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単なる聞き違いなのに…

 ドリンクでも買いに行こうと教室を出ると、廊下で
雅史と志保が喋っていた。
「よう、なに話してんだ?」
「いま、志保からうわさのロボットの話を聞いてたん
だ」
「ロボット?」
「そうよ。例のメイドロボ」
「え? メイのレイドロボ…?」

 ゲシッ☆!
 志保のかかと落としが決まった。


メイドロボはお土産を持ってくるのか?

 自分の家にお手伝いロボットがやってくるなんて、
ほんの5年ほど前までは、まさに夢のような話だった
のに、コンピュータ技術のめざましい進歩は、そんな
おとぎ話を、あっという間に、現実のものへと変えて
しまった。
 町へ出れば、霊柩車を見るのと同じくらいの確率で
目にすることができるし、メーカー直営の仏壇店に行
けば、ショーウインドウで飾られている最新型モデル
を見れるほか、そのメイドロボから直々に読経を受け
ることもできる。

 …ってそれは『冥途』なのでは…?


壁に耳あり

「で、メイドロボがどうしたって?」
 オレが訊くと、志保は『はあ?』という顔をした。
「あんた、もしかして知らないのぉ?」
 大きく目を開けて瞬きする志保。
「だからなんだよ? 誰かの家がメイドロボを買った
とか、そういう話か?」
「違うわよ! …はぁ〜、あんたって、ほんと情報に
ウトいわねぇ。いいわ! じゃあ、この志保ちゃんが
教えてあげる!」
 なにが志保ちゃんだ。

「今年の一年生にメイドロボがいるのよ。運用テスト
で生徒をやってるんですって。それも、来栖川の最新
モデルの試作機よ!」
「…へえ、そりゃ初耳ならぬ、センサー耳だ」
「…、あんた、本当は知ってんのね!! キー!!」


料理の名前だったかも?(笑)

「今年の一年生にメイドロボがいるのよ。運用テスト
で生徒をやってるんですって。それも、来栖川の最新
モデルの試作機よ!」
「…へえ、そりゃ初耳だ」
「こんな有名な話も聞いてないなんて、アンタ、耳垢
が詰まってんじゃないのぉ?」
「オメーが特別耳ざといだけだ。だいたい雅史も知ら
なかったんだろーが」
「いや、僕もサルサくらいは知ってたよ」
 って、踊ってどうする、大馬鹿者め。


最近の若者は口を開けて歩いているそうだ

 きょとんとした表情で顔を上げる。
 すぐ目の前にあるオレの顔を『………』と3秒ほど
見つめると、
「はにわわわっ!」
 慌てて、オレから飛び退いた。

 誰が埴輪だ!?


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