯保証の方が債権者に有利なはずだ。
 債権の譲渡?一括して譲渡する際の手間のことかな?それとも、債権譲渡の対抗要件の話?連帯債務はそれぞれ別個独立の債務だから、各債務者に対して対抗要件を具備しなければならないはずだ。連帯保証は?附従性が作用するんだっけ?うーん、分からない。でも、保証人が債権者を確知する利益も保証すべきだよなあ。えーい、やはり相対効だってしちゃえ!(これは通説に反する。正に蛮勇。)。
 回収?全員に全額請求できる点は同じ。じゃあ何だろう?回収といえば免除だ。債務者のうちある者に対しては債務を免除し、残りの者からの回収を図る。その際、連帯債務における免除の絶対効の存在が債権者にとって思わぬ不利益をもたらすものであるという、共同不法行為についてよくなされる議論が思い浮かぶ。とすると、一部の者に免除した際に、他の債務者から全額回収できるかどうかっていうことが問題の核心だろう。連帯債務の場合、負担部分が債権者に分からないことから、免除を受けた債務者の負担部分によっては、債権者が回収できる額が予想外に減ることになる。これに対し、連帯保証の場合、連帯保証人に対して免除しても主債務者の債務はまるまる残るので(連帯保証人は負担部分はゼロだから)、全額の回収を図ることができる。これは連帯保証に有利だ。

(以上で構成終わり。約45分。)

答案執筆編

今回は、2問目は一気加勢に書けそうなので、1問目から書くことに。

まず、土地が譲渡された場合、土地抵当権が土地賃借権に優先する以上、Eからの建物収去土地明渡請求にCは応じなければならない旨を述べる。これだけで8行くらいかかった。

次に、短期賃貸借との関係で、せめて契約時から602条所定の期間までは土地賃借権の存続を認め、建物の収去が猶予されないかとの問題提起を行い、結局否定。

それではCは建物建築資金回収のため建物の買い取りを請求できないか?条文上は否定である。ではこれらの規定の類推適用は?などと展開した上、結局否定(これは余計だった。)

次にカーポート。これは附合が問題となるのは明らか。でも、これを附合させてはいかんよな。どう否定しよう?Cが自家用車のために設置したものであり、Eにとっては邪魔もの以外の何ものでもない、こんなものは附合させるべきでない!と利益衡量を全面に押し出して、附合を否定。書いていて、理論構成がなっていないなあと感じる。でもスペースがない!(既に3頁めの半分を超えている。)

小問2に移る。まず、建物について。競落によって土地賃借権も従たる権利(87条2項類推適用)としてFに移転することから、土地賃借権の無断譲渡としてAが土地賃貸借契約を解除でき(612条)、建物収去土地明渡を請求できそう、とする。これに対し、Fは、承諾に代わる裁判を求めることにより、建物保全を図ることができる。また、賃貸借の解除を受け入れる代わりに建物の買取りをAに請求できるとする。信頼関係破壊理論については、時間とスペースがないのと、承諾に代わる裁判を求めることができるんだから書く必要ないか、と思い、書かなかった。

カーポートについては、建物の従物と認定した上、建物の競落とともにその所有権もFに移転するとした。つまり、競落が主物の処分だから、それに伴って、従物であるカーポートの所有権も移転するとだけ書いた。本当は、抵当権設定後の従物であることに気付くべきだったのだが、構成不十分かつ時間不足かつスペース不足で書かず。

(残り32分)

 2問目。とりあえず総論を出そう!ということで、連帯債務と連帯保証はいずれも絶対効を有すること、連帯債務相互間については主従の関係は見られないのに対し、連帯保証は主たる債務と従たる債務の関係がはっきりしていること、連帯債務については債務者相互の負担部分については債権者には全く分からないのに対し、連帯保証の場合は主たる債務者が全部の負担を負うことが明らか、というのが違いとして挙げられるとして、各論へ。

 契約の無効・取消し?連帯債務の場合は一人について生じた事由は他の債務者との間ででは影響しない。これに対し連帯保証の場合、主債務者の債務について無効だったり取り消されれば、附従性によって消滅する(例外あり。)。よって連帯債務の方が債権者に有利。でもこの点は、連帯保証の場合における債権者をそれほど不利にするものではない、ということは、残り時間が少ないことから書かなかった(本当はココが書ければはねたのに!)。

 債権の存続?時効によって消滅するかどうかってことか。
 まず、債務者1人との間でなした中断によって他の債務者との間での時効の進行を中断できるかどうか。連帯債務については、請求以外の時効中断は、他の債務者との間では時効を中断しない。これに対し連帯保証では、主債務者との間で時効を中断すれば、附従性によって連帯保証人との間の時効の進行も中断される。これは連帯保証の方が債権者に有利。
 では、時効が完成した場合はどうか。連帯債務も連帯保証も絶対効が認められるので、時効が完成した者の負担部分の限りにおいて他の者も責任を免れる点は変わらない。しかし、連帯債務の場合、負担部分が債権者に分からないために、債務の消滅時効が完成した債務者の負担部分いかんによっては、債権者が不測の損害を被ることがある。これに対し、連帯保証の場合は、主債務者以外の者の負担部分はゼロだから、債権者としては主債務者の債務について時効の完成を阻止しさえすれば、全額回収の可能性が残る。これは連帯保証の方が有利だ。

 債権の譲渡?時間が無い。対抗要件の具備の話だけ書こう。連帯債務の場合、各債務は独立した債務だから、譲渡の対抗要件である通知・承諾(467条)も各債務者ごとに具備する必要がある。では、連帯保証は?保証債務の附従性から、主債務者に対してだけ通知・承諾すればいいようにも思えるけれども、連帯保証人が新債権者を確知する利益を保証すべきだから、やはり通知・承諾は各人に対して行う必要がある、とする。したがって、この点については有利不利はない。

 回収かあ。連帯債務の場合も連帯保証の場合も、各債務者に対して全額の請求はできる点は同じだ。
 でも、連帯債務の場合、一部の債務者に対して債務を免除し残りの者から債権を回収しようとすると、免除を受けた債務者の負担部分だけ残債務者の債務も消滅するので、免除を受けた債務者の負担部分が分からない債権者は、不測の損害を被るおそれがある。これに対し、連帯保証の場合、連帯保証人の負担部分がゼロであることが債権者には分かっているので、負担部分におののくことなく連帯保証人に対して債務を免除し、残りの者からの全額回収を図ることができる。この点は連帯保証の方が有利だ。

 ここで時間切れ。論評問題だったのに、設問見解に対する賛否のまとめが書けなかった。ああ、悲しい。得意科目(他の科目と比べてだが)だったはずなのにぃ。
 しかも、大学の後輩との話で、連帯保証について、債権譲渡の場面での通知・承諾については一般に、主債務者だけに行えばいいということが判明。択一の知識ですよとか言われてしまった。あれれ。間違い書いちゃったよ。でも、法文上明らかなことでもないし、理由付けもしたから何とかならないかなあ。


 昨年(1997年)の夏にこの原稿をほぼ書き上げていたのですが、未完だったのでアップロードせずにいました。答案執筆編の第2問の、債権譲渡以降が、今回(98年4月)補完した部分です。短答直前のこの時期に補筆することになったのは、たまたま民法の本を読んでいて附合の部分にさしかかり、ああ、去年出たよなあと思うに至ったからです。まあ、現実逃避ですね(^^;)。
 ちなみに、帰ってきた成績はA。そっか、筋が通って各問についてそれなりの回答を出した答案を書けばいいんだな、というのが、感想です。

1998年4月13日


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