或いはひとつの可能性



第6話・未来の色は





  その日、一日中、リョウコは俯いたままだった。

  誰かが何か話し掛けても、ふっと顔を上げるだけで、用件が済むとすぐに視線を落としてしまっている。

  肩まで伸ばした髪が横顔をずっと覆い隠している。

  リエは、前にも一度、こんなリョウコをみたことがあった。


   ・・・・・・

  
  リョウコは父親と二人で和菓子店を切り盛りしていることもあって、

  クラスメートからは、気丈で、小さなことにこだわらず、さばけている、と思われている。

  いつでも胸を張って、まっすぐに前だけをみつめて走っている、という印象が強い。
 
  リエもその時までそう思っていた。


  中学1年の晩秋、リョウコは口数が減ってふさぎ込むことが多くなった。

  あまりにふさいでいるリョウコを気遣って、リエは無理矢理せがんで、

  学校帰りに彼女の家に立ち寄らせてもらったことがあった。

  「リョウコの部屋って、お菓子の本がいっぱいあるんだね」

  「うん・・・。お菓子作るの好きなの。」

  「じゃ、おうちを継ぐの?」

  「そう。いろいろなおいしいお菓子、きれいなお菓子を一杯作って、みんなに売るのが、あたしの夢。

  ・・・お菓子ってね、別に食べなくても生きてゆけるものでしょ。だからね、平和なときしか作れないものなのよ。

  あたしはね、みんなが平和に暮らしていける、今のような世の中がずっと続いたらいいなって、思ってるの」

  「リョウコ・・・・」

  「あまりにも少女趣味なんでびっくりした?  でもね、あたしにとってはとても大切なことなの」

  いつになく真っ直ぐな瞳で自分を見つめるリョウコに、リエは気押されていた。

  「・・・つい最近、お父さんの古い日記、見つけたの・・・・お母さん、旅行中に交通事故で亡くなったんじゃなくて、

  ヨーロッパのお友達のところに遊びにいくために乗った列車がテロで爆破されて・・・・。お父さん、

  あたしにどうしても言えなくて5年間、ずっと病気が原因だって・・・・」

  「そうだったの・・・・」

  「だから、あたしは今の、この平和な時代にお母さんの分までお菓子をつくるの・・・・」

  「・・・・・がんばってね・・・応援・・・・してるから・・・」

  「・・・なんかリエに話したら、少しふっきれたみたい。・・・こんな辛気臭い話、聞いてくれてありがとね」

  リョウコはそれから少しずつではあるが明るさを取り戻していった。


  ・・・・・・・


  放課後、リエはリョウコの家に寄った。

  学校から自宅までの間、リョウコは殆どしゃべらなかった。

  リョウコは部屋にリエを入れると、制服も着替えずに床に座り込んだ。

  「ちょっと、どうしたのよ。リョウコ・・・」

  「あたし、あの晩、みたの・・・・。あれはロボットじゃない。明らかに生き物・・・・。

  何か、ものすごく怖いものだった・・・。爆撃機や装甲車の攻撃を受けても全く傷ひとつない・・・・・」

  「でも、政府の発表では、戦自の一斉攻撃で倒したって・・・・」

  「戦自が倒したんじゃないわ・・・・にわかには信じられないかもしれないけど・・・・市街地のビルの中から

  紫色のロボットが出てきたの。・・・・最初はやられていたんだけど、突然、逆襲に転じて、そしたら、その生き物が

  いきなり自爆したのよ・・・・・」

  「・・・・・」

  「あたし、何か悪い予感がするの・・・また、あんなのが襲って来るんじゃないかって・・・・怖いのよ・・・

   やっと、みんなが手に入れた平和が、あたし達の未来が、失われてしまうのが・・・・」

  「でも、紫色のロボットがこの街を救ったんでしょ? きっと、今度もそれが護ってくれるわよ・・・・」

  「・・・・・・」

  「元気を出して、リョウコ。心配してもはじまらないわ。私たちは信じるしかないのよ、未来をね・・・」

  「・・・・・うん・・・・リエ、ありがと・・・・」

  「それにしても、その紫色のロボットって、何かしら? 戦自? でも、聞いたことがないわ・・・」

  「あたしも不思議に思ってたの・・・・。でも、少しでも、あの時のこと、考えるのが怖くて・・・・」

  「リョウコ、私たちでできる限り調べてみない。正体がわかれば、リョウコも安心できるわよ、きっと」

  リエはリョウコの好奇心旺盛な性格を刺激することで、一時的にせよ彼女の気を紛らわせようと思った。

  リエの、その思い付きが彼女とリョウコの未来を大きく変えた。

    

  その夜、高橋は市議会が散会した後、同僚議員の磐手や八雲の誘いを珍しく断って、家に早く帰ってきた。

  彼が足を速めたのは、リエのことが気に懸かっていたせいでもあるが、それだけでもない。

  彼の永年の政治的な勘が訴えかけていた。

  「どうもおかしい・・・・。いつもは予算の縛りがどうとか言って、災害対策が後手後手に回って非難されているのに、
 
  今回の政府の一連の施策はあまりにも手並みが鮮やかすぎる。・・・まるで、事件を予見して予め準備して

  いたみたいだ・・・。ま、そんなことはあるわけはないが・・・・。もしかすると、政府を迅速に行動させるような

  何かとてつもない利権が絡んでいるんじゃないのか?」

  高橋が自宅のチャイムを鳴らすと、珍しくリエが困った顔で玄関に現れた。

  「あの、今日、お料理、失敗しちゃったの・・・・。私一人だったら、店屋物ですまそうと思ってたんだけど・・・」

  「珍しいね。何か考え事でもしていたのかい?」

   「うん・・・・・・」

  「ま、年頃なんだから、そういう時もあるわな。気にしなくていいよ。そうだ、今日は蕎麦をとってくれないか?」


   高橋は玉子とじを食べ終わり、日本茶をすすると、足早に書斎に向かおうとした。

  「あの、お父さん・・・・。ちょっといい?・・・・」

  「どうした? 珍しいね。小遣いの額でも上げろってのかい?」

  「・・・・・・」

  「あ、茶化して悪かった。で、何だい?」

  「あの晩、リョウコ、シェルターに避難できなかったの。それであの事件のこと、目撃したの。政府はロボットって

  発表していたけど、リョウコは人のような形をした大きな生き物だったって言ってるわ。それが市街地に入ってきて、

  ジオフロントの真上を攻撃し始めたとき、市街地のビルの壁が開いて、紫色の人型ロボットが出てきて、その生き物を

  退治したんだって・・・・。戦自の爆撃機も装甲車もその生き物には全く歯が立たなかったらいしの・・・」

  「攻撃を受けたのは、ジオフロントだけじゃないだろ? 新用賀も被害を受けていたし・・・・」

  「それは、紫色のロボットがその生き物を投げ飛ばしたときに、辺りのビルが砕けて、破片が新用賀に落ちたのよ」

  「敵さんのねらいはジオフロント? でも、なんで・・・・」

  「ジオフロントって何なの? 私たちは名前しか聞いたことがないけど・・・。民間人は原則として立入禁止だし・・・」

  「国連直属の特務機関、NERVが”防衛上の絶対的必要性”とやらを盾にとって、大深度地下工法で作り上げた、

  地下の軍事要塞があるところさ。NERVは超法規的組織だから、ジオフロントには市役所、警察はおろか、

  政府の人間も入ったことがないよ。NERVが、中で何やってるかわかったもんじゃない」

  「じゃ、紫色のロボットは、NERVの・・・・」

  「そうと決まったわけじゃない。が、リエもリョウコちゃんも、このことを誰にも言っちゃいけないぞ。

  NERVは独自の諜報網を持っているらしい。深入りすれば危ない目に会うかもしれん」

  「うん。気をつける」



  翌朝、リエはいつものように父親のために玄関まで新聞を取りに行った。

  中学2年生のリエが読むのはテレビ欄と社会面ぐらいだ。

  いつものようにリエは新聞をポン、とテーブルの上に投げ出して、朝食の支度にかかろうとした。

  が、勢いがつきすぎて、新聞はテーブルの上を滑って床の上に落ちてしまった。

  床の上で半開きになった新聞を拾い上げたとき、リエはその姿勢のまま固まった。

  新聞記事は、いつものように、財政再建の問題や、技術研究組合としての日本重化学工業企業体の設立

  に関する記事などが中心で、もはや、先日の事件のことには何ら触れていない。

  問題は、新聞記事の下方にある週刊誌の広告欄である。

  当日発売予定の3誌がいずれも同じような見出しを掲げている。


  「第三新東京市を襲ったのは新種生命体!! 政府高官が本誌に暴露!!」

  「迎撃用ロボット、暴走!! 住宅地が修羅場に!」

  「ロボットの修繕費、1台9000億円也!!」  


  「お父さん、起きて!! 大変よ!!」

  「朝からどうした? もう少し寝かせてくれよ。昨夜は遅くまで仕事してたんだから・・・・」

  「新聞にあのロボットのことが!!」

  「何!?」

  リエから新聞をひったくる高橋。

  「なんで政府高官がこんな機密をリークするんだ? 新聞記事になっていないのは報道協定のせいだろうが、

   広告に過ぎないとはいうものの、政府や新聞社は、なんでこんな紙面に出るのを黙認したんだ?」

  高橋は知らない。

  週刊誌は誘拐事件以外では報道協定に入らないケースが殆どで、そのうえ、今回は、

  新聞の早刷りの内容をチェックする内閣府広報室の担当者が「うっかりして広告のチェックを洩らした」

  という、「極めて異例のケース」であることを。

  新種生命体のことについても、酒には強いはずの政府高官が「酔ってうっかり週刊誌記者にしゃべった」という、

  「極めて異例なケース」であることを。

  そして今回の機密漏洩事件の捜査主管部署が、内務省の外庁の「憲法擁護庁調査部」であることも。

  機密漏洩事件に関与した関係者が誰も処罰されない予定であることも・・・。



  その朝、第三新東京市はこの話題で持ちきりだった。

  2年A組でも、週刊誌が回し読みされている。

  「おはよう、リョウコ」

  「あ、リエ、あれ読んだ?」

  「うん。リョウコの言ってた通りだったね。」

  「やっぱりNERVが絡んでいたのね・・・・」

  「NERVが絡んでいると知ってたら、もっと親父から聞き出すんだったよ!!!」

  「相田君????」

  「話さなかったっけ? うちの親父、NERVの総務部に勤めているんだ。くーっ、何にも教えてくれないんだもんな」

  その時、トウジが険しい顔で教室に入ってきた。

  「あっ、トウジ、昨日はどうしたんだよ? みんな心配してたんだぜ。」

  「・・・・妹が、あのへぼロボットのおかげで怪我してもうた・・・。うちは親父もじいさんも研究所に勤めとるさかい、

   あの事件のあと、科学分析のために忙しゅうてここんとこ何日も帰ってこんのや。だから、わしが妹のそばについとったんや」

  「そうだったの・・・。もし、必要なら、あ、あたしも看病に行くわ。ミツコちゃんとは、顔見知りだから」

  「すまんな、委員長。うちは男所帯よって、細かいところまで目が行き届かんのや。時々は顔みせてやってくれんか」


   授業が始まる寸前、リエの前の席に少年が座った。

  「碇君、おはよう」

  「あ、お、おはよう・・・・」

  「昨日はどうしたの? 綾波さんも休んでいたけど、なんかあったの?」

  「僕はちょっと体調を崩していて・・・・・。綾波のことは・・・・知らない・・・・」

  シンジは目も合わせずに答えると、リエに背を向けてしまった。

  「綾波さん、今日も休みらしいわよ。いよいよもって怪しいわね」

    
  「そうそう。綾波さんの住所、調べておいたわ。ここよ」

  (リョウコ、少し元気になったみたい。あのことを私に話したんで、少しは気分がおちついたのかしら・・・・)

  「新駒沢7丁目? ここって、リエの家の近くじゃない!!」

  「そうなのよ。驚いたわ。でもね、あの辺って、通学路や商店街からかなり離れているから、全然行ったことないのよ」

  「へー、そうなの・・・・。ねえ、あの子のお父さんって、やっぱりNERVの関係者なのかなぁ?」

  「その可能性は大きいわね。でも、私は、お母さんの方に興味があるわ。やっぱり綺麗な人なのかしら?」

  「あの子、結構、綺麗だからね。でも、表情がないから・・・・・そう、お人形みたい・・・」

  「リョウコ、そんなこと言ったらかわいそうよ。あの子だって、ちゃんとした血の通った人間なんだから・・・」



  「そう言えば、トウジ、変な噂が出ているのを知ってるか?」

  「なんや?」

  「あいつ、碇のことだよ。NERVの司令の息子じゃないかっていうんだよ。あんな妙な名字、めったにないだろ?」

  「ああ、そうかもしれんな。けどな、司令だか辞令だかよう知らんが、息子がおっても、別に不思議でもあらへんやろ?」

  「それだけじゃないんだよ。あのロボットを操縦したのは、俺達と同じ14歳の子供らしいんだ。訓練もなしに突然、

  パイロットに抜擢されたらしい。それもNERVの上の方からの鶴の一声で・・・。これはひょっとすると、ひょっとするぜ」

  「なんやと!! あいつか!! くそっ!!!」

  「まあ、落ち着けよ。まだ、そうと決まったわけじゃないんだから・・・・」


  4時間目になる頃には、「碇シンジ=パイロット説」がクラス中に広まっていた。

  当のシンジは休み時間は独りで目を伏せてSDATを聞いている。


  4時間目の数学の授業中、リエは自分の端末の画面に、メールが届いているのに気づいた。

  「リョウコかしら? もうっ、授業中なのにぃ・・・・」

  メールはクラスメートの初瀬ユリコからシンジに当てたものだった。

  秘話機能を指定し忘れて同報モードになっているらしい。

  「碇君があの紫色のロボットのパイロットっていうのは本当? Y/N」

  リエは、シンジの背中がビクッと震えたのをみた。

  メールはたたみかけるように尋ねる。

  「見たっていう人もいるのよ。それでもしらを切る気?」

  「碇君があれを操縦していたんでしょ。そうよね? Y/N」

  シンジは迷っていた。

  先日もレイから守秘義務のことで指摘をうけたばかりである。

  答えてはいけないのは明らかだった。

  (・・・・・・守秘義務に違反すれば、NERVを解雇されるかもしれない・・・・もう、あれに乗らないで済む・・・

  こんなところで父さん達の道具としてこき使われて怖い思いをしつづけるなんて、いやだ。・・・僕はもう務めは

  果たしたはずだ・・・・。以前のように独りで自由に暮らせる第二新東京に帰りたい・・・)

  リエは、メールへの答えが「Y」と表示されたのをみた。

  その瞬間、シンジはクラスメート達に取り囲まれた。

  「あれ、なんていうロボット?」「動力は何?」「どんな武器を使うの?」「すごいよね」「どうやって選ばれたの?」

  「碇君がこの街を護ってくれたんだね」・・・・

  シンジは一瞬、何が起こったかわからなかった。

  「あ、その、あれはエヴァって・・・呼ばれているみたいで・・・・電気で動くんだ・・・」

  (みんなが僕のところに集まってきている・・・すごいねって、褒めてくれてる・・・こんなことは初めてだ・・・・

  でも嫌な気分じゃない・・・・。僕はひとに褒められるようなことをしたのかもしれない・・・・)

  いつのまにか休み時間になっており、数学の教師は職員室に戻っていた。

  「おい、転校生。ちょっと話がある。こっちこい!」

  「トウジ、やめとけよ。碇だってわざとやったんじゃないんだから。なんにでも事故はつきものだよ」

  「おい、転校生!! おまえがヘボな操縦しよるさかい、わしの妹が巻き添えくらって大怪我したんや。

  どうしてくれるんや?  ちやほやされたからって、いい気になるなよ!!」

  「そ、そんなこと言われても・・・・。僕だって、乗りたくて乗ったわけじゃない・・・・NERVのみんなに言われて

  仕方なく・・・」

  「なんやと!? 貴様は、中学生にもなって、自分の責任をひとに押し付けようとするんか? ああ、むなくそ悪い!!

  とにかく、わしはおまえをなぐらんと気が済まんのや。こんぼけ!ひとの大事な妹に怪我させよってからに!!」

 

  激昂したトウジに思いっきりなぐられて、鼻血を出して吹っ飛ぶシンジ。 

  (なんで僕が殴られなきゃいけないんだ・・・。僕だって精一杯やったのに・・・。僕は戦死していたかもしれないのに・・・。

  だから嫌なんだ・・・人と接するのは。・・・みんな、結局、自分のことしか考えてないんだ・・・・)

  「ちょっと、鈴原君、やめなさいよ!!」

  「鈴原、なんで碇君をぶつのよ? 碇君のせいだけじゃないでしょ。あやまんなさいよ!!」

  リョウコとヒカリは、そっぽを向いて机の上に腰掛けているトウジに迫った。

  「なんや、わしが悪いいうんか? ミツコはな、あいつのせいで痛い思いしてるんや!! 妹の仇とって、何が悪い!!」

  「あんたねぇ、悪いのは碇君じゃなくて、あの生命体でしょうが!! あの時、あたし、シェルターに入れなくて

   外でみてたんだけど、碇君のロボットも大破したのよ。命懸けで闘ってくれたのよ!!」

  「わしは、あいつに闘ってくれなんて一言も頼んではおらんからな。今度、あないな奴が襲ってきたら、

  わしがパチキかましたるわい!!」

  「あんた、何言ってんの?馬鹿じゃないの? 」

  「今なんて言うた? ひとのこと、馬鹿って言うたな!! 」

  「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ。あんた、そんなんだから、関西弁のジャージバカって言われんのよ」  

  「何っーーー!! 毎日、腐った大豆なんか食うてる奴にそないなこといわれたないわい!!」

  
  リョウコとトウジは普段からあまり仲が良くない。

  大阪と東京。この二つの大都市の下町育ちの二人の中学生は、第三者から見ると、性格は驚くほど似ている。

  もうなくなってしまった彼らの父祖の地に対する思い入れさえも。

    

  リエは、この騒ぎに紛れてシンジが教室からそっと出ていったのを見て、後を追った。

  「碇君・・・・」

  「あ、高橋さん・・・・。ははは・・・、格好わるいところ・・・みせちゃったね・・・。僕、喧嘩、弱いから・・・」

  「鈴原君、妹思いだから、気が立ってるのよ。本当の原因の、あの生命体に怒りをぶつけるわけにもいかないから・・・・。」

   あんまり気にしない方がいいわよ」

  「でも・・・・明石さんまで巻き込んで、なんか騒ぎが大きくなっちゃったみたいだし・・・」
   
  「・・・・・みんな、本当は怖いのよ・・・だから、必要以上に陽気に振る舞ったり、苛立ったりしてるの・・・・」

  「僕だって・・・・怖いよ・・・・。ここにいきなり呼び付けられて、その日と翌日の夕方に起動実験をやって、

   その数時間後に実戦に出て・・・。
  
   結局、僕が乗った方の起動実験は1度も成功しなかったから、ぶっつけ本番だったんだ・・・。

   もう一機のエヴァは、あの日の夕方に起動実験が成功したけど、暴走してパイロットが大怪我してたから・・・・」

  「でも、私は碇君が羨ましいわ。」

  「・・・・・なんで?・・・エヴァに乗るなんて、つらいことばかりだよ・・・・」

  「私たちは、自分達の未来が輝くのか、消えるのか、ただ息を呑んでみつめることしかできないから・・・・」

  
  リエは、まばゆい日差しの中、蒼天を仰いだ。



    つづく
   
   
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