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柏木家の夜は更けていく…

「ねえ、ところでさ、みんなの前世の名前についてな
んだけど…」
 俺は、唐突に話を切りだした。
「千鶴さんは、『千鶴』と『エル』を足して、チヅル
エル、ヂズエル、で『リズエル』ですよね?」
「そ、そう言われれば、そうですね…」
 下顎に手を当てて、うーんと考える仕草をする。
「梓は、『梓』と『エル』で、アズサエル、で『アズ
エル』だろ?
「まあ…そうだな」
 梓は人差し指で鼻の頭をかいている。
「楓ちゃんは、『楓』と『エル』で、カエデエル、エ
デエル、で『エディフェル』だよね?」
「…そうですね
 楓ちゃんは俯いたまま、そう答えた。
「でも、初音ちゃんは『リネット』で、名前からは連
想できないだろ?」
「え? …あっ、本当だ!」
「だろ!? なんか訳があるのかなぁ〜」
「わたしだけ違う…。わたしだけ…」
 初音ちゃんが不安そうにそう呟く。

 しーん。
 食卓に沈黙が広がる。

「これはあくまでも推測ですが…」
 そう言い出したのは、千鶴さんだった。
「初音は前世で、リセットちゃんだったとか…」
 しーん。
「そ、それとも、リゾットが好きだったとか…」
 しーん。
「猫だけに、タマタマ〜!」
 しーん。

 どれだけの沈黙が過ぎ去ったのであろうか。
「さ、もう寝ようか…」
 そう切り出したのは、俺だった。
「そうだな」
 俺の言葉に反応し、梓は立ち上がった。
「…」
 楓ちゃんは既に部屋から出ようとしていた。
「じゃあ、千鶴お姉ちゃんお休みなさい〜」
 初音ちゃんは苦笑いを浮かべながら、そそくさと部
屋から出ていった。
 ぽつんと一人残される千鶴さん。

 かくして、柏木家の夜は更けていくのであった。


ジャンケン 【千鶴VS梓】編

「チョキしか、出せないんですぅ」
 そら来た!
 千鶴姉はジャンケンをする時、必ずこう言う。もち
ろん相手を撹乱させるためだ。千鶴姉はもちろんチョ
キなんか出さない。ということは、こちらがパーを出
せば、悪くても引き分けにはなるということだ。よし、
こちらは、パーを出すぞ。

「ジャン、ケン、ポン!」
 あたしは、パーを出した。
 千鶴姉は…。え? チョ、チョキを出してるぅ。
 が〜ん、負けた…。
「あ〜あ、ちゃんと『チョキしか、出せない』って言
ったのに…。本当、持つべきものは素直な妹よねぇ」
 千鶴姉は勝ち誇ったようにそう言った。
 うう、何も言い返せない〜。


ジャンケン 【千鶴VS楓】編

「チョキしか、出せないんですぅ」
 千鶴姉さんはそう言った。いつもの手だ。でもこん
な手に引っかかるのはもはや梓姉さんだけなのに…。
 はぁ…、我が姉ながら情けない。
 さて、今回はどうしようかな。

「ジャン、ケン、ポン!」
 私は、チョキを出した。
 千鶴姉はパーを出している。
 私の勝ちだ。
「か、楓! もう一回、もう一回勝負しよ! ね? 
ね!?」
 はぁ…、我が姉ながら情けない。


ジャンケン 【千鶴VS初音】編

「チョキしか、出せないんです」
 千鶴お姉ちゃんはそう言った。千鶴お姉ちゃんはど
うしても勝ちたい時、こう言って相手にグーを出させ
て、自分はパーを出して勝とうとするの…。
 も〜、本当にしょうがないなぁ…

「ジャン、ケン、ポン!」
 わたしは、グーを出した。
 千鶴姉はパーを出している。
「初音、私の勝ちね! じゃあ、夕飯の支度お願いね」
 これだもん、勝つわけにはいかないよねぇ(笑)


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