歌舞伎 於染久松色読販  
おそめひさまつうきなのよみうり - 新版お染の七役

日時:2003.12.28(Sun) 22:00 〜 NHK教育放送「劇場への招待」(2003年10月歌舞伎座・収録)
原作:鶴屋南北
分類:純歌舞伎

配役:
質見世油屋娘お染、丁稚・久松、久松の許嫁お光、奥女中・竹川、芸者・小糸、土手のお六、油屋後家・貞昌(七役):坂東玉三郎
鬼門の喜兵衛:市川團十郎
庵崎久作:市川段四郎
鈴木弥忠太:市川團蔵
山家屋清兵衛:河原崎権十郎
船頭・長吉:尾上松緑
女猿回し・お作:市川亀治郎
ほか

memo:
 玉三郎が15年ぶりに演じたという七役。身分・性・年齢も異なる七人に早変わり。お染と恋仲の久松の絡みの最中での二役瞬時の入れ替わりなど、一種のマジックとも言える華麗な演出。きっと公開当時の観客も肝を潰したことだろう。
 團十郎はこのあと(今年5月)急性前骨髄球性白血病で舞台を休むことになったが、つい最近(10月)復帰宣言。なんとも喜ばしいことである。息子の海老蔵襲名に奔走して疲れもあったのだろう。

メモ:
 宝刀義光を紛失したがために家が没落し、久作の弟として育てられた久松は油屋で丁稚奉公。店の娘お染と恋仲となり、江戸でも噂になっていた。しかし主人が亡くなり後家の貞昌が切り盛りしている油屋はお染の兄・多三郎が芸者・小糸に貢ぎ過ぎて、店が傾きかけている。そこでお染を清兵衛に嫁がせ、支援を受けようとしていた。しかし既に深い仲となっていた二人。一方で久松はお家復興のため、紛失した刀を探していた。どうやら刀は喜兵衛によって盗み出されたもので、油屋に質入され、その金は小糸を身請けしようとしていた弥忠太に(なぜだか)渡るはずであったが、喜兵衛がどこかで使い込んでしまったらしい。
 多三郎は多三郎で小糸を身請けしたい。義光の折り紙(鑑定書)を換金し金を工面しようとしたが、番頭の悪知恵とヘマにより、それもどこかへ消えてしまう。
 喜兵衛は久作が油屋の手代に殴られたことを耳にして、それをネタに油屋を強請ろうとする。しかし久作の死体と偽って油屋へ運び込んだところ、後から久作本人が現れて、魂胆がばれてしまう。喜兵衛の妻お六は昔、久松の家で働いていた者で、久松は主人に当たる。刀が必要なことも分かっている。その刀の在り処もわかっているが、手に入れるには金が必要であった。喜兵衛夫婦は目的こそ違え、金を工面する必要があった。
 いずれお染・久松の仲は引き裂かれる運命。久松は土蔵に謹慎となり、お染は泣き暮れる。そして二人で心中を決意。久松は土蔵へ刀を盗みに入った喜兵衛を、その刀で斬り殺す。そして心中を誓った向島へ一人向かう久松だが、そこに来たお染は籠に乗せられたまま、どこかへ連れ去られてしまう。
 しかし再び心中のために二人は落ち合う。そこへ大勢の追っ手が現れ、久松と乱闘になる。そこへ助けに入ったのがお六であった。見事に追っ手を退け、そのままお六が舞台に正座し、客席へお辞儀をして幕。

序幕
 第一場 柳島妙見の場
 第二場 橋本座敷の場
 第三場 小梅莨(たばこ)屋の場

二幕目
 第一場 瓦町油屋の場
 第二場 瓦町油屋裏手二階の場
 第三場 油屋裏手土蔵の場

大詰
 向島道行の場 

参考資料: 歌舞伎ハンドブック(\1,500 三省堂)

TOPへ

更新日: 04/10/09