研究テーマ->音楽とゆらぎ->周波数成分を解析する際の問題点  
  周波数成分を解析する際の問題点について記述し ています。  
フーリエ変換の精度
 ゆらぎの分析には、フーリエ変換という手法を用います。フーリエ変換は、任意の波を、サイン波とコサイン波の組み合わせに変換するためのアルゴリズムです。しかし、正確に、波が各周波数へと分解されているわけではありません。
たとえば、次のような、サイン波だけを含むWAVファイルを用意します。
「ゆらぎ解析君」を使用して、解析を行うと、下の左ようなグラフが表示されます。
「ゆらぎ解析君」による結果 理想の結果
「ゆらぎ解析君」による結果で、左端近くの、山が高くなっている部分が、サイン波の周波数だと思います。フーリエ変換で正確に分解できたとすると、「理想の結果」のグラフのように、サイン波の周波数の部分だけが高くなっていて、あとの部分は、ゼロになっていなければならないはずですが、「ゆらぎ解析君」のグラフではそうなっていません。同じWAVファイルをAudacityでも分析してみると、下記のようなグラフが表示されました。左は「矩形ウィンドウ」で表示したもので、「ゆらぎ解析君」による結果とほぼ同じようなグラフになっています。右は、「Hanningウィンドウ」で表示したもので、「理想の結果」からは遠いですが、サイン波の周波数の部分から離れたところはゼロになっています。Audacityのヘルプには説明がありませんでしたが、Hanningとはフィルターの名前で、結果を補正するのに使用されているものと思われます。
サンプル数による問題点
 フーリエ変換を行う際、計算式に与えるサンプル数を変更すると、同じWAVデータでも、サンプル数が 多いほうが、より「1/fのゆらぎ」に近い形で結果が表示される場合があります。これは、まだ納得できるのですが、その逆で、サンプル数が少ないほうが、より「1/fのゆらぎ」に近い形で結果が表示される場合があります。
(下記のグラフは、対数グラフではなく、通常の形式で表示したグラフです。)
ジャワの宮廷ガムラン クタワン・プスポワルノ
(サンプル数 2048)
ジャワの宮廷ガムラン クタワン・プスポワルノ
(サンプル数 8192)
ブルガリアンボイス 夜の集会 
(サンプル数 2048)
ブルガリアンボイス 夜の集会 
(サンプル数 8192)
ショパン 別れの曲 
(サンプル数 2048)
ショパン 別れの曲 
(サンプル数 8192)
ゆらぎが音楽の良し悪しを反映していないという問題
 周波数成分のグラフを見て、その形から、その音楽の良し悪しを見ることには、無理がります。周波数成分のグラフは、ゆらぎの度合いを示しているに過ぎません。たとえば、ある音楽を周波数成分を分析した結果と、その音楽を逆再生した場合の周波数成分を分析した結果は、同じになります。もし、ゆらぎが、音楽の良し悪しの特徴をとらえているとすると、普通に聞くと心地良い音楽を逆再生すると、必ず心地よい音楽になるということになりますが、そうでは無いことは明らかです。