エコカーって何だろう 2012/03/05





再び自動車の話題です。
以前、車の整備ミスの話題を書きました。
その後の販売店の対応はというと、私をうんざりさせるのに十分なものでした。
盛んに謝るので、てっきり自分たちの責任を認めたのかと思ったら、
因果関係がはっきりしないので、責任は認めないといいます。
では、あななたちは責任を認めるつもりがないのに謝罪するのですか?矛盾していませんか?
と聞くと、無答(ダンマリ)を決め込んでしまいます。
一事が万事こんな調子で、私は呆れてしまいました。
このような人たちに、今後の安全と安心を期待することはできません。
私は車を手放すことにしました。

とはいっても田舎暮しの身、車がないと何かと不便です。
次の車は何にしようかと、いくつか販売店を回りました。
幸い、各社さんとも、
ウチでは絶対そんなことはしません、ぜひウチでやらせてください!
と熱心に対応してくれて、楽しいクルマ選びをすることができました。
各社の営業さんに心から感謝します。
そして購入したのが写真の車です。
リアガラスにいろいろなものが映り込んで、面白い写真になりました。
この写真を見て、直ぐに車種がわかった人は、なかなかの自動車通です。
フォレスターよりふたまわりほど小さな車です。

今の世の中、何をするにも省資源、省エネルギーは避けて通れない道です。
車だって例外ではありません。
省資源、省エネルギーを徹底するのに、一番効果的なのは「車に乗らないこと」
とはいうものの、いったん便利になってしまった生活はなかなか元には戻せません。
だったら、せめて省資源、省エネルギーのクルマに乗ろう!
というのが、世界の大きな流れになっているのです。

日本国内では、ハイブリッド車がブームと言ってもよいくらいに良く売れています。
トヨタのプリウスや、ホンダのフィット・ハイブリッドなどの省燃費性能は驚異的で、日本が世界に誇る技術といえます。

ここでちょっとばかり、車が何にエネルギーを使っているのか、おさらいをしてみましょう。

まず、誰もが気にするのが燃費です。
車は、燃料(ガソリンや軽油)を燃やして仕事(=力学的エネルギーと等価)を得るわけですが、このときの熱効率(燃焼によって発生する熱のうち、仕事に変換できる割合)は、おおざっぱに言って3割から4割程度、半分以上のエネルギーは熱として大気中に逃げていってしまいます。
ようやく得た仕事で車を走らせます。このとき、仕事が運動エネルギーに変わります。
このままずっと一定の速度で走り続けるのなら、それ以上の仕事は要らないはずですが、実際には空気抵抗やタイヤの転がり抵抗などがあり、仕事を加え続ける必要があります。
そして止まるとき・・・ブレーキをかけると、せっかく蓄えた運動エネルギーは熱となって大気中に捨てられてしまいます。
車のブレーキって、運動エネルギーを熱に変換する装置なんですね(もったいない)

まとめると、
  (1)熱効率の向上
  (2)抵抗の低減
  (3)運動エネルギーの回収
の3点が実現できれば、車の燃費は良くなるはずです。

で、ハイブリッド車はどこを改善しているかというと、主に(1)と(3)です。
エンジンは(車のエンジンに限らず)最も熱効率の良い出力が決まっています。
ところが車は街中をトコトコ走ったり、高速を飛ばしたり、山道を登ったりしなければなりませんから、 出力一定というわけにはいかず、常に出力を高めたり低めたり変化させなければなりません。
どうしても熱効率が悪くなります。
そこで、
エンジンの最も熱効率の良いところだけを使うようにしよう!
そうすると、トコトコ走っているときは出力が余るから、余った出力で発電機を回してバッテリーを充電しよう!
逆に、加速するときや坂を登るときは出力が足りなくなるから、充電した電気でモーターを回して補おう!
さらに、減速するときは、ブレーキのかわりに発電機を回せば運動エネルギーを回収できる!
バッテリーの残量が十分にあるときは、エンジンを止めてモーターの力だけで走ってしまおう!
というのがハイブリッド車のアイデアです。
実に賢い。

しかし、賢いハイブリッド車にも欠点がないわけではありません。
ハイブリッド車は(2)についてはお手上げです。
ハイブリッド車は、普通のエンジンや補機類以外に、重いバッテリーやモーターを積んでいますから、どうしても車重が重くなってしまいます。
重い車はどう頑張っても軽い車より抵抗を少なくすることはできません。
メーカーは、空気抵抗を改善したり、転がり抵抗の少ないタイヤを開発したりと努力していますが、同じ技術を軽い車に使えばそちらも改善するわけで、重い車が有利になる状況は永久に生まれません。
ハイブリッド車で高速道路を走り続けたらどうなるでしょう??
大きな出力が必要になるとモーターが頑張るわけですが、バッテリーはそんなに長くは持ちません。
バッテリーが尽きたハイブリッド車は、ただの重くて抵抗の大きな車になってしまいます。高効率は期待できません。

ハイブリッド車の優位性が際立つのは、(a)頻繁に充電できる、(b)抵抗の影響が少ない、(c)他車が頻繁に運動エネルギーを捨てる、というような走行パターン。すなわち、ちょっと走っては直ぐに止まる、大してスピードは出さない(出せない)、ストップ&ゴーの多い市街地の走行が得意なわけです。
ハイブリッド車は、日本の交通事情に適した車だということがわかります。

ところで、これまで燃費の話ばかりを書いてきましたが、実際に車が使うエネルギーはこれだけではないことをご存知でしょうか。
車を作るには資源とエネルギーが必要です。車のボディを作る鉄は、鉱山で鉄鉱石を掘り出してから、船で運んで、製鉄所で精錬・圧延して、そして自動車工場に運び込んで、・・・こうしたプロセスの全てで、資源とエネルギーの消費を考えなければなりません。同様にガラスやプラスチックも、素材生産の段階から合計して考える必要があります。
また、役割を終えた車も資源やエネルギーを消費します。解体やリユース、リサイクルの作業を行うには資源やエネルギーが必要なんですね。
省資源、省エネルギーという観点で捉えるには、こうした生産や廃棄のことも忘れてはなりません。

これらを考えると、ハイブリッド車は旗色が悪くなってきます。部品点数は普通の車よりも多いですし、高効率のモーターやバッテリーを作るには、ネオジウム、コバルト、リチウム、ニッケルといった希少資源が必要です。
ハイブリッド車は、走行時の燃料消費が少ないという優れた特性を持つ一方で、その生産や廃棄の場面では、より多くの資源やエネルギーを消費するという側面を持っているのです。
ですから、走行距離が少なく、ちょっとしか乗らない人には、ハイブリッド車は宝の持ち腐れ(資源やエネルギーの無駄使い)になってしまう可能性があるのです。
適材適所という言葉があります。このことはハイブリッド車についてもそのままあてはまります。巷(ちまた)を走っている車を、何でもかんでも全てハイブリッド車に置き換えれば省資源、省エネルギーにつながるかといえば、そうではないんですね。
ハイブリッド車が優れた特性を持つことは間違いありません。しかし、その特性を生かすには、それが優位な場面で使う(特性を生かせる人が買う)ことが肝心なのです。

一方、世界的にはダウンサイジングという大きな流れがあります。
誰が考えてもわかることですが、
作るときに少ない資源で済み、走っても燃費が良いのは小さくて軽い車です。
加速も減速も、空気抵抗やタイヤの転がり抵抗も、車が小さくて軽ければ、それだけ少ない仕事で足ります。当然、二酸化炭素の排出量も少なくなります。
だから、ダウンサイジング。
ヨーロッパの主だったメーカーは、だいたいこの方向に向かって進んでいると聞きます。
小型のボディ、小型のエンジン、高効率のトランスミッション。
BMWの1シリーズやアウディのA1は、小さな車ながら品質を高めて、大きな車から乗り換えても満足できるように促していますし、VWのポロは、高級とはいえないまでも、小さい車=安物、という固定観念を払拭(ふっしょく)してくれます。

ダウンサイジングに関しては、日本は一歩も二歩も出遅れた感がありますが、そのかわり、日本には軽自動車があります。
軽自動車は、一見すると自動車としては中途半端に見えますが、ところがどっこい、実際にハンドルを握ってみると、これが実によく走るし、十分すぎるくらい室内も広い。これで何をか言わんやです。
特に公共交通機関が貧弱な地方都市や農村部では、軽自動車は市民のトランスポーターとして重要な役割を担っていると聞きます。

いずれにしても、大きくて立派な車が、贅沢=幸せ=成功の証、というような価値観を表す時代は、もはや終わったといっていいでしょう。

新しい車が我が家にやってきて、約3ヶ月、3千kmほどを走りました。
走行距離が比較的少ないのは、最近は自転車に乗る機会が増えたから。

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