1997年論文式試験受験記その1

憲法

 今年度の論文式試験を受験していた時の様子や心理を書いてみました。試験終了後間もない頃(7月下旬)に書いたものなので、「再現度」はかなり高いものとなっています。全科目書いてからアップしようと思ったのですが、日時も過ぎたので書いた分だけアップします。


7月20日(日)

 朝6時30分に起床。やはり会場が近いと楽だ(筆者は高田馬場在住。会場は早稲田)。

 ところが、ペンの替え芯が見あたらない。必死になって探すが、結局諦める。

 仕方がないので、コンビニでペンを買っていく。全く朝から縁起が悪い。


 初日1科目目は憲法。苦手な科目だ。

 問題を開く。第1問目は外国人と公務就任権。あれまあ、予想論点ド真ん中だよ。

 なんでこんなひねりがなさそうな問題を・・・。

 受験資格を日本国籍保有者に限るということが外国人の公務就任権を制限するということの説明からきちんとしなくちゃあね。でも、公務就任権って、芦部先生は人権享有主体性を認めることに消極的で、平等原則の問題としていたような・・・。でも、そこにどうやって持っていこう?ええい、面倒だ、職業選択の自由の問題としちゃえ!さて、後段との関係からは、本件規定が外国人の憲法上の人権の侵害となるか否かというのと、本件規定が憲法上の要請かどうかという点に分けて考えた方がいいだろう。でも、分けて書くのって難しい。どうしたらいいのだろう?仕方ない。これがもし国レベルの話だったら・・・というのを持ち出して、それが地方レベルの話であることによってどう変わるか・・というように書こう。それと、本件は職務っていうように抽象的だから、職務の性質によって分けた方がいいかな・・・。また、定住外国人には別途配慮が必要だろうな・・。

 なんて考えながら2問目へ。

 あれまあ、客観訴訟か。用意してないよ、これ。憲法76条との関係と裁判所法3条1項との関係をどう書こう?絡んでくるから、憲法76条と裁判所法3条との関係を総論として述べた方がいいのかな。でも、それを問題文と絡めて書くのは難しそう・・。うーん、どうしよう?とりあえず、芦部説に則って、司法権の範囲を拡充するとした上で、裁判所の権能でなければならない司法権の範囲と裁判所の権能とすることができるに過ぎない司法権の範囲に分けられるという方向で書くか。でも、理由付けが「司法権概念の歴史性」というのの他に何かあったっけ?法原理機関性なんて言葉は使えないしなあ。新版では確か、とりあえず法的解決に適した紛争が存在することがあればいいって言ってたよね。

 こんなところで今年の受験生活が終わってしまうのか・・、それは嫌だ!

(以上、構成40分)

 慣例に従い、2問目から書き始める。仕方ない。住民訴訟と憲法第76条1項との関係ということでまず書こう。要するに、住民訴訟が司法権の範囲に入るかどうかがまず問題となるんだ、ということを書く。これだけで10行近く。次に、従来の司法権概念からは、住民訴訟が司法権の範囲に含まれないとされること。でも、裁判所の権限の範囲の拡張によって国民の救済を図る場面を増やすことが期待されていること。ただ、権限の拡張については限界があることを述べ、司法権とは具体的な法的紛争を適正な手続の下裁定する作用をいうと規定。地方自治法の住民訴訟については、問題となる不正行為など具体的紛争の存在がよていされているので、司法権の範囲に含まれる。つまり、憲法76条1項に反しない。

 それでは地方自治法第242条の2は憲法第76条1項の必然的帰結か、ということで、司法権の範囲にも2つあり、法律上の争訟以外の部分については、裁判所の権限が及ばないとすることも可能とした。つまり、憲法76条1項の必然的帰結でないことに。

 次に、裁判所法3条1項との関係。同法同条同項にいう「法律上の争訟」の意味をのべ、住民訴訟はそれに当たらないとする。住民訴訟は、結局、「その他法律によって与えられた権限」に当たると述べる。

 後段。条例の違憲確認訴訟については、紛争が解決を要求するほど成熟していないということで、憲法76条1項に反するとする。でも、「紛争の成熟性」という言葉、前段では触れていなかったなあ。まあいいや。後で前段を直そう。時間もないし(結局直せずに終わる。)。

 裁判所法との関係について。裁判所法も憲法を前提として解釈すべきであるから、憲法76条1項の司法権の範囲に含まれないものに関しては裁判所法で認められた権限にも属しないとすべきとする。したがって、住民訴訟は裁判所法3条1項にも反するとする。

(この時点で残り35分弱)

 次に1問目である。時間が無い。とりあえず、日本国籍保持が受験資格とされていることにより、競争試験による採用が原則とされている公務員制度の下では外国人が公務員となる途が事実上閉ざされる。これは公務就任権の制限となるのではないかと問題提起(これだけで6、7行)。

 こんなの書くのかな、と思いつつ、外国人の人権享有主体性に触れる(5行も食った。)

 公務就任権の性質は?ということで、22条1項により保障されるとする。

 しかし、公務就任権については、政治・行政についての意思決定に関わる面があるという特殊性があるという点を述べ、これが国レベルであれば国民主権との関係で公務就任は保障されないのみならず禁止されている。とすれば、本件規定は憲法上の要請ということになる。でも、これは地方の話。国権の行使に直接関係はない。でも、外国人は日本人とはやはり日本国への係わり方が違う。だから、公務就任権が外国人に保障されているとまでは言えない。
 もっとも、公務といっても、看護や福祉など、非権力的公務については、外国人にも門戸を開くのが憲法上望ましい。特に、定住外国人については・・。げげっ。時間がない。定住外国人についての記述は削除っと。前段はこれでおしまい。

 もう5分前の知らせは鳴っている。急げ。後段だ。管理職については機関委任事務の担い手として国政に関与している。だから、管理職就任権が外国人に保障されないのはもちろん、本件規定のようにすることは憲法上の要請だ、とだけ殴り書き。あ〜あ。今年もさい先悪いなあ。



(補遺)

 筆者は不合格。憲法の判定はBでした。うーん、やはり1問目が舌足らずすぎたのか。それとも、2問目の後半が前半と平仄が合わなかった点が問題だったのか。でも、結局は、この科目が致命傷になったわけではなかったんですね。



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