7章 拡散
7.3 FICK'S ONE-DOMENSIONAL DIFFUSION EQUATIONS
1855年に Fickは拡散についての理論式を発表しました。彼は溶液中の物質移動と熱伝導
についてのアナログ解析に基づいて理論式を組み立てたのです。Fickは希釈溶液やガスの対流状
態の存在において、1次元の流れにおける濃度の薄い溶液原子の移動を下記の式で表現しました。
J:希釈溶液の原子や拡散の流れの速度
C:溶液の濃度(変数はxとtのみ)
D:拡散(拡散係数または拡散定数としばしば言います)
式(1)は単位時間・単位容積の溶液の局所拡散速度は溶液の濃度勾配に依存し、溶液の拡散係数
として定数を定義しています。式(1)の右辺がマイナスとなっているのは、溶液の濃度が低下する
方向に拡散の流れが進んでいくことを表わしています。式(1)はFickの1次式と呼ばれていま
す。
質量保存則から溶液の濃度変化は、拡散源や排出源の存在下で流れの変化に置き換えることができ
ます。
このため
式(1)は式(2)に書き直すことができ、1次元におけるFickの第2式の形になります。
溶液の濃度が低いと温度は一定と考えられるので式(3)は式(4)のようになります。
式(4)はFickの第2式としばしば呼ばれます。
Dの単位はcm^2、Cの単位は、atoms/cm^3となります。しばしばDはμm^2/hという単位で表
わすときもあります。式(4)は初期条件や境界条件を簡略化することで解くことができます。最も
用いられる解をを下記にに示します。
7.3.1 Constant Diffusivities
Constant Surface Diffusivity.
初期条件として t=0、C(x,o)=0
境界条件として C(0,t)=Cs、C(∞,t)=0
初期条件・境界条件を満足する式(4)の解は、次のようになります
Cs:不純物濃度 [ atoms/cm^3 ]
D :拡散定数 [ cm^2/sec ]
x :距離 [ cm ]
t :拡散時間 [ sec ]
erc:補誤差関数
Constant Total Dopant
トータルとして拡散させる不純物量(Qt---ケ/cm^2)を決めるような、薄膜がシリコンの表面にデポ
され、シリコンの中にだけ拡散すると仮定してください。式(4)を満足させる初期・境界条件を下
記のように決めます。
初期条件:C(x、t)=0
境界条件:
C(∞、t)=0
上記のような条件を満足する式(4)の解は、下記のようになります。
x=0とおくと、表面の濃度を得ることができます。
Qt:トータルの不純物量[ atoms/cm^3 ]
式(6)はガウス分布と呼ばれ、拡散条件は薄膜からのプレデポジションまたはトータルの不純物
量が決められたドーパントからの引き伸ばし拡散(Drive In)で決まります。アモルファス状態の中
にインプラした不純物原子の分布のガウス分布で概算できます(8章参照)。
式(7)から、拡散層へのトータルのドーパント量は、6.8×10E13ケ/cm^2となります。2重拡散を
用いるトランジスタ(プレナートランジスタと呼び、シリコンICの基本技術です)にとって、全体
の不純物量としては、1〜3E14ケ/cm^2であり、トランジスタのエミッター領域下の実不純物濃度は
7E11〜1E12です。原子の単原子層は1E15近辺です。そのため、近年のシリコンデバイスのアクティ
ブ領域では原子数が小さい状態のところを扱っているのです。
拡散条件で与えられる初期と境界条件から求まるフィックの拡散式の解から、上記のような単純な
場合を別にすると、複雑な数式で表現される拡散条件が存在します。しばしば用いられる数式表現と
現実的な応用例は、文献4で得られます。
拡散層のシート抵抗
PN接合を形成している拡散層のシート抵抗は、接合深さ(x)、不純物濃度( C(x) )に関する
下記の式で定義されます。
μ:多数キャリアの移動度 [ cm^2/V・sec ]
不純物濃度が 10E16[atoms/cm^3]以上の時は、多数キャリアの関数になります。
μeff:有効移動度 [ cm^2/V・sec ]
下記のように定義されます
Cとμの実験式の最近の結果は、以下になります。
**注意
不純物濃度が 10E16[atoms/cm^3]以上の時は、少数キャリアの移動度は、多数キャリアの
移動度と異なります。
N型シリコン:
(μn)n:N型シリコンの電子(多数キャリア)の移動度
P型シリコン:
(μp)p:P型シリコンのホール(多数キャリア)の移動度
拡散層の平均抵抗率ρは、下記になります。
拡散層の平均抵抗率ρは拡散層の表面濃度と推定される基板のドーパントの濃度に関係してきま
す。式(8)と式(11)から 表面濃度と平均電導度(1/ρ) <有効電導度と呼ばれます> 指
数、ガウス分布、補誤差関数のような簡単な拡散表現式で計算することができます。これらは、
Irvin曲線と呼ばれてきます。拡散の間、拡散源が存在している場合、表面濃度は常時一定であ
り、補誤差関数に従うと考えられています。シート抵抗と接合深さの測定から、補誤差関数で求めた
Irvin曲線から表面濃度を推定することができます。シート抵抗と接合深さと拡散時間がわかる
と、式(5)から拡散係数を計算することができます。しかしながら、補誤差関数から得られた不純
物濃度分布結果は、予想を越えた高濃度の表面濃度となったり、計算した拡散係数が間違っているこ
とがしばしばありました。初期(1960-1970)に発表されていた拡散に関わるデータはこの補誤差関
数を元に計算していたため不正確でした。Irvin曲線で計算した表面濃度が(2-4)E20以上の時、
拡散層として表面濃度をIrvin曲線を元に考えるのは正しくありません。一定量の表面濃度から
の拡散をCs>E19でIrvin曲線を用いて考えるとき、この結果に疑問をもつべきです。
****翻訳未完了→
不純部濃度が、接合深さ0.5μmの 現在使用されている計算技術を用いて(特に浅い接合を除く)
計算すから Irvin曲線は拡散現象を計算することに用いられていません。
←翻訳未完了****
拡散による分布が、ガウス分布や補誤差関数に正確に従うならば、Irvin曲線で表面濃度を計算
することができます。しかし 文献[9]によると、不純物濃度が 1E17〜1E18では30%程度ホールの
移動度が違っていることが判明しています。
接合深さとシート抵抗の測定は、簡単であり不純物分布測定に苦労することなく拡散層についての
重要な情報を与えてくれるので、拡散プロセスのモニターにしばしば用いられています。インプラ工
程にとって、アニールや拡散の後で、電気的活性(移動度とキャリア濃度の効果の合成)のチックに
シート抵抗の測定が用いられています。
7.3.2 Concentration-Dependent Diffusivity
(濃度依存拡散)
高濃度領域では、一定量の表面濃度拡散やトータルの拡散量が一定の拡散条件に近いとき、測定さ
れた不純物分布は、式(5)と式(6)に従います。これらの高濃度領域において、拡散係数は濃度
に依存した拡散現象となります。アンダーソンとリサックは非線形の拡散現象tなる計算結果を得まし
た。(式(3)) 長い計算解なのでこのセクションで関単に要約します。測定された不純物濃度分
布から拡散係数を求めるために用いられている方法についてもこのセクションで説明します。
しかし、コンピュータの助けを借りて、測定した濃度分布からの計算と初期条件と境界条件を式
(3)を用いた数値計算から拡散係数が求めらています。
概算計算解
濃度依存の拡散現象を含んだ式(3)は、式(12)の形になります。
Di:低濃度領域での拡散定数--内因性拡散(侵入型不純物拡散)
Ni:内因性不純物濃度(侵入型不純物濃度)
r :定数
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