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ラテン系

 昼休み。
 オレは図書館へとやってきた。
 学校で中で、この場所ほど昼寝に適した場所はない。
 静かだし、空調もしっかりしてるし、空いてる椅子
もいっぱいある。
 その椅子を横に並べて寝るのだ。
 休み時間は、まだ40分もある。
 さーて、それじゃ、寝ますか。
 …と、人の寄りつかない奥の方へと移動したとき。

「なんだ、マルチじゃねーか」
 そこには、椅子に座ったマルチがいた。
 机に置かれたノートパソコン。
 そのマラカスを握ったまま、目を閉じて動かない。

 なにゆえ、ここにマラカスが…。


ネットは広大だ…

 机に置かれたノートパソコン。
 そのマウスを握ったまま、目を閉じて動かない。
 居眠りしてんのか…?
「……」
 いや、居眠り…なんてするわけはねーか、ロボット
だもんな。
 この場合、メインの電源が落ちてるといったほうが
適当だな。
 うん。

 液晶のモニターを見ると、
『ウィルスに感染しています。』
 と、いうメッセージが表示されていた。
「……」
 大丈夫か!? おい!


たこやき〜

 それにしても、ロボットのくせに、あったかいし、
ほっぺたも柔らかい。
 …むにむに。
 ホントによくできてるなー。
 ほっぺたをつねりながら思った。
「……」
 そのとき、オレの中に眠っていた『知的好奇心』が
ふつふつと騒ぎだした。
 よし。
 マルチの肌に使われている素材を研究しよう。

 まずは食感から。
 …ぱくぱく。
 ほっぺが柔らかなのは確認した。

 うわ〜! オレって一体!?


Jリーグは何チームだっけ?

「…あ、あのぉ、なにを?」
「うむ、こんにちのロボット工学の進歩というものに
ついてだな…、――えっ!?」
 いつの間に目を開けたのか、オレとマルチは、正面
から向き合っていた。
「……」
 きょとんとした顔のマルチは、ゆっくりと、視線を
オレの顔から自分の胸もとへと下ろしていく。

 そして、しっかりと鷲づかみされた自分のふたつの
ムネを見て、
「………」
 3秒間のフリーズ。
 そして、
 6球団のパリーグ。

 そうとう混乱しているらしい…。


ナイスショット!

「ほう。じゃ、マルチはいつもどんな夢を見るんだ?
やっぱり電気羊がとんだり跳ねたりする夢?」
「うーん。いろいろです。とくに新しく体験したこと
はよく夢で見ます。頭の中で、記憶を整理し直してる
からです」
「たとえば、さっきはどんな夢を見てたんだ?」
「さっきはですねぇ…」
「さっきは?」
「……」
「早く、教えろよ」
「は、初音のないしょですっ」
「なんだよ、それーーー」
「もうすぐ発売なんです〜」
 オイオイ。


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