仙丈岳
(3,033m) − 長野県
1999.09.26 (日)
山ある記
天候:晴れ
台風一過の土曜の東京は30度まで気温が上がり夏へ逆戻り。日曜は山へ行くぞと、晴れ上がったた空を見ながら布団を干したり、こんな日じゃないと普段はできない諸々の雑事を済ませて夜を待つ。今回狙いを付けたのが仙丈。去る8月1日に北岳へアプローチした時と同じルートで入山できるし、その際に北沢峠行きの交通アクセスも下調べをしておいたから安心だ。
早目に東京を発ち、深夜0時過ぎには北岳の麓・広河原の駐車場に着いた。山梨・芦安村からの南アルプス林道は夜叉神トンネルをはじめ長短のトンネルが20ほど連続する狭く長い道(トンネルも狭く、対向車と擦れ違うのは厳しい。路面の舗装がちゃんとしていないので段差があり、水が溜まっているので注意)であるが、この路のおかげで気楽に日帰り登山なんかも出来てしまうのだから文句は言えない。深夜は対向車もなく寂しい峠道だったが、夜叉神トンネルを抜けた直後、満月の月明かりの夜空に左・間ノ岳、右・北岳が浮かぶ姿は美しかった。
駐車場には既に多くの車が静かに停まっていた。月明かりで空が明るすぎて、前回見えた星空は残念ながら見ることは出来なかった。車中で夜明けを待つ。最初は毛布一枚に包っていたが、夜明け前に急に冷え込んで思わずシュラフに潜り込んだ。
芦北沢峠行きの安村営バスが出発するのが6:50。バスの切符の発売は6時と読んで、丁度6時前には目を覚ます。往復の切符を購入し(往復
\1,500、荷物20リッター超を含む)、既にバス待ちで長くなった列の後ろに並ぶ。皆さん朝から気合が入っている。朝は結構冷え込んでバス待ちも少々寒くて辛かった。
計5台のバスは目いっぱいに乗客を詰め込んで北沢峠に向かった。晴天の下、野呂川沿いの絶壁の林道を一路、仙丈岳と甲斐駒ヶ岳へのルートの玄関となる峠をバスは目指す。このバス、カーブの連続を左右にロールしながら、結構飛ばすのでおっかない。このまま谷に落ちるんじゃないかと本気で心配になった。が、なんとか無事に峠に着く(10.2kmの道のりを約25分で)。
トイレを済ませ早速、出発。入口の案内板には片道4時間半とある。甲斐駒も同じコースタイムが書いてあった。効率良く百名山を2つ攻略するには、この峠を基点にするのがベストだろうが、生憎翌日は仕事なので甲斐駒は行けず日帰りだ。
7:20 北沢峠を出発(標高2,030m)。
7:45
2合目。ここまでは足慣らし。ここから急登になる。木陰のガレた道をひたすら歩く。
8:25
大滝頭(5合目)。東に鳳凰三山、その右には北岳がよく見える。気温15度。
9:05 小仙丈(標高2,855m)。ハイマツの間を北寄りの冷たい風に煽られながら登り切ると、正面には仙丈のカールが広がる。ここからの展望も結構いい。パノラマ撮影(山頂での撮影は人が多くて断念)。風が止むと日差しが暖かい。気温16.3度。
小仙丈からのパノラマ。矢印キーで360度の映像(QuickTime
Movie: 163kB)
小仙丈から仙丈 (62kB)
藪沢側のカール(59kB)
9:40 小仙丈から仙丈へ発。写真撮影に時間をかけすぎた。
9:55 仙丈小屋へ下りる道との分岐点。
10:10
仙丈岳山頂。小仙丈から北斜面を巻くように登っていくと、馬の背の色付き始めた木々が見下ろせる。藪沢側のカールは小仙丈から見たカールとは違い、岩の露出が多く荒々しい。360度の展望はまさに「絶景かな絶景かな」と五右衛門じゃないが、つい言ってしまいそうなくらい素晴らしかった。(歌舞伎「桜門五三桐」で石川五右衛門が京の都を一望する東山の南禅寺の山門で大見栄を切る名場面での台詞)
台風一過で天気は良いはずと、狙って来たという大先輩にあの山は槍、穂高、立山、後立山、妙高、などとぐるり一周、山名をご教示いただいた。山頂は多くの登山者で賑わっていたが、皆その展望に感激の声を上げていた。いい顔をしている。山はこれだから良い。
10:35
下山開始。馬の背方面に下る。登りで抜きつ抜かれつした地元山梨の方(Bさん)と一緒に下ることに。話をしながらガレ場を下るとすぐ仙丈小屋。立派な小屋に改修中。Bさんが登りの途中で会った仙丈小屋の工事関係者の話だと、前日土曜は午後までは天候は良くなかったらしい。おかげで小屋の資材をヘリで上げたのは午後3時頃だったとか。台風一過で平地は良く晴れていても、山も良いとは限らないという良い例であった。
11:20 馬の背ヒュッテ。ダケカンバの紅葉が始まっている。小休止。
11:50
5合目。ずっと緩い下りを歩くと藪沢小屋に出る。更に歩くと朝、通った道と5合目で合流。実は登りは藪沢の方が楽そうだ。
12:05 3合目で小休止。北沢峠発・広河原行きバスは13:15で、それを逃すと次は15時ということだったが、時間的には余裕で下れそうだ。気温21度。だいぶ気温も上がって暖かい。
12:30 2合目。
12:50
北沢峠に着。2時間ちょっとで下れた計算だ。少し待つだけで下りのバスが来た。
13:25
広河原。バスの運転に相変わらず冷や冷やさせられるが無事下山。北岳の上のほうは雲が掛かり始めていた。
各地で大きな被害をもたらした台風18号だったが、一過の後はおかげで好天にも展望にも恵まれ、最高だった。

小仙丈からのパノラマ(JPEG形式: 211kB)
標高差約 1,000m。
<日帰り温泉>
小金沢温泉。南アルプス林道を下りきった芦安村にある。内湯/露天・各1。洗い場が3席しかなく、小じんまりとした日帰り温泉(入浴のみは\550)。広河原で別れた山梨のBさんと偶然ここで再会。考えることは同じだ。
<参考地図>
アルペンガイド10 「北岳・甲斐駒・仙丈」(山と渓谷社)
|