研究テーマ->音楽の雑学->可聴域と音程の判別能力
可聴域と音程の判別能力についての情報を提供します。(このページでは、音の高さを示す言葉として「音程」という言葉を使用しています。正確には、「音高」というべきなので、気になる人は、「音程」の部分を「音高」に読み替えてください。
 
 
 
可聴域とは何か?
可聴域について、あえて説明するのもナンですが、可聴域はどの程度まで高い音や低い音が聞こえるか、ということです。具体的には、周波数(単位はヘルツ)で計ります。可聴域は人によって異なります。たとえば、私の可聴域は、11Hzから22049Hzまでです。つまり、低い音は11Hzまで、高い音は、 22049Hzまで聴こえるわけです。
可聴域は、歳をとると、だんだん狭くなっていきます。高い音や低い音が聴こえにくくなっていくわけです。耳が疲れてくるわけですね。なんでも、耳の中にある毛細なんとかが、ヘタってくるらしいです。
これを利用したものが携帯のモスキート音です。モスキート音については、こちらを読んでください。
 
一般的な人の可聴域はどれくらい?
人間の可聴域はだいたい20Hz〜20,000Hzぐらいで、かなり個人差があるそうです。たしか「トリビアの泉」で見たのだったと思いますが、若い人にしか聴こえない高い周波数の音をコンビニの前で流して、コンビニ前にタムロする若い衆を追い払う仕組みというのもあるらしいです。
 
 
音程の判別能力とは何か?
人間がもつ耳の能力として考えると、「どのくらい高い音、低い音まで聴こえるか」という以外に、どのくらいの音程の差まで聞き分けられるか、という能力があるはずです。たとえば、ドレミの、ドの音とレの音の違いを聞き分けられない人はいないのではないかと思います。(たぶん、SMAPの仲居クンでも、聞き分けられるのではないかと思います。)しかし、ドの音と、ちょっと高いドの音だとどうでしょう?バイオリンなどの弦楽器では、ジャストのドの音以外に、ちょっと高いドの音、微妙に高めのドの音など、いろいろと出すことが出来ます。このちょっと高い音が、どの程度の差まで聞き分けられるのかにも個人差があります。音程の差も周波数で表すことができますが、たとえば、440Hzと、441Hzの音を続けて聞いて、2つが違う音だと認識できる人はいないはずです。440Hzと、460Hzであれば、多くの人が聞き分けられるはずです。
 
 
実際に調べてみました
可聴域と音程識別能力を測定するソフトを配布し、アンケートを取ってしらべてみました。(このアンケートの結果は、ソフトを使用し、自分の可聴域を測定し、アンケートを送信すると、参照することができます。)
アンケート結果の信憑性を判断する方法はありませんが、明らかにおかしいと思われるものを除いて、集計してみました。
回答者数は私も含めて138名でした。項目により、有効な回答数は異なります。(未回答を許可しているため、けっこう空欄がある状態です。)
 
可聴域の集計結果
可聴域の高いほうは、9111Hz〜22099Hzの範囲で、有効な回答者の年齢の幅は5歳から56歳でした。平均は17915Hzでした。グラフにすると、下のような 感じになります。横軸は年齢、縦軸は周波数です。年齢に関して、 「歳をとるほど、高い音が聴こえにくくなっている」と思っていたのですが、グラフを見る限り、特に年齢による傾向は見られませんでした。ただ、50歳以降のデータがほとんどありませんので、年齢による可聴域の低下は、50歳以降や60歳以降など、かなり高年齢になってから始まるのかもしれません。なんとなく30代後半の年齢層で、すこしグラフが落ち込んでいるように見えますが、これもデータが少ないせいでしょうか。。。

可聴域の低いほうは、11Hz〜73Hzで、有効な回答者の年齢の幅は5歳から56歳でした。100Hz以上は、データの信憑性が薄いので、除外しましたが、もしかしたら本当に、100Hzくらいまでしか判別できない人がいたのかもしれません。傾向として、20代、30代でバラつきが多いという感じがします。この年代は、「職場で活躍している若者」という世代ですが、なぜバラついているのかは謎です。可聴域の低いほうも、年齢による傾向は無い感じです。「年寄りの地獄耳」と言って、年をとっても、離れたところで低くボソボソしゃべる声は、よく聞こえるという話を聞いたことがありますが、やはり、低い音が聴こえにくくなるということは無いもかもしれません。ただ、これも、50歳以降のデータがほとんどありませんので、なんとも言えませんが。。。

 
音程識別能力の集計結果
音程識別能力に関しては、セント単位(半音の100分の1)で測定するようになっています。55HZ,110Hz,220Hz, 440Hz,880Hz,1760Hz,3520Hz,7040Hzの周波数帯で別々に測定できるようになっていますが、測定に手間がかかるため、収集できたデータはあまり多くありませんでした。もっとも多くデータが集まったのは、880Hzの周波数帯です。おそらく、人間の耳が一番能力を発揮するのも、この周波数帯です。グラフにすると下のようになりました。横軸はセントで、縦軸は回答者数です。

結果のグラフでは、歯抜けのような感じで、横方向の変化が連続的になっていませんが、これはソフトの特性によるものだと思います。(ソフトの特性上、2セントや4セントなど、偶数の結果はでないのだと思います。)1セント以下の識別能力をもつ人がいる場合は、0セントと判定されることもありますが、この周波数帯で0セントと判定された人はいませんでした。意外なことに1セントまで識別できる人の人数が一番多かったです。ということは、半音を100分割して1セントにしているという手法は、ある意味、合理的なのかもしれません。(この人数が少なければ、もっと荒く分割しても良いことになります。)
 
楽器経験による識別能力の違い
ここからが、アンケート本来の目的です。「専門の音楽教育を受けている人や、楽器経験のある人は、そうでない人よりも、音程の識別能力が高いのか?」という疑問について、結果をみてみたいと思います。
アンケートではどのような音楽教育を受けたかや、楽器経験が何年くらいあるかという質問項目が設けてありました。両方するのは面倒くさいので、とりあえず、楽器経験について集計してみました。
楽器経験なし 10年未満 10年以上
上の3つのグラフは、先の識別能力のグラフを、楽器経験に応じて、表示したものです。楽器経験が長いと、識別能力の高い人の割合が多くなることが分かります。(というか、楽器経験に応じて、極端に識別能力の低い人がいなくなります。)これは、識別能力は生まれつきのものだけでなく、訓練によって高められる可能性もあるということを示しているのだと思います。