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嘘も方便

「叔父さんに手伝えって言われたの?」
「いえ、長瀬先生は、…夜も遅くなるし、危ないから
駄目だって言いました」
「その通りだよ。調査はかなり遅い時間になるんだ。
深夜までかかる。僕は家が近いから構わないけど…」
「それなら心配ありません。実は私、学校に住んでま
すから」

 なんでやねん!?(笑)


親子の絆

「それに家族が心配するよ。女の子だから、お父さん
だってうるさいだろう?」
「家には母親しかいないんですけど…、大丈夫です。
母はクロロホルムで一発ですから」

 見かけによらず、恐ろしい奴…。


カミングアウト

「生徒会役員だったら、太田さんともある程度は親し
い仲なんじゃないの?」
「ある程度…じゃ、ないです」
 そう言うと、瑞穂ちゃんは悲しげにうつむいた。
「香奈子ちゃんは、私のいちばんのお姉さまなんです。
中学校からの相思相愛なんです」
「あ…そう、なんだ」


真実はいつも悲しい

「…廊下で香奈子ちゃんを見かけたんで、私、いつも
の調子で声を掛けたんです…」
「で?」
「そしたら、そしたら香奈子ちゃん、一度はこっちを
見たんです。見たんですけど…、そのまま、無視して
行っちゃって…、私、何か怒らせるようなことをした
のかと思って、もう一度呼び止めたんですけど…」
 瑞穂ちゃんの瞳がじわりと潤んでいた。

「か、香奈子ちゃん、呼び止めた私の手を、払い除け
て…、それで、離せって、それに…」
 瑞穂ちゃんは握った両手の甲で、ごしごしと涙を拭
った。
 多分、そのあと太田さんは、とても口に出せないよ
うなことを彼女に言ったのだ。

「…香奈子ちゃん、香奈子ちゃんが…『ヒロイン三人
の内で人気投票最下位野郎!!』って…」
「…」

 俺は思った。
 それ以下の俺の立場は?(笑)


何を?(笑)

 目の前に瑞穂ちゃんが立っていた。
 不安そうな瞳で僕を見つめている。
 香奈子ちゃん、どうしておかしくなっちゃったの?
 瑞穂ちゃんが弱々しく僕に聞いた。

 くわえさせられたんだ。
 僕は答える。
 誰に? 誰が香奈子ちゃんにくわえさせたの? 私
の…私の大好きな香奈子ちゃんに、誰がくわえさせたの!?
 誰にって?
 僕は笑った。

 月島兄に、だよ。
 シ、ス、コ、ン。
 ほら、生徒会室にいるだろう。


金と銀

 私は違うわ!
 おんなじだよ。
 みんな、おんなじさ。そして、みんなおんなじこと
を彼女に言ったんだ。

 狂え、狂え、狂え、狂え、狂え、狂え、くるえ、く
るえ、くるえっ、くるえっ、くるえっ、くるえっ、く
るえっくるえっ、チョコボ〜〜〜ル〜。


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