山ある記

甲斐駒ヶ岳   (2,967m ) − 山梨・長野県                 2000.07.16 (日)

 
天候:晴れ
標高差
:990m

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駒津峰から甲斐駒(35KB)

  <梅雨明け!>
 皆既月食が見られると予告された日曜は天気予報によると、東京地方では曇りで月食は見られないのでは、とも言われていた。
 その日曜の未明、山梨県芦安村、北岳山麓・広河原の空は少し小雨もぱらつく曇り空。
 愛車の車中で朝を迎えると、上空には青空が広がっていた。広河原からは北岳と大樺沢の雪渓もよく見える。いざ、今日目指すのは甲斐駒ヶ岳。広河原から芦安村営バスで北沢峠まで移動して、日帰りで山頂を往復する予定。
 7時過ぎ、リュックを背負ってバス停へ向うが、うっかりして事前にバスの時間を調べていなかったので、朝一の便が9時発だと知って、しまったと思う(確か、シーズン中はもう一本早い時刻にあるはずと思い込んでいたから)。広河原への最終バスの時間(北沢峠を15:10発)を考えると、日帰りするにはキツイ日程になりそうなのだ。北沢峠を9:30くらいに歩き始めると、5時間半くらいで山頂を往復しなければいけない。確かに時間的にはキツイが、不可能ではなさそうだとガイド本を見ながら思い、チャレンジを決断。睡眠不足を補うため、バスの時間まで車で更に仮眠をとることにした。車の窓を少し開けると、涼しい風が入ってくる。すぐに心地よい眠りに入る。
 9時少し前に起き出し、バスの乗車券(往復、荷物込みで\1,500)を買い、バス待ちの列の後ろに並ぶ。北沢峠までの道は野呂川出合のずっと手前で崖崩れによって一部が分断されているため、途中でバスを乗り継ぐという話だ。
途中でバスから下ろされて暫く歩くと、話のとおり、道路の崖側が崩れ落ちていた。その先にはちゃんと乗換え用バスが待っていて、乗務員・乗客ともにそのバスへ移動。これで北沢峠に向かう。
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白峰三山を展望(12KB)

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山頂から鳳凰山、背後に富士山(13KB)

9:35 北沢峠(2,030m)でバスを降り、出発。甲斐駒へは今来た道を少し下って、北沢長衛小屋(1,980m)への案内に従って、山中に入る。小屋近くにはテントがいくつか張られていた。沢伝いに仙水峠を目指す。
10:00 仙水小屋(2,140m)。涼しげな水の流れの音を聴きながら歩くうちに、小屋へ。更に深い森の中を抜けると、突然目の前に大小の岩が堆積した谷が現れる。仙水峠まではこの岩の上を猿のように飛び移りながら進む。ここで、もう山を下ってくる人に会う。
10:20 仙水峠(2,264m)。両側の駒津峰と栗沢山に挟まれた地点にある。目の前に摩利支天の岩壁、更にその上に甲斐駒の頂が迫る。ここから駒津峰までは標高差約500mの急登だ。体力回復を待って、峠で休憩。
11:25 駒津峰(2,740m)。仙水峠からの長い急登は今日の最大のポイント。ここをうまくパスすることで短時間での日帰りが可能となるという戦略があったから、兎に角焦らず、ペースを守って歩き続ける。峰から団体さんが下ってくる。もう間近に甲斐駒が迫っている。尾根を西から東へ吹き抜ける風が快い。気温18.4度。 
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ミヤマキンバイ(20KB)

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ハクサンイチゲ(20KB)

<素晴らしい展望!>
12:25 山頂(2,967m)。駒津峰から狭い稜線を伝って歩くと、山頂への直登コースと、摩利支天方面への巻き道に分かれる。難易度は分からなかったが敢えて直登コースへ。高度が上がって、吹き付ける風が冷たくなる。岩に貼り付くように急峻な斜面を登っていくと、ようやく山頂。青空が広がり、南アルプスの展望が素晴らしい。鳳凰山の背後には一段と大きい富士山が頭を覗かせる。気温17.9度。
13:00 下山開始。いつまでも山頂に留まりたいくらいの気分であったが、日程上そんなことも言っていられず下山。下りは摩利支天への巻き道を辿る。砂礫の斜面は足をとられて歩き辛い。
13:40 駒津峰。ここからは右手に北岳方面を眺めながら仙水峠まで下る。正面の栗沢山(2,714m)は百名山には数えられていないが、なかなか立派な山容だ。
14:10 仙水峠。登りで遭遇した団体さんが去ってからは静かな山中となった。仙水峠までの下りの途中で山頂を目指す人が一人いたくらい。
14:30 仙水小屋。小屋を過ぎて長衛小屋が迫った辺りで、思わず渓流の水に触れたくなって、水辺へ。顔を洗い、タオルを水に浸す。沢の水は凍るように冷たく、長い時間手を浸していることが出来ないくらい。
15:00 北沢峠。ぎりぎりバスの時間に間に合う。待っていた2台のバスはすぐに満席。あとは帰るだけ。バスに揺られて、少しうとうとしながら広河原へ向かう。
 
 <日帰り温泉>
小金沢温泉。南アルプス林道を下りきった芦安村にある。内湯/露天・各1。洗い場が3席しかなく、小じんまりとした日帰り温泉(入浴のみは\550。)。もう2、3回利用しているが、この日は客が全然いなかった。

 

<参考地図>
・どこでもアウトドア 「日本百名山を登る(下巻)」(昭文社)
アルペンガイド10 「北岳・甲斐駒・仙丈」(山と渓谷社)

<山頂付近の花たち>
シャクナゲ、コイワカガミ、キバナノコマノツメ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ

 その夜、自宅に向かう道で、午後9時前に皆既月食が始まった。始まる時刻を正確には知らなかったが、東京地方の夜は予報に反して晴れ上がり、明るい満月が車のフロントガラスからもよく見えていたから、ずっとそれが始まるのを気にしながらハンドルを握っていた。出来れば家に着く前に始まるといいと思っていると、町田市内に入ったくらいで月の左下から欠け始めた。満月の弧のエッジがぼんやり見えるようになると、徐々にゆっくりと滲むように消えていく。その速度は思ったよりゆっくりで、家に着く頃には未だほとんど形を残していた。

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