[ 0005 ]

[ 前へ (Previous) |  目次 (Contents) ]

ディープな藤子・F・不二雄ファン?

「でも、みんなが知ってるのはおとぎ話のほうだろ?
恋物語版があるのは知ってる?」
 俺が訊くと、
「知ってるさ」
 あっさりと梓が言った。
「なんとか衛門って侍と鬼の娘の話でしょ?」
「ドラえもんだろ」
「21エモンだよ」
 俺の言葉を、初音ちゃんが苦笑しながらさらにボケ
た。


腹ぺこ・初音ちゃん

「以前に?」
「…うん。…こうやって、お兄ちゃんがわたしに抱き
ついて泣いて、…それを見たわたしは、こんなふうに
辛い気持ちになるの…」
「辛い気持ち?」
「…うん。今みたいに…胸が、…胸が締めつけられる
ような気持ちに…」
 初音ちゃんは、服の胸もとを、ぎゅっと握りしめて
言った。
「…それって、デジャブって奴じゃないかな」
「え? 冷しゃぶ?」
「…」


「To Heart」マスター・初音

「いきなりだったから、ちょっぴり驚いたけど、もう
気にしなくていいよ、お兄ちゃん」
 初音ちゃんはニッコリ笑ってそう言った。
「耕一お兄ちゃんって、こんなふうによく寝ぼけたり
するの?」
 くすくす笑いながら訊いてくる。
「うーん、そうでもないと思うけど…」
「ふふふ…、さっきのお兄ちゃん、まるで迷子の子供
みたいだったよ」
「迷子の子供?」
「…うん。そして、わたしがレミィ」

「…」
「…」


初音はなんでも知っている

「お風呂、…一緒に入ろうか?」
 ニヤけた笑みを浮かべて言った。
「えっ?」
「身体とか洗いっこしようか?」
 初音ちゃんは頬を真っ赤に染めると、
「や、やだ、お兄ちゃんのえっち!」
 ちょっぴり嬉しそうな、恥ずかしそうな複雑な表情
でそう言い返した。
「小さいときはよく一緒に入ったじゃないか」
「…わ、わたし、もう小さくないもん! でもお兄ち
ゃんのは、小さいもん」

 が〜ん!!!(謎)


リーフファン・初音ちゃん

「…そっか、キライか。…とほほ、俺、初音ちゃんに
嫌われちゃったのか。…俺ってえっちな奴だからな」
 俺はがっくりと落ち込んだ振りをして見せた。
「…あぅ…あの…、お兄ちゃん?」
「はあ〜っ…、俺、初音ちゃんにだけは、嫌われたく
なかったな」
「…お、お兄ちゃん…」

 騙された初音ちゃんが近づいてくる。
「…う、うそだよ。わたし、お兄ちゃんのこと嫌いに
なんてならないから…」
「ホントに?」
「うん、ホント」
「俺が、ちょっとえっちな奴でも?」
「うん」
「ちょっとどころじゃなくて、かなりえっちでも?」
「…う、うん」
「じゃあ、こんなことしても?」
 俺は鞄からノートパソコンを取り出すと、Hゲーム
を起動した。

「……リーフ系なら可だよ」

 初音ちゃんは、ポツリと呟いた。


わからないの…

 特に末っ子のこの子は、姉妹の仲でも一番甘えん坊
で、俺がこっちへ来てからというもの、何かと一緒に
居る時間を作りたがった。

 可愛い初音ちゃんになつかれ、悪い気がするはずも
なく、数日間そんな生活を送っているいつに、俺は、
自分の中で、この子の三人目の綾波レイになってあげ
たいという気持ちが育っていることに気が付いた。

 きっと、アニメの見すぎだろう。


[ 前へ (Previous) |  目次 (Contents) ]

[ 0005 ]