歌舞伎 極附幡随長兵衛  
きわめつきばんずいちょうべえ

日時:2004.02.29(Sun) 22:00 〜 NHK教育放送「芸術劇場」(2003年5月歌舞伎座・収録)
原作:河竹黙阿弥、河竹新七:改訂
分類:純歌舞伎

配役:
幡随院長兵衛:市川團十郎
近藤登之助:坂東彦三郎
長兵衛女房・お時:中村魁春
唐犬権兵衛:坂東三津五郎
水野十郎左衛門:河原崎権十郎(四代目襲名披露)
長兵衛倅・長松:市川男寅(初舞台)
ほか

内容:
 時は江戸・明暦年間、四代将軍・家綱の頃。
 江戸市中では旗本奴(武士)、町奴(町人)の対立が起きていた。

1)序幕「村山座舞台の場」
 村山座は江戸四座の一つ山村座のパロディだが、歌舞伎の劇の中で演じられている歌舞伎舞台である(劇中劇)。村山座で「公平法問諍」という演目が演じられていたが、その最中に客席で旗本水野十郎左衛門の手下が酔っ払って、町人の火縄売の男と喧嘩を始める(花道)。芝居は中断、酔っ払いは座の男らによって退去させられ、芝居は再開。しかし、今度はそれに腹を立てた水野の家来・坂田が乗り込んできて邪魔をする(花道)。見かねて客席から長兵衛が舞台へ上がってきて、客の迷惑だからと坂田を追い返す。一部始終を舞台左手上部の桟敷席から見ていたのが水野。障子が開き姿を見せる。長兵衛の子分らも現れて、大騒ぎとなり、ここで幕。

2)二幕目「花川戸長兵衛内の場」
 水野の家臣・保昌が長兵衛を酒宴に招くために長兵衛宅を訪ねてくる。それを迎えた長兵衛の子分らは、水野と聴いただけで目つきが変わる。長兵衛は招きに応え、お時に着替えを用意させる。水野邸で殺されると心配する弟分の唐犬や子分ら。倅の長松まで自分が替わりにいくという始末。それを振り切って、死を覚悟した長兵衛は裃姿で水野邸へ出向く。幕。

3)三幕目 第一場「水野邸座敷の場」
 座敷に導かれる長兵衛。続いて水野、近藤が登場。酒肴が運び込まれ、長兵衛と水野は一見これまでの対立が無かったかのように盃を交わす。しかしこれが水野の企み。近藤が長兵衛の剣の腕を認め、木太刀で立ち会いたいと願い出る。辞退する長兵衛にまず保昌がいきなり斬りつける、近藤も襲い掛かるが長兵衛は見事にこれを退ける。表面では長兵衛の腕を讃えるが、彼を始末しそこなったため、別の手段に移る。保昌が酒を注ごうとし、わざと長兵衛の裃に酒をこぼす。乾かす間に風呂に入れと勧める。

4)第二場「同湯殿の場」
 浴衣で湯殿に入ってくる長兵衛。湯船に入ろうとする彼を水野の家来らが襲い掛かる。丸腰の長兵衛だが見事にこれを退ける。今度は水野本人が槍を手に彼を襲う。柄杓を手に立ち向かうが、卑怯にも近藤が背後から斬りつけ、水野がとどめを刺す。なんとも無念の死である。幕。

メモ:
 長兵衛は元は武士であったらしい。奉公先を失い江戸に出てきて苦労していたときに、幡随院という寺院の世話になり、それを忘れないように幡随院長兵衛と名乗るようになったという。町人となったとはいえ、町奴の首領。今でいえばヤクザの親分である。殺されに行くと分かっていても、出向かねば臆病者と言われかねない。徳川幕府の旗本・水野を徹底的に悪者と描いていることで、当時の庶民がお上をどう見ていたかがよく分かる。
 長兵衛の化粧は太眉がきりりと長く、目付きも鋭い。ゴルゴ13を連想させた。

参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

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更新日: 04/03/07