あの背筋の凍るような大災害(東日本大震災)からほぼ半年が過ぎました。
幸いにも私が住む千葉県茂原市は被害が少なく、
以前と変わらない平穏な時間が過ぎています。
しかし、被災地では、明日の希望を持てないまま、寒い冬を迎えようとしている人たちが大勢いると聞きます。
TVなどの報道を見ていると、震災直後は津波に関する報道が大部分だったのに対し、
ここ数ヶ月は、福島の原発事故ばかりがクローズアップされています。
もちろん福島の事故は人類史上最悪といってよいほどの原子力事故ですから、
その経過をしっかり伝えることは社会的に意義のあることです。
しかし、福島の事故の陰に隠れ、
宮城県や岩手県などで地震被害、津波被害にあった人たち、
あるいはそれ以外の地域でも、多くの人たちが被災されているにもかかわらず、
こうした人たちへの支援や復興に関する報道が大変少ないことに不安を覚えます。
TVを見る人の大部分、つまり被災していない人たちの関心事が、自分たちに被害が及ぶかもしれない放射線、すなわち原発事故だからなのでしょうか。
ところで私は、今年の6月、新しい車を買いました。スバル・フォレスターです。
定番の4WDで、野へ山へと動き回る私のよき相棒となるはずでした。
「なるはずでした」という書き方が微妙なところですが、
確かに初めの数ヶ月は私のよき相棒として活躍してくれました。
しかし購入から4ヵ月後、信じられないような事件が起きました。
10月16日の日曜日のことです。
朝一番、車を買った市内の販売店でエンジンオイルの交換を行いました。
走行距離はようやく4000km。まだ新車と言っていい状態です。
当日は「お客様感謝デイ」で店内は賑わっていました。
整備士に車の鍵を預け、店内で待つことしばし。
「作業が終わりました。点検でも異常はありません」
私は車を受け取り、いつものように走り出しました。
ところがどうも変なのです。車内が妙にガソリン臭い。
整備工場の中で他の車の排ガスでも吸ったのか??(たまにそういうことがある)
そのうちに臭いは消えるだろうと、大して気にもせず、
家族を乗せてスーパーマーケットに買い物に行きました。
ところが臭いはいよいよ強くなって家族は気分が悪いと訴え始めました。
コーナーを曲がるたびに猛烈なガソリン臭がしてきます。
これは本当に変だとボンネットを開けてみると・・・
唖然!!!
私は一瞬、我が目を疑いました。
エンジンルーム内全体がオイルでべろべろ。
バッテリー、エンジン、その他もろもろの補機類まで、
まるでバケツでオイルを撒き散らしたかのようなむちゃくちゃな油まみれ。
私ははじめ、なぜこのような事態が生じたのか理解できませんでした。
しかし数秒後、事態を掌握(しょうあく)しました。
エンジンオイルの注入口が開いている!!
エンジンオイルを交換した際、整備士がオイル注入口のキャップを閉め忘れたのです!
むちゃくちゃな量のオイルは、ここから噴出したエンジンオイルだったのです。
車内で臭っていたガソリン臭は、
ここから噴出したガソリンがエアコンの吸入口を通って車内に進入したものでしょう。
オイルキャップの閉め忘れなんて前代未聞。
こんな話は聞いたことがありません。
直ちに整備工場のチーフを呼び出して状況を見せました。
「キャップの閉め忘れなんてこんな単純ミス、子どもだってやらないぞ」
「私も初めて見ました」
「ふつう整備の作業は二人で確認しながら行うものだが、おたくの会社ではやっていないのか」
「上まわりはやっておりません」
「えっ・・・・・」← 私が絶句している様子
人はどんなに気を付けていても、必ずどこかでミスを犯します。
慎重に作業を行えばミスを減らすことはできますが、
完全にゼロにすることはできません。
ですから、人はミスを犯すものだということを前提に、
二重三重の防護策を作ります。
こうした考えをフェイルセーフと呼びます。
JRの職員が、作業を指差して確認したり、
声に出して確認するのもこうした安全策のひとつです。
自動車は人の命を乗せて走っていますから、
たとえねじ1本の締め忘れでも重大な事故につながる危険性があります。
だからフェイルセーフは常識であり、
作業を二人で確認し合うことが広く行われているのです。
ところがこの販売店では、
こうした安全のための対策が行われていませんでした。
なぜでしょう。
エンジンオイルの注入口はボンネットを開ければすぐ目の前にあります。
オイルキャップは派手な黄色い色をしていますから、あるかないかは一目瞭然です。
恐らく、キャップを閉め忘れるなどということははじめから想定していなかったのでしょう。
あるいは、二人で確認するのは手間がかかるからと、
作業の効率を優先させていたのかもしれません。
本当のところは作業マニュアルを作った人たちに聞いてみなければわかりませんが、
いずれにしても、「間違えるはずがない」と、甘く考えていたことだけは確かでしょう。
そしてミスは発生しました。
原状回復させます、クリーニングをさせてくださいというので、
車をそのままにしておいても仕方がないので、
掃除をしてもらうことにしました。
夕方、クリーニングを終えた車が戻ってきました。
見た目はきれいになっているようです。
バッテリーは大丈夫ですか??
ベルトは大丈夫ですか??
私はいくつかの部品を指差して質問をしました。
大丈夫です!という言葉を信じて車を受け取りました。
ところが話はこれで終わらなかったのです!!
翌日は何ともなく走ったものの、
翌々日(つまり火曜日)、通勤のために車に乗ると、
ハンドルがガクガクして真っ直ぐに走りません。
パワーステアリングに異常が生じていたのです。
200mほど走ると次第に症状は軽くなってきましたが、
安全に走ることのできる状態ではありません。
これでは遅刻してしまうと、慌てて自転車に切り替えて職場へ向かいました。
風邪気味だったこともあり、自転車で30分の道のりは辛かった。
真っ赤な顔をして到着した私を見て同僚は笑いましたが、
事情を説明するとみな一様に驚いていました。
世の中にはさまざまな事故が発生しますが、
全くの偶然で起こるような事故は意外に少ないものです。
事故の大部分は人為的なミス(判断ミスや作業ミス)によって誘発されるものです。
ですから、しっかりした対策を講じれば、
多くの事故を未然に防ぐことができます。
一番怖いのは、「たぶん大丈夫」という根拠のない合理化(思い込み)です。
これを読まれた方は、ぜひフェイルセーフを実行してくださいね。
写真は2011年08月24日に撮影した対流雲の成長と衰退の様子です。
熱上昇流(サーマル)によって成長した雲が、
上昇流の停止によって消滅していく姿を捉えています。
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