解説

役名について

能の番組を見ると「シテ」「ワキ」「ツレ」などの文字が出てきます。
これは1つの曲目で、その人物の構成上の役割を示していて、能の様式の中で決められているものです。

●シテ

曲の中心人物、主役の事です。
能は前《まえ》、後《のち》の二部構成の曲が多いのですが、ほとんどの場合シテは前後とも1人の役者が勤めます。
しかし、前と後でシテの演じる役柄は同一人物とは限りません。
前のシテを前シテ、後のシテを後ジテと呼びます。

●ワキ

主役であるシテに対して、その相手をつとめたり、話の進行を担うのがワキです。
シテは男、女、神様、妖物《あやかし》、亡霊、精霊など様々ですが、ワキは常に男性で僧侶や旅人、武人、大臣などです。
シテは過去や地獄などの異空間からも出現しますが、ワキはほとんどの場合舞台の上での現世の住人です。

●ツレ

ツレとは連れ、お供の事です。単にツレと言った場合にはシテに属するシテヅレを表します。
シテの従者のような軽い役目のものも多いのですが、蝉丸《せみまる》のようにシテと同様に重要な役目のものもあります。

ワキに属するツレをワキヅレと呼びます。

●子方《こかた》

子方とは子供の勤める役の事です。役の上でも子供を表すこともありますが、天皇などの貴人も子方の役目の場合があります。
船弁慶《ふなべんけい》の義経も子方です。

●地《ぢ》

地とは地謡方の事です。舞台の右手奥に八人で二列に座って同吟します。
照明や、大掛かりな道具立てのない能の舞台において、地謡の役割は時の移り変わりや場面の転換、情景の描写などを担う重要なものです。

●後見《こうけん》

舞台の正面左橋掛かりの横に座ってシテの世話をします。
小道具を渡したり装束を整えたりする地味な役目に見えますが、シテの謡い総てから舞台の進行全体を把握していなくてはならない重要な役目です。昔は、シテが舞台上で倒れたりした場合、後見がすぐに後を引き継いでシテを勤め、舞台を続行することになっていました。

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